Hana Hope、ありのまま歌う“10代の複雑な感情” 高橋幸宏から託された希望や、三船雅也らとの制作エピソードも語る

Hana Hope、高橋幸宏から託された希望

 「Hana Hopeは僕たちの希望そのものです」――生前、高橋幸宏が彼女に寄せたコメントだが、いみじくもそれは“予言”であった。

 2019年に出演したYellow Magic Orchestra(以下、YMO)結成40周年記念ライブで、12歳とは思えない堂々とした佇まいで異彩を放っていたHana Hope。彼女があれから4年余りの時を経て、遂に待望のアルバムデビューを果たした。『HUES(ヒューズ)』と名づけられたそれは、Black Boboi、ROTH BART BARON、柴田聡子、HONNE、Maika Loubté、會田茂一、加藤登紀子といった面々がHanaのために尽力した、この上なく贅沢な1stアルバムだ。

 自ら作詞・作曲を手掛けた「16 - sixteen」をはじめ、瑞々しい感性が溢れる楽曲群。もちろん、これまで大事に歌い継いできたYMO「CUE」も収録されている。Hanaの凛とした、それでいてどこか寂しげなボーカルも心に響く。清廉さとしなやかさ、そして脆さ、儚さまでもを宿した彼女の歌に寄り添うのは、名前の通りの“希望”だ。17歳の心象をこうした形で閉じ込めた彼女の揺るぎない個性は、これからの音楽や自己表現のあり方を変えていくのではないかという期待をも掻き立てる。

 リリースから数日経ったある日の午後、彼女のアトリエを訪れ、話を聞いた。(美馬亜貴子)

「自分の声を見つけるプロセスをそのまま見てもらいたい」

――ついにデビューアルバムが完成しましたね。ライブは大舞台も含めていろいろ経験してきましたが、「一期一会」的なライブと違って、アルバム制作はコツコツと作業していくものなので、同じ表現活動でもかなり違う部分があったと思います。アルバムを作ってみて、いかがでしたか?

Hana Hope(以下、Hana):初めてのアルバム作りを始めてから1年ちょっとになるんですけど、ティーンエイジャーの時は毎年すごい変化があるので、レコーディングを重ねることで自分の成長を見られたなと。つい最近作った曲と、最初に作った曲を比べてみると、声の質も変わっているし、歌い方も変化しているので面白いなと思います。

――最初にアルバムへのビジョンはあったんですか?

Hana:そこまではっきりしたビジョンはなかったけど、一番ありのままの自分を見せたくて。ひとつのテーマに合わせるわけではなく、色々な音色の曲を合わせて、色々な自分が入っている作品にしたいなと思っていました。

――「ありのままの自分」というのは?

Hana:歌っている時はあまり意識しないんですけど、人の歌い方と同じようにしない、自分の声を見つけようとしているプロセスかな。そこをそのまま見てもらいたいです。

――そうは言っても今のHanaさんくらいの年頃って、ちょっと大人っぽいことに憧れたりとか、背伸びしてみたいっていう気持ちを抱いてしまうと思うんです。等身大の自分をさらけ出すのは大変なことじゃないですか。

Hana:はい、私もまだチャレンジしているところかな。今パーフェクトにならなくても、ずっと自分を磨き続けていれば大丈夫かなと思います。

――デビュー当初からとても注目されていたことで、プレッシャーや迷いはなかったですか?

Hana:人にどう思われるかに対しての不安はなかったんですけど、初めて自分の名前が載る作品なので、そういう点では結構緊張しましたね。

――しかもBlack BoboiやHONNE、ROTH BART BARONや柴田聡子さんなど、プロデュースや楽曲提供の面々も実に多彩です。そうした方々とコラボしてみて、どうでしたか?

Hana:一人ひとりすごくユニークで、音楽的な思いとか色々な視点がありました。すごい才能のある方たちと関わることで曲と色々な向き合い方をしましたね。このアルバムには色々な音楽ジャンルが入っていて、曲をどうやって伝えるか色々な曲への向き合い方が分かりました。

「曲を書くことが不安へのセラピー」

――2曲目の「16 - sixteen」はHanaさんが作詞・作曲をしていて、揺れ動く心情が素直に綴られています。このアルバムの中でも象徴的な一曲ですよね。

Hana:そうですね。その時思っていたことを素直に書きました。元々は45秒ぐらいしかなかったんですけど、三船雅也(ROTH BART BARON)さんと一緒に、曲を広げていって。以前から「けもののなまえ feat. HANA」とかでコラボして、お互いに信頼感があるので、言いたいことは素直に伝えられたかなと思います。

――何か心に残るアドバイスはありましたか?

Hana:歌詞を書く時は「いかにも詞らしい詞を書こう」とか、あまり深く考え込まずに、今思ったことを書くことが大切だって言われました。特に「16 - sixteen」は自分で書いた曲で、ティーンエイジャーならではのエモーションが詰まっている曲なので、もう少し大人になったら書けなかったと思います。

Hana Hope - 16 - sixteen

――〈I wanna runaway/With no hatred, no fear〉という思いを正直に歌っていますが、Hanaさんが感じる「恐れ=fear」とはどのようなものですか?

Hana:私と同年代の人はすごく共感すると思うんですけど、やっぱり未来が「恐怖」です。今、環境のことやポリティカルなことを思うと、自分の未来はどうなるかなって考えさせられることがいっぱいあるので、そこから不安が湧いてくるのかなと思います。ティーンエイジャーは大人への第一歩なので、大学に行けるかとか、大人として社会にどう向き合うべきなのかとか。そういうことも考えるようになりました。

――それを歌にすることによって、同年代の人にもっと考えてほしいという気持ちでしょうか。それとも、自分の中で感じているものを紛らわせたいのでしょうか。

Hana:どっちもかな。自分にとっては曲を書くことがセラピーになっているんです。自分の気持ちを素直に言えるので、それで少し内面が軽くなる感じ。あとは、私と同じように色々不安に感じている人もいると思うけど、その恐怖にとらわれないでって他の人に伝えたい思いもありますね。

――なるほど。だからなのか、「Your Song」みたいなアップリフティングな曲でも、Hanaさんの歌い方はとても落ち着いていてウキウキした感じではないですよね。

Hana:そうかもしれないですね。盛り上がる時もあるけど、わりと複雑な感情を持っている人間なので、それが曲に表れていると思います。

――レコーディングを通して、自分の内面について何か新たな発見はありましたか?

Hana:私はずっとアコースティックな曲が好きだったんですけど、HONNEさんが書いてくれた「We've Come So Far」を歌ってみた時、意外とエレクトロポップの、すごいハイプな感じの曲も好きなんだなって分かって。色々な曲で自分を試してみた甲斐があったと思いましたね。今回は全ての曲に前向きに向き合うことを意識していたので、最初に聴いて「これは自分には似合わないな」と思っても、トライしてみることがすごく大切でした。そうすることで最終的に良い曲になったものがあるので。

Hana Hope -We've Come So Far (ウィーヴ・カム・ソーファー)

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