まらしぃ、「アマツキツネ」10周年記念アルバムをいち早く語る じん&堀江晶太(kemu)と過ごした制作時間の充実
まらしぃが「アマツキツネ」の10周年を記念したアルバム『アマツキツネ 10th Anniversary』を4月26日にリリースする。リアルサウンドでは発売を前にまらしぃを直撃。「アマツキツネ」はもちろん、続編曲「弧ギツネの乱」「天照ラセ」の新バージョンや、じん、堀江晶太(kemu)と制作した新曲「新人類」について、いち早く話を聞いた。またそれに連動して、2月16日にはファンから質問を募る形でまらしぃのYouTubeチャンネルでの生配信にて公開インタビュー企画も行った。記事の後半ではそちらの模様も掲載しているので、あわせてチェックしてほしい。(編集部)
じん&堀江晶太(kemu)との制作は「定期的にやりたいなと思うくらい楽しい時間」
――まらしぃさんはこれまで数々のボーカロイド楽曲を作曲してきましたが、「アマツキツネ feat.鏡音リン」の10周年記念アルバム『アマツキツネ 10th Anniversary』を作ることになった経緯を教えてください。
まらしぃ:「アマツキツネ」は2012年に投稿した曲で、すごく思い入れのある楽曲です。いろんな人と演奏したり大きい舞台で披露したり、様々なご縁もあった曲なんです。小説も書かせていただきましたし、音楽ゲーム『初音ミク Project DIVA Arcade Future Tone』にも収録していただいて、「アマツキツネ」の(鏡音)リンちゃんの衣装も実装してもらったり。あとは今回のアルバムにも参加していただいた高橋洋子さんにも歌っていただいて。本当に枚挙にいとまがないくらい思い出がたくさんある曲なので、思い出に残るような何かを作りたいなと思ったんです。せっかくですから、10年後の自分がやるならこうしたいなとか、このメンバーでやりたいなというイメージから始まりました。
――「弧ギツネの乱」、「天照ラセ」と続編の楽曲を投稿したり、小説を書かれたりと「アマツキツネ」の世界も広がっていきましたが、元々「アマツキツネ」はどんなイメージを持って作り始めたものだったんですか?
まらしぃ:あまり真顔で話すことではないかもしれないですが、鏡音リンちゃんがすごく好きで、絶対にキツネの耳とか尻尾が似合うよなあって思ったのが始まりです。あとはキツネイロさんというイラストレーターさんの絵が昔からすごく好きだったので、ぜひ描いていただきたいと思っていて。それを実現するには曲を作ろうかな、みたいな(笑)。
――それがこうして様々なコラボを生んでいるのも面白いですね。キツネイロさんは「アマツキツネ」のMVだけでなく、小説の表紙や今回のジャケットも担当されていますし。
まらしぃ:本当ですね。何があるか分からないです。
――アルバムには新曲も収録されますが、「新人類」はじんさんと堀江晶太(kemu)さんとのコラボ曲です。『まらフェス2022』にもゲスト出演した2人ですが、以前から親交があったんですか?
まらしぃ:堀江くんは10年来の友人なんです。お互い10代のときからスタジオで一緒に遊んでいて、ずっとなにか作ろうと言っていたんです。でもコラボしないまま10年経ってしまったので「十年越しのラストピース」という曲を一緒に作ったり、スマホゲーム『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』(以下、『プロセカ』)に書き下ろしさせてもらった「88☆彡」(はちじゅうはち)でコラボしたりしましたね。じんさんのことは僕が一方的に存じ上げていて、向こうもなんとなく知ってくださっていたようなんですが、堀江くんとじんさんが仲が良かったので、繋いでくれて連絡を取るようになりました。そのころに今回の「アマツキツネ」10周年記念アルバムの企画が出てきて。当時のボカロシーンを代表する2人ですからぜひ一緒にやりたいと思って、「アマツキツネ」のリミックスに参加してもらい、「新人類」も一緒に作りました。
――「新人類」は3人で作る楽曲としてどんなものにしようというイメージをお持ちでしたか?
まらしぃ:じんさんはギタープレイヤーとしてもすごくかっこいいですし、堀江くんはなんでもできますが特に彼のベースが好きだったので、それぞれが活きる曲にしたいと考えていて。僕はピアノを弾くので、ピアノも活躍する曲がいいなと伝えました。
――それから、どのような流れで制作したんですか?
まらしぃ:ピアノのフレーズを何パターンか持っていって、どれをブラッシュアップしたらよりかっこよくなるかを聴いてもらい、みんなでアイデアを出しながら作っていきました。じんさんと話しながらネタを出して、なんとなく上がったものを堀江くんと一緒にかっこよくして。深夜に男友達が3人集まったらこういうノリになるだろうっていう会話をしながら作ってましたね。話が脱線して「結局進んでないけどどうする?」みたいな(笑)。歌詞は僕とじんさんで練っていきました。
堀江くんと2人で一緒に作ったときも、彼のすごいところを感じてそれに応えられるいいアイデアを出したいなと思ったんですけど、他の人がいると自分になかった引き出しからアイデアが出てくることも多く、それにつられるようにしてひらめいたこともあって。定期的にやりたいなと思うくらい楽しい時間でしたね。
――「アマツキツネ」のリアレンジにもじんさんと堀江さんが参加しています。勢いも増していて、聴き応えがありますね。
まらしぃ:彼らに任せておけば間違いないと思いましたね。この曲を初投稿した2012年って堀江くんもじんさんもすでに活躍されていた時期ですし、当時ボカロシーンが好きだった人たちからすればすごいチームだと思うんですよ。我々も30代になりましたが、それを踏まえた上でアニバーサリー感のある、聴いていて気持ちいいものを作れたらいいなと話しましたね。
――ボーカルの調声も一新されていますよね。
まらしぃ:最近はびびさんという方に調声していただいてるんです。びびさんも堀江くんからの紹介なので、そういう出会いも詰まっていますよね。まるで(初音)ミクさんやリンちゃんが隣にいて、息遣いまで聞こえてくるような歌声だと思います。
――調声に関してはまらしぃさんから何か希望を出されたんですか?
まらしぃ:かっこよくとか可愛くみたいな、ざっくりとはお伝えしました。びびさんは音楽にも造詣が深い方なので、曲に合うようにばっちりやってくださいましたね。
――もう1つの新曲「KITSUNE Pâtissière」は可愛らしい曲です。これはどんなイメージで作り始めたんですか?
まらしぃ:「KITSUNE Pâtissière」は「アマツキツネ」のコンセプトの中で、スピンオフみたいなことをやれたらいいなと思いまして。今改めて見たリンちゃんの可愛さだったり今の自分が思う「アマツキツネ」らしいフレーズを入れたいなと思いながら、自由に作ることができました。
――曲の構成としても、後半が特に自由に展開していきますよね。
まらしぃ:そうですね。僕は歌詞よりメロディ先行で作ることが多いんですが、この曲は歌詞を先に作って後からメロディに当てはめる形で作ったんです。その結果原型がなくなったというか(笑)。自由に作れたなと思います。