まらしぃ、「アマツキツネ」10周年記念アルバムをいち早く語る じん&堀江晶太(kemu)と過ごした制作時間の充実

まらしぃ「アマツキツネ」から10年での変化

 ここからは2月16日にまらしぃのYouTubeチャンネルにて生配信された、公開インタビューの模様をお送りする。事前にSNSを通じてファンから寄せられた300件以上の質問やお悩みから一部をセレクトし、まらしぃに答えてもらった。なお、質問文は一部編集して掲載している。

ピアノの練習法から“もしも”の話まで赤裸々回答

Q.「私は4歳からずっとピアノを習っていたのですが、高校生までは練習が大嫌いだったので全く上達しませんでした。まらしぃさんに出会ってから、私もこの人のように弾けるようになりたいと思えるようになりました。私の練習法としては、⁠ゆっくり弾く練習をひたすらやってから速く弾く練習をするという流れですが、お恥ずかしいことにメトロノーム90のテンポが限界です。どのように練習すればまらしぃさんのように速く弾けるようになりますか?また、子供の頃にしていた練習法もあれば教えていただきたいです」

まらしぃ:かなり熱心な質問ですね。僕も昔からゆっくり弾く練習しかしていないんです。質問では90のテンポが限界だとおっしゃっていましたが、それよりももっと遅い、80や70で100回やって100回間違えない自信がついたら次のテンポにいくようにするといいと思います。というのも、自分の限界のテンポって弾けていないテンポだと思うんです。その前のテンポが完璧に弾けてるのかというと、多分できてないんですよ。自分の限界から2、3段階ぐらい落としたところからじっくり、絶対に間違えない自信がつくまで練習してから戻ってくると意外と弾けたりします。

――地道に、練習あるのみという。

まらしぃ:そうですね。こればかりは自分ができるテンポを見つけて、それを完璧にすることですかね。

――似た系統の質問もありました。「ピアノのミスタッチをなくすためにまらしぃさんはどんな練習をしていましたか?」。

まらしぃ:ミスタッチをなくす方法ということですよね。僕が教えてほしいです(笑)。それはもう、間違えちゃうこともあるので割り切りましょう(笑)。さっきの質問と似た話になりますが、間違えないで弾けるテンポは絶対に存在するはずなので、そこから少しずつやっていくといいのかなと。ただ最近思うのが、自分が弾きたいテンポに慣れていないのかなと。遅いところから徐々に練習していくのとは別に、自分が最終的に弾きたいテンポに慣れる練習もやった方がいいのではと思ったんです。徐々に上げていっても、本番のテンポに慣れてないと動揺しちゃう可能性があるので。

Q.「まらしぃさんが作られたオリジナル曲には名曲が沢山ありますが、あまり配信やライブでは弾いていないけど実はとても気に入っている曲はありますか?」

まらしぃ:自分の曲はなんだかんだ全部気に入っていますね。自分の曲を配信でやる機会が少ないのって、僕が配信で演奏しているときは家でのんびり遊んでいる感覚に近いからかもしれないです。自分の曲って、格好つけた言い方すると自分の作品なので、弾くときはちょっと身構えるんですよ。ちゃんと弾かなきゃと(笑)。なので配信だとやりたい曲をやることが多いですね。でも自分で作った曲は気に入ってる曲が多いです。これからもよろしくお願いします(笑)。

Q.「『この曲のここ好き!』となるような、まらしぃさんがいいなぁと思うコード進行があったら教えてください」

まらしぃ:僕はあまりコード進行に魅力を感じることはなくて。コードよりも、例えば高い音を思い切り伸ばしている瞬間とか、そこにいくまでに後ろの音がどう重なって鳴っているかとか、そういう部分に興奮を覚えるんですよね。王道と呼ばれるコード進行は素敵な響きや格好いいものが多いので全部好きですが。

――ご自身で曲を作る際は手癖というか、こういう流れで弾きがちといった進行はあるんですか?

まらしぃ:それはやっぱりありますね。昔自分が作った曲に似てくるな、とか。そういうときは1回リセットしたり、いつもは絶対に始めないところから作ってみたり。そういう気分転換もたまにします。

Q.「まらしぃさんのピアノは歌うように聴こえますが、弾くときに頭の中に歌詞が出てくることが多いのでしょうか? それとも音を思い浮かべているのでしょうか?」

まらしぃ:どちらもあります。ただ、最初は歌詞よりもメロディラインや楽器の音、コードに注目しがちかもしれないですね。好きな曲って何回も聴くし歌詞も覚えてるので、そういう曲は歌詞が頭の中に出てたりしますし、特に好きな歌詞のタイミングでは歌詞しか浮かんでいないときもありますね。

Q.「会社勤めするとしたらどんな仕事がいいですか?」

まらしぃ:会社に勤めたことがないので、大変なこともやりがいも全く知らない状態なのだけお許しいただきたいんですけど……僕は営業は自分の性格に合っていると思います。自分の好きなものを人に提案したりするのがすごく好きなので、自分の会社の製品でもし好きなものがあったら、魅力的なところとメリット/デメリットを一緒に提案できるんじゃないかと思いますね。通販番組を観るのも大好きなので(笑)。

――生放送もやってらっしゃいますし、トークスキルもありますもんね。

まらしぃ:そうですね。もちろん大変だと思いますが、機会があったらやってみたいことの一つではあります。

Q.「(初音)ミクさんとの出会いの瞬間を知りたいです」

まらしぃ:僕はどちらかというと、曲からではなくイラストから知ったんです。当時ニコニコ動画に、イラストレーターさんや絵が上手な方がイラストを描いて動画にする「描いてみた」というのがあったんですけど、それでこのキャラ可愛いなと見つけたのが最初だったと思います。ボーカロイドという音声合成ソフトが出たことは知っていたんですけど、イラストを見て「これがミクさんなのか」と知って、その動画のBGMでミクさんの曲が流れていて。それこそ「メルト」とかだったと思います。そこから曲を知っていったという出会いでしたね。

