DEZOLVE、インストならではの垣根のなさを体感させるアンサンブルの妙味 『CoMOVE』ツアー最終公演レポ
また、終盤には1st Showにはなかった「Uchronia」を披露。アコギがメインのフレーズを牽引し、時にピアノとユニゾンし、この日の選曲の中ではジャジーと言えるアンサンブルが新鮮だ。実はこの曲はリハーサルをしていなかったそうだが、アルバム楽曲をなるべく多く演奏したいという意図でセットリストに組み込んだらしい。山本は演奏してみて「こんな曲だったなと思った」と、さりげなくすごいことを言っていた。演奏中のアドリブや抜き差しだけでなく、ライブ当日でもフレキシブルに選曲を変えられるのは4人の信頼関係と、できるだけ楽曲を披露したいという気持ちからだろう。もっと言えばCOTTON CLUBでの2ステージ制の70分間では演奏とトークがどうしても溢れてしまうので、もっと緩く長いライブが観たい人はホームグラウンドである埼玉県川口・Shock Onのライブへ、というプロモーション(?)も兼ねていたのだ。そんなことを言われたら観に行きたくなるのが性である。破格の演奏と緩いトークのギャップにハマった人は少なからずいたと見る。
本編ラストは作曲の北川本人曰く「ハッピーな楽曲」である「Landscape」。流れ転がるようなピアノリフがまさに春の陽光。ユニゾンコーラスで静かに胎動する季節を表現していく。ソロも透明感のある音色でグッと季節感を強めていく。そうなのだ。インストは音色選び一つで楽曲の表情もストーリーもまるで変わる。自分が受ける印象の変化も楽しい。終盤には山本が左手を挙げ、オーディエンスにハンドワイパーを促す。右手一本でシンバルもタムもスネアもカバーしているのが凄まじい。しかもずっと笑顔である。かくして、序盤でグッと引き込み、ぶん回されて、その後カラフルな空気感に包まれて終わるという、7曲とは思えない、いや、7曲全てで異なる世界に連れて行かれたからこそ、濃い時間を体験できたのだ。
アンコールで山本はコロナ禍で一時は後ろ向きな気持ちにもなったものの、立ち上がって動き出すという意志を込めたアルバムタイトル『CoMOVE』通りツアーを完遂できたことに謝辞を述べた。そしてアンコールではスマートフォンでの撮影OKの旨を告げると大きな拍手が起こる。そこでも「変な顔や目を瞑っている写真をSNSに上げた人はブロックします」「じゃあずっと目開いて演奏するか」と、笑いを誘う。和やかなムードの中、ポップソウルな味わいもある「Fleeting」を披露。温かみのある楽曲の中にもスリリングなユニゾンメロディを挟んだり、見どころたっぷりな演奏で早すぎる70分を締めくくったのだった。アンサンブルの妙味に満たされたフロアは誰もが笑顔。インストならではの垣根のなさを体感させてくれたライブだった。
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