稲垣吾郎、自分自身の言葉で語っていく芯の強さ 『不可避研究中』から感じた教養番組との好相性

 そう考えるとMCの稲垣は、そんな時代の荒波を越えて表現者としてトップを走り続けてきたレジェンドランナーとも言えるのではないか。番組収録後の反省会トークでは「つまんないのはさ、なんとなく7割、8割ぐらいの人間がOKだったら“OKでしょ!”みたいな。それすごいつまんなくない?」と語っていた。

 考えてみればプライベートが見えないミステリアスなキャラクターでありながら、そんなキャラクターをイジらせる「ゴローちゃん」という親近感も両立させてきた稲垣。その絶妙な立ち位置は、相当のバランス感覚がなければ実現しないものだ。

 また、「NHKなのに攻めてるね」「NHKっぽくないね」と言われたいけれど「NHKらしさ」を守らなければならないというジレンマを抱えるディレクターの言葉にも「よく聞く、その言葉!」と小気味よい相づちを打ち話を広げていく。

 もしかしたら、そこには稲垣自身が「アイドルなのに」と言われながらも、バラエティを開拓していった歩みを重ねていたのかもしれない。そんなふうに稲垣もまた「個人」の視点でテーマに向き合っていくところが、この番組を穏やかに調整していったように思う。

 「人生の勝ち組、負け組」について考えた回「あなたは勝ち組? 何者かになりたいけどなれない...」でも、稲垣は収録後に率直な言葉でインタビューに答えていた。「自分がどう充実してるか。自分の充足感というか。そこしかないよね、答えはね」と。さらに「ただ、そんな(勝ち組の)人なんていないんじゃないかなと思った。みんなが思い描いている虚像。(本当は)充実してないから、アピールする人も多いからね。僕だってあやしいからね。これ今、芸能人として話してるから。わかんないよ、家帰ったら(笑)」なんて言える軽やかさも稲垣ならではだ。

 センシティブで難しいテーマも意欲的に取り扱えてきたのは、きっとこうした稲垣の知的なユーモアがあったから。そして自分自身の言葉で語っていく芯の強さが、稲垣と教養番組の相性の良さだ。同番組が今回で最終回となるのは残念でならない。だが、また稲垣と共に何かを考えていく番組が作られるのは不可避ではないかと期待せずにはいられない。別れの季節にぴったりな「さよなら道」というテーマを掲げた最終回を楽しみつつ、また新たな稲垣×教養番組の出会いが訪れるのを楽しみにしている。

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