稲葉浩志『あなたがしてくれなくても』主題歌&挿入歌も好評 宮本浩次、櫻井和寿……バンドとは異なるボーカル表現

 宮本浩次と「東京協奏曲」で共演し、互いの個性的な歌声を響かせ合った櫻井和寿もまたMr.Childrenのボーカリスト・桜井和寿とは異なる表情を見せる。彼は純粋なソロワークは極めて少なく、桜井和寿名義でのGAKU-MCとのユニット・ウカスカジーのほか、他アーティストの楽曲へのゲスト参加や、主に小林武史とのBank BandやReborn-Art Sessionでの活動で櫻井和寿としての表現を磨いている。

 例えばReborn-Art Session「What is Art?」では、エフェクトのかかった歌声でサウンドと一体化するアプローチを行っており、自身の歌がど真ん中に位置するMr.Childrenとは一線を画す歌唱と言える。また、Bank Bandとしてはカバーシリーズ『沿志奏逢』にて中島みゆき「糸」や斉藤和義「歌うたいのバラッド」、フジファブリック「若者のすべて」といったJ-POPの名曲をカバー。それぞれの楽曲への強い思い入れも感じさせる熱い歌声を聴かせている。櫻井にとってのソロワークは、バンドの中では芽生えない種類の表現を目覚めさせる場と言えるだろう。

「東京協奏曲」宮本浩次 × 櫻井和寿 organized by ap bank
Bank Band 「若者のすべて」 from ap bank fes '11 Fund for Japan

 他にも10-FEETのTAKUMAは卓真名義で2021年にソロ活動を開始。アグレッシブかつ熱いバンドでの音楽性とラップやシャウトを駆使する歌声から一転し、ピアノやアコギを貴重とした優しげな音楽を生み出した。「軍艦少年」、「アゲハ」ともに、限りなく素直でオープンな歌声を聴くことができる。

卓真 - 軍艦少年

 ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文がGotch名義で行うソロ活動は、近年ヒップホップへの接近を続けている。先進的なビートの上をなめらかなライムが走るGuruConnect(skillkills)とのコラボ曲「Heaven」や、DIYな質感のサウンドメイクにボイスチェンジしたユニークな歌声が溶け合う「Bootlegged Emotions」など、今年リリースされた曲も実験的かつパーソナルなものばかりだ。

Gotch, GuruConnect - Heaven - MV

 人気バンドの顔となることが多いボーカリストは、“フロントマン”としての新たな人格がもたらされることになる。スターとしての役割を引き受けることで、パブリックイメージと異なる表現に挑戦することが難しくなる場合もあるはずだ。バンドを健康的に持続し、なおかつ個人として豊かな表現を展開するために、ソロ活動はバンドマンにとって重要な位置づけであり続けるだろう。

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