ミームトーキョー、EP『MEMETIC INFECTION』レビュー 独創的かつインパクト大な楽曲に込められた6人の力強い主張

ミームトーキョー『MEMETIC INFECTION』レビュー

 実力派ガールズユニット・ミームトーキョーが6月7日、ニューEP『MEMETIC INFECTION』をリリースした。彼女たちは今年2月に1stフルアルバム『MEME TOKYO.』を発表したばかりだが、短いインターバルで本作が世に送り出された理由は、収められた曲を聴けばよくわかるだろう。いずれも独創的で以前よりも大きなオーラを放つナンバーばかり。日々進化している6人のメンバー(MEW、RITO、SOLI、SAE、MITSUKI、NENE)とグループを一刻も早くアピールしたかったに違いない。

 本作は計7曲を収録。15歳の中学生シンガーソングライターとして活動し、TikTokを中心にバズを生み出して話題沸騰中のだてぃがが作詞した先行配信シングル「SNSKILLER」を中心にインパクトのあるナンバーがずらりと並ぶ。

ミームトーキョー「SNSKILLER」Music Video

 ボーカロイドプロデューサー・STEAKAによるド派手なサウンドで攻めまくる「GAV RICH」や、コロナ禍の時代の気分を投影した「Feel the Virus」といったクセのあるダンスポップというキラーチューンに加え、本作の目玉と言えるのが、ソロ/ユニット曲が4曲もある点だ。

ミームトーキョー「Feel the Virus」LIVE MOVIE (2023.5.13)

 歌に重心を置いたダンスミュージックに身を任せながら内面の葛藤をさらけ出すMEW/SAEの「TWEED」、RITO本人が書いた繊細な歌詞がアーティスティックな香りを漂わせる「Mephisto」、NENEとMITSUKIのヒップホップ的感覚と独自の世界観に酔いしれる「Melt」、〈ねえ、どう映ってるの/そこで見てる 今私は〉と、コロナ禍のモヤモヤとした気持ちを淡々と綴ったSOLIの「ブルーレター」といった風に、いつもとは違った角度から見たメンバーたちが楽しめる。

ミームトーキョー MEW アーティスト写真
ミームトーキョー RITO アーティスト写真
ミームトーキョー SOLI アーティスト写真
ミームトーキョー SAE アーティスト写真
ミームトーキョー MITSUKI アーティスト写真
ミームトーキョー NENE アーティスト写真
MEW
RITO
SOLI
SAE
MITSUKI
NENE
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 アルバムをひと通り聴いた感想としてまず思い浮かんだのは、今までやってきたスタイルを整理整頓しつつも、新しい要素を加えようとするグループの前向きな姿勢だ。その傾向が鮮明に見えたのが、本作リリース直前に出した配信シングル「GAV RICH」である。ミームトーキョーは活動スタート時から現在まで、人から人へ伝染し、拡がっていく文化的な遺伝子=ミームになろうと奔走してきたわけだが、結成4周年を目前にして「GAV RICH」でようやく理想の形にたどり着いたと個人的には強く思う。

ミームトーキョー「GAV RICH」MV

 2019年に日本の音楽シーンに現れた彼女たちは、でんぱ組.incの美意識を受け継ぎながらも、東京をはじめとする大都会の喧騒、空気感、ストリートカルチャーを音で表現しようとした。これは数多のライバルたちとは異なる方向性であり、オンリーワンの道であるがゆえに比較・参照できるものがなく、しばらくは模索を強いられた感がある。

 ラテンやジャズといった幅広いジャンルを取り入れた「メランコリックサーカス」、複雑なコード進行と大胆なリズムチェンジに耳を引く「レトロフューチャー」、オルタナティブロック的なサウンドとシリアスな歌詞が印象的な「アンチサジェスト」と「アニモア」、K-POP風の押しの強いラップが響き渡る「リバーズ・エンド」――。様々な角度からアプローチした過去のシングルはいずれもある程度成功していると言えよう。そしてグループはさらにもう一つ試すべきものがあったと気付く。それは海外からみた日本の“異国的なムード”だ。

