スピッツとエレファントカシマシがくれる、明日を生き抜く力 『音楽の日2020』円熟味と信頼感溢れるステージへの期待

 本日7月18日に放送されるTBSの大型音楽特番『音楽の日2020』。9時間半の放送中に様々な世代のアーティストが出演するが、本稿では2組のロックバンドに着目したい。スピッツとエレファントカシマシ、共に30年以上に渡って日本のロックシーンを牽引し続けているバンドである。ライブを楽曲披露の主現場としている彼らが今テレビに出る意味を考えると、放送への期待がさらに高まっていく。

 『音楽の日』に4年ぶりの登場となるスピッツ。テレビ出演はアルバムリリースタイミングなどに限ることが多いため、今回の出演は貴重な機会だ。7月17日には結成33年を迎えたスピッツだが、未だコンスタントに色鮮やかなナンバーを生み出し続けており、事あるごとに楽曲の深淵なる魅力について言及されるなど、その注目度は衰えを知らない。昨年10月リリースの16thアルバム『見っけ』は、メンバー全員が50代を迎えて初めてのアルバムだったが、聴き心地は実に瑞々しかった。そんな傑作『見っけ』を携えてアリーナ/ホールツアーを昨年末から開催していたのだが、コロナ禍を受けて春以降の公演は延期を余儀なくされている。

スピッツ「猫ちぐら」

 美しいメロディの中で、死、そして“触れ合う、交わり合う”ということを歌い続けてきたスピッツ。コロナ禍においてはそのどちらもが恐ろしく、敬遠されるものとされている。この状況は草野マサムネ(Vo/Gt)の綴る歌詞にも大きな影響を与えかねないと思っていた矢先に届けられたのが新曲「猫ちぐら」だ。アコギにアルペジオが絡み、ミドルテンポに穏やかなメロディがよく合う、スピッツの温かみがフォーカスされた1曲である。想定していなかった現実に直面し、戸惑うような言葉が多く綴られる中、サビでは〈驚いたけど さよならじゃない〉と歌う。〈望み叶うパラレルな世界へ〉などは特にコロナ禍ゆえの言葉選びだろうが、そこだけに留まらない普遍的な願いの歌となっている。

「猫ちぐら」

 今回のテレビ出演は、この歌で歌っていることに近いメッセージを感じる。テレビで自分たちの音楽を多くの人に届けることが、歌詞通り“優しい景色を描き加える”ことになると考えたのではないだろうか。誠実な表現者として、タフで息の長いロックバンドとしてこの上ない姿勢だと思う。今回は「話題の新曲をテレビ初披露する」とのこと。スピッツの今を伝えるため、そして我々が今を乗り切るために必要な楽曲を披露してくれることだろう。

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