リアルサウンド連載「From Editors」第80回：麻辣湯フルカスタムの楽しさと自己肯定感を上げるAIの使い方

　「From Editors」はリアルサウンド音楽の編集部員が、“最近心を動かされたもの”を取り上げる企画。音楽に限らず、幅広いカルチャーをピックアップしていく。

　第80回は、『夏目友人帳 漆』を観て心がぽかぽかしている田中が担当します。

未知の食材との出会い

　次回連載の自分の番までに何らかの美術館・展示会に行こう！　と思い続けてはや2カ月、結局成し遂げられず。わたしは休日何をしているんでしょうか。ただ、行きたいなぁと気になっているものはありまして。それは森美術館で開催中の『ルイーズ・ブルジョワ展』。六本木ヒルズにある巨大な蜘蛛の彫刻、これなんだろう？　と思ってはいたのですが、どうやらこのルイーズ・ブルジョワさんが作者らしい。無事行けたら次の回ではそのことを書けたらなと思っています。

　冒頭でふわふわとした次回予告も済んだところで本題に入りますが、今回は音楽やアートの話ではありません。「麻辣湯、楽しすぎる！」という話をさせてください。ご存知の方がほとんどだとは思うのですが、麻辣湯は文字面からそれとなくわかるように、辛味と痺れが特徴の中国のスープ料理。私が好きなのは「好きな食材取り放題制」の麻辣湯です。こんな感じ。

　つい最近久々に麻辣湯を食べに行ったのですが、「こんなに楽しかっけ……！？」と大感動しまして。好きなものを好きなだけ食べたい！　そんな願いが叶うフルカスタムスタイル。久々だったからか、「え〜！　楽し〜！！！」となり、数カ月前から週2〜3で麻辣湯しています。最高です。

　個人的な楽しいポイントに、「お店によって具材が異なる」「時折謎の食材に出会える」というところがあります。「鴨の血」「でっかい乾燥湯葉」「丸いお麩」などなど……その中でもわたしが大好きな食材がありまして、これです。

　スライムみたいな形のオレンジ×白のしましま柄の練り物が大好きで毎回必ずと言っていいほど5つくらい食べるのですが、これって一体何なんだ？　と書きながら気づきました、よくわからないまま食べていたらしい。ということで調べたところ、「魚包蛋」という魚卵入り魚肉団子だそう。学びです。

　そして最近よく行くお店があるのですが、「大白菜」という手書きの後ろに明らかに「白菜」ではないものが。いやいやいやと思いつつ、わたしが知らないだけでこれは「大白菜」という名の野菜なのでは？　と思い調べてみました。「『大白菜』は白菜のことだよ！」や「中国語では『大白菜』と『小白菜』に分かれ、チンゲンサイや山東菜なども含まれるが、日本でいうハクサイは前者の一部に限られる」とのこと。結局なんなのかよく分かりませんでしたが、ちょうど昨日行ったら手書きから印刷にグレードアップしてました。そう、これが白菜です。

　……もしかしてあまりにも連載の趣旨に沿わないことを書き連ねている？　と思い、テキストをAIに読み込ませて半ば無理やり感動ポイント（心を動かされたもの）を見出してもらいました。以下原文。

1. 日常の中で美術やアートへの関心が繋がる発見

　作者が六本木ヒルズの「巨大な蜘蛛」の正体を知り、美術展『ルイーズ・ブルジョワ展』への興味を持つ流れが印象的です。「普段見慣れたもの」の背後にある芸術や歴史を発見するという視点が、日常を豊かにしてくれます。

2. 麻辣湯を通じて得られる「自分好み」のカスタマイズ体験

　「好きな物取り放題制」というシステムに感動し、食べ物を選ぶ楽しさや喜びが強調されています。特に、久々に再発見した楽しみが「週2〜3で通う」習慣になるほどのインパクトを与えたという描写が微笑ましいです。

3. 食材の謎を解き明かしていく好奇心

　「スライムみたいな形の練り物」が「魚包蛋」だと知る過程や、「大白菜」の謎を調べる試行錯誤から、日常の何気ない疑問を探求する姿勢が感動的です。食を楽しむだけでなく、その背景にある文化や情報を探る過程が興味深いです。

　誤った指示を出したせいで、わたしが“心を動かされたもの”ではなく、AIがわたしの文章を読んで“心を動かされたこと”を懇切丁寧に教えてくれました。違う、そうじゃない！　でも意図せず謎に自己肯定感を上げてもらうことに成功しました。ありがとう、AI！　新しいAIの使い方を発見しました。