林 和希、DOBERMAN INFINITYとは別の顔で届けたかった赤裸々な想い ソロアーティストとしての展望も明かす
DOBERMAN INFINITYのボーカリストとして知られるKAZUKIが5月31日、本名の林 和希として初のソロアルバム『I』を発売した。彼は2014年の『EXILE Presents VOCAL BATTLE AUDITION 4 ~夢を持った若者達へ~』を経てDOBERMAN INFINITYに加入。シルキーな歌で5MCのサウンドに新たな色を加えてきた彼のソロ活動に、ファンの期待は高まっている。
『I』はグループ参加時とまた違い、レイドバックしたリズムの歌が特徴の王道R&B作品。収録された全7曲の作詞と作曲、トラックの制作に至るまで自身で行うなど、プロデューサーとしてのポテンシャルも発揮された骨太な内容となっている。
今回はそんな林にインタビュー。アルバム収録曲を中心に、自分の歌や音楽性などについて、時に過去の恋愛を明かしながら語ってくれた。(小池直也)
実体験をもとに“自分自身”で歌うことを目指したソロ活動
――ソロデビューを迎えた今の心境は?
林 和希(以下、林):今は楽しくて仕方ないですね。結局『I』の収録曲は「Lonely」以外、アルバム制作決定後に生まれた曲となりましたが、18歳の頃から曲を作り続けてきたのでストックしている曲がまだ多くあります。もっと制作したいですね。8割完成のデモ版を作って「いつか詰めよう」と寝かせているので、どれも未完成なんですよ。
――本作は王道なR&B作品といった趣になっていますが、もともとご両親がR&B好きだったんですよね。
林:そうです。小さい時から海外アーティストの来日公演に連れて行ってもらっていました。クリスマスプレゼントは、The Stylisticsのブルーノート東京でのライブだったんです。日本の歌手だとR&Bというよりも、サザンオールスターズの桑田佳祐さん、Mr.Childrenの桜井和寿さんが好きですね。
――ソロとグループでの活動で違いを感じたりは?
林:ドーベル(DOBERMAN INFINITY)だと5人でディスカッションしながら進めることが当たり前なんです。それに比べて、ソロだと自分の世界に入り込みすぎて「これでいいのか?」という判断が難しかったですね。抜け出せないループにハマった時期もありました。
――名義を本名にした理由も気になります。
林:最初は「KAZUKI」だったのですが、自分から本名でリリースしようと提案しました。『I』というタイトルの作品でスタートするし、ソロアーティストとしての自分が“林 和希”以外の何者でもないと改めて思ったので。
――アルバムタイトルに込められた意味についても教えてください。
林:迷いましたね。ドーベルなら『TERMINAL』や『OFF ROAD』といったテーマありきで作っていきますが、今作はコンセプトよりも「自分の音楽をどう表現するか」が大事だったので。お洒落な英語も調べながら、結局「アルバム名も『KAZUKI』でいいかな」と一度は思ったのですが、そこから最後の文字の『I』を取ったタイトルになりました。これなら「自分自身」や「Love」という意味も入れられるなと。
――では各収録曲について教えてください。まずタイトル曲「I」は、かなり短い楽曲になっていますね。
林:イントロ的な位置づけの曲です。自分がいつか武道館でワンマンライブをやる時の1曲目、というイメージでビートを作り始めました。「歌い出しで照明がつく」という演出までリアルに想像しながら、トラックにメロディをつけています。自分のワンマンライブに来てくれた方々に向けて、待たせてしまった時間を一夜で取り戻すという内容にしました。ちなみに本作に収録した7曲はすべて実体験をもとにしたものになっています。
――自身でビートメイクもされることに驚きです。DAWは出身校・ESP学園で学ばれたのでしょうか。
林:僕はボーカルコースで週1ほどしかDAWの授業が取れなかったので、ほぼほぼ独学ですね。当時は友人4人とチームで制作をしていて、みんなでお金を出してCubaseを買いました。それで自分が音を作っていましたが解散してしまい、結局ソフトだけが残ったという(笑)。今もCubaseを使っています。
――過去に録りためていた曲から収録した唯一の曲「Lonely」は〈排気ガスと Seven Stars〉というフレーズが光っていました。
林:ずっと歌詞のないデモとして残っていた曲ですね。ヤケになっている時に女性と出会う場面の3曲目「Wow」に続く話にしたくて、若い頃の気持ちを歌詞に落とし込みました。
――リード曲「Wow」については?
林:4年前に一度完成していましたが、今回新たにレコーディングし直しました。以前の歌は声が若くて色気がないですし、「自分の歌を聴いてくれ!」という歌い方なのが鬱陶しく感じてしまったんです。今は「曲を伝えたい」という想いが強いんですよ。といっても当時はそれがベストだったわけですから、今回の歌い方を4年後にどう思っているかはわかりません。これについて満足することは一生ないと思います。
――アルバム全体についても言えることですが、林さんの歌は大胆なリズムのレイドバックが特徴だと感じました。自身のスタイルはどのようにして培ったのでしょう?林:僕が好きな音楽には“走る”という概念がないんです。収録曲のなかでも「Wow」は抑えめで歌っている感じ。僕にとってはジャストな感覚ですね。
――興味深いです。波形とグリッドが結構ズレているのでは?
林:めちゃめちゃズレてますよ。考えずに歌ったままなので、グリッドは見てません(笑)。
――「Wow」のボーカルトラック数はどれくらいでしょう?
林:聴こえてないゴーストコーラスやハモリがめちゃくちゃ入ってますね。ハモリは、ドに対するレ(2度)のような音をぶつけるものから、上下のオクターブなどなど。ドに対するミ(3度)やソ(5度)できれいに積んでも、あのニュアンスは出ないんですよ。
本場のR&Bでは現場で普通にやっているので、気持ち悪いと感じる人もいると思いますが、僕は音をぶつけまくっていこうかと(笑)。エンジニアさんにお願いせず自分で録っている理由もこれなんです。本当に時間がかかるので。今回のためにアンプやマイク、吸音材なども新調してレコーディングに臨みました。
――なるほど。プロデューサーとしても申し分ないスキルを感じます。
林:やれると思いますし、いずれはアーティストとしての活動と並行してやりたいです。「いい曲だけど自分っぽくないな」という作品ができたら、いずれ楽曲提供もできれば。