DOBERMAN INFINITY、きめ細やかな歌とサウンドへの挑戦 『LOST+FOUND』“配信限定完全盤”に秘めた想い

DI『LOST+FOUND』の多彩さに秘めた想い

 配信盤で新曲12曲追加、という話は過去に聞いたことがない。DOBERMAN INFINITYの約4年3カ月ぶりとなるアルバム『LOST+FOUND』の配信限定となる完全盤である。この“遺失物取扱所”という意味のタイトルが付けられた4thアルバムは、まず12曲入りのパッケージ盤が7月6日に先行リリースされ、後発となる配信限定完全盤(7月20日リリース)では全24曲という特盛の大ボリュームとなった。

 多くの時間を費やして向き合いたい本作だが、まず気がつくのは、配信限定完全盤の内容がCD収録曲の後ろに追加曲を足した、いわゆるボーナストラック形式ではないこと。前半に既発曲が多く、だんだんとグラデーションで新曲が多くなる形式で曲順がエディットされている。意図は定かではないが、ただ数が増えただけでは終わらないDOBERMAN INFINITYの細部へのこだわりを感じる。

 収録順に追加曲をピックアップしていこう。まず最初に登場するのは「GOOD DAY」。作曲は宇多田ヒカル「Movin'on without you」「In My Room」で編曲を務めるなど、多くの作品を手掛けてきたShinichiro Murayama(村山晋一郎)。風のように踊る笛の音と力強いキックの4つ打ちが印象的なイントロで始まり、〈この世界に正解なんて無いって〉と短いなか“ai”で3回韻を踏むキャッチーなラインで発進、それから歌とラップのマイクリレーが続く。オシャレかつ軽快な1曲だ。

DOBERMAN INFINITY「GOOD DAY」MV (AL「LOST+FOUND」収録)

 グループの原点であるアグレッシブなラップとメロウなフックのコントラストが効いた「Battlecry」以降は新曲がずらっと並ぶ。さらなる高みを目指す内容を歌った「SO RICH」、ファンキーなギターとビートメイクが印象的な「Don't stop the music」。そして繰り返される〈有るの… 無いの…〉をはじめとした刺激的なリリックに耳を奪われる「有無」にドキっとさせられるだろう。

 パッケージ盤のハイライトのひとつは、ドレイク「Champagne Poetry」のプロデューサーのひとりであるジャマイカのJ.L.L.が手掛けた「Backstage Freestyle」だったが、配信限定完全盤の新曲もジャマイカに縁がある。

 それが「オトコ白書」だ。ジャマイカのミュージシャンの演奏による本場のスカビートに、男性の弱さや葛藤を滑稽な歌詞で表現しつつ、椎名林檎的なマイナーナインスの音程で旋律を結ぶサビ。一見するとミスマッチとも思える要素が「男ってやつは」というトピックのもとに調和する。ジャマイカのビートから発想して、こうした楽曲に仕立て上げるグループはそういないのではないだろうか。

 また、同曲のサウンドの質感はどこか2000年代を思い出す。懐かしさを感じるが、KAZUKIのミックスボイスが今っぽさを担保しており新しさがある。さらに強い女性ではなく“弱い男性”を歌うのは社会的にも意外とクリティカルな表現なのかもしれない。

DOBERMAN INFINITY「オトコ白書」MV (AL「LOST+FOUND」収録)

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