 「GAV RICH」のサウンドメイクは聴き手にたくさんの言葉を連想させる。華やかなEDMのリズムからは映画『ブレードランナー』に似た近未来感が漂い、同時に“刹那”や“退廃”、“希望”がこぼれ出る。シンセのきらびやかな音色やファンキーなベースプレイは時代の閉塞感を切り裂いて前に進もうとする強い意思を感じ、激しく歌い踊る様は自分たちが今生きていることを確認しているようにも見える。

 こうして出来上がった音像はまさに海外からみた異国の地=TOKYOの青春群像である。多彩な文化や人種がひしめきあう大都市をハイブリッドな音で演出しつつ、そこに住む人々の様々な感情を自分たちの歌とダンスでクールに表現する――。それこそがグループが目指す理想だと「GAV RICH」で実感したに違いない。

 韓国在住のSOLIの貢献度の高さも見逃してはいけないポイントだ。彼女はコロナ禍ではグループのリアルな活動に合流できずにいたが、だからこそ日本や東京、さらにはミームトーキョーを俯瞰で冷静にとらえる時間が作れたのだろうと思う。そうした視点が「GAV RICH」や「Feel the Virus」、ソロ名義の「ブルーレター」といった収録曲の数々にしっかり刻まれているところに本作の良さがあると言えよう。

ミームトーキョー「ブルーレター」SOLI来日MV

 SOLIというワンピースが外れずにしっかり収まったミームトーキョーの『MEMETIC INFECTION』は、一音一音が「これが私たちだ」と主張しているかのようだ。ここからが本当の第一歩なのかもしれない。迷わず突っ走れば、近いうちに世界へと通じる新たな道を見つけるだろう。それはおそらく先にK-POPが切り開いたコースとは別のものになると個人的には期待している。

ミームトーキョー New EP「MEMETIC INFECTION」全曲試聴MOVIE
ミームトーキョー『MEMETIC INFECTION』ジャケット写真
ミームトーキョー『MEMETIC INFECTION』

■リリース情報
ミームトーキョー EP『MEMETIC INFECTION』
2023年6月7日(水) リリース
完全生産限定盤 TFCC-81010 定価 ¥3,000 (税込)
CD購入:https://TF.lnk.to/MEMETICINFECTION_CD
配信:https://tf.lnk.to/MEMETIC_INFECTION

<収録曲>
1:SNSKILLER(Lyrics:だてぃが Music: 本多友紀 [Arte Refact] Arrangement : 河合泰志 [ArteRefact])
2:GAV RICH(Lyrics, Music, Arrangement:STEAKA)
3:TWEED - MEW/SAE from ミームトーキョー(Lyrics:理姫 Music:higma Arrangement:higma, 浅野尚志)
4:Mephisto - RITO from ミームトーキョー(Lyrics:RITO Music, Arrangement:酒井拓也[ArteRefact])
5:Melt - NENE/MITSUKI from ミームトーキョー(Lyrics:NENE, MITSUKI Music:Cuffboi Arrangement:METEOR)
6:ブルーレター - SOLI from ミームトーキョー(Lyrics:SOLI Music:照和ポテト Arrangement:山﨑佳祐)
7:Feel the Virus(Lyrics:海猫沢めろん Music:maeshima soshi, OHTORA Arrangement:maeshima soshi)

■YouTube情報
6月11日(日)22:00プレミア公開
ミームトーキョー「スーサイド ボーダレス」LIVE MOVIE (2023.5.13)
https://youtu.be/k-8dNd3Ocks

■ライブ情報
TOUR『MEMETIC INFECTION』振替公演
6月28日(水)
名古屋・ell.FITSALL
18:00open / 18:30start
※5月4日名古屋・ell.FITSALLの振替公演

6月29日(木)
大阪・OSAKA RUIDO
18:00open / 18:30start
※5月5日大阪・club vijonの振替公演

ミームトーキョー
結成4周年記念単独公演『AGE of MEMETIC』
7月31日(月)
渋谷duo MUSIC EXCHANGE
18:30open / 19:00start

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