Q.「スマートフォンゲーム『takt op.』でクラシックの楽曲をアレンジされていますが、クラシック曲をアレンジする上で意識したことや苦労したこと、ポップス曲との違いなどはありましたか?」

まらしぃ:クラシックの楽曲って世界共通で、歴史もあって、ファンも多いと思うんです。なのでやらせていただく上ではは勉強させていただくという心構えでしたね。普段楽譜はあまり見ないんですが、このときはいろいろ取り寄せたりして勉強していました。音の重なりとか楽器の構成が聴けば聴くほど緻密で素晴らしいバランスの曲が多いと感じたので、「この部分はこういう風に弾きたいな」という部分であったり好きなフレーズを見つけたりして、それを大切にしつつアレンジを考えていきました。

――まらしぃさんは以前、クラシック曲をアレンジしたアルバム『ちょっとつよいクラシック』をリリースしていますよね。その経験も『takt op.』と繋がる部分がありましたか?

まらしぃ:『ちょっとつよいクラシック』は昔僕がピアノを辞める前に習っていた曲が中心だったので、弾いたことのある曲が多くて。楽譜も、先生に書き込まれたボロボロのものを引っ張り出してきたりしましたね。昔の記憶を頼りに、先生の教えを思い出しながら弾いていたので懐かしい気持ちになった制作でした。

Q.「ライブの日に必ず行うルーティーンはありますか?」

まらしぃ:ルーティーンではないですが、その日の朝からライブが終わるまで物は食べないようにしてます。眠くなっちゃうので。

――空腹で耐えられなくなりませんか?

まらしぃ:慣れるんです(笑)。お腹がいっぱいになると眠くなったり、満足してもういいかなって思いがちなんですよ。せっかくお金と時間を使ってきてくれる方がいるので、それは避けたいなと思いまして。

――今日のような配信の際はどうしているんですか?

まらしぃ:今日も食べてないですよ(笑)。終わったら食べます。やっぱり慣れですね。

Q.「曲を仕上げる際は楽譜を書かないと伺った気がするのですが、作曲の流れをお聞きしたいです。堀江晶太さんと作った『十年越しのラストピース』のときはどうでしたか?どれくらいの時間で完成したのでしょうか?」

まらしぃ:「十年越しのラストピース」はオンラインで通話をしながら作ったんですが、最初に原型となるラフ音源を共有して、それを元に冒頭から作っていきました。堀江くんは本当に打ち込むのが早いので、おんぶにだっこというか(笑)全部甘えて打ってもらったんですけど、「この部分がそう来るならピアノはこっちがいい」とか、「こっちのコードにいくならメロディはこっちに」とお互いアイデアを出しながら、3時間くらいでできた気がしますね。

――3時間! 早いですね。

まらしぃ:早いんですよね。それでできたものを一晩寝かせてもう一回聴いて、微調整していきました。

――ちなみに、お1人で作る際の作曲の流れというと?

まらしぃ:自分のオリジナル曲だとピアノをポロポロ弾いて、お気に入りのフレーズがあったらそれをピックアップして膨らませていくことが多いです。ミクさんとかに歌ってもらうような歌詞がついている曲であれば、一番聴いてもらいたいところから作ったりしますね。この間作った雪ミクさん(『SNOW MIKU 2023』)のテーマソング「SnowMix♪」はかけ声の〈Chu Chu ru-Chu Chu ru-Chu Chu〉から作りました。

Q.「配信やライブの際に誕生日の人に向けて『Happy Birthday to You』を弾いていますが、始めたきっかけはなんですか? 最初に弾いたのはいつ頃でしたか?」

まらしぃ:いつからだったんだろう……かなり初期なので、もう10年は余裕で経ってると思います。生放送歴自体はYouTube Liveよりニコニコ生放送の方が長いんですが、ニコ生時代に「今日誕生日なんです」っていう方がいらっしゃったのが始まりだったと思いますね。1回やったら「今日は何でやらないんですか?」みたいな感じになるじゃないですか(笑)。

Q.「最近よく聴いている曲、お気に入りのアーティストさんがいたら教えてください」

まらしぃ:最近のアニメだったら『チェンソーマン』(テレビ東京ほか)の楽曲は本当に素晴らしい曲ばかりでしたね。あとは昔から自分の好きな曲ばかり聴く傾向が強くて。『東方Project』もそうですし、車の中では『UNDERTALE』のサウンドトラックを無限に聴いてますし。あとは知り合いが出したCDとか、同人即売会で交換していただいたCDとかを車で聴くことも多いですね。

――注目していたり、観ているアニメ、漫画は他になにかありますか?

まらしぃ:『ぼっち・ざ・ろっく!』(TOKYO MXほか)は観ていて懐かしい気持ちになりましたね。漫画だとヤングジャンプの『ウマ娘 シンデレラグレイ』であったり、『ジャンケットバンク』っていう銀行とギャンブルの漫画もすごく好きで、毎週楽しみに読んでますね。

Q.「今後日本国外への旅行や海外公演の予定はありますか?」

まらしぃ:YouTubeで動画投稿や配信をしていても、海外の方とか外国の言葉で応援してくださる方がいらっしゃるのは見えてるので、嬉しいですね。聴いてくれる人がいるのであれば海外でもライブをやってみたいですし、純粋に海外のホールのピアノがどういう音がするかにも興味があるので、行ってみたいなとは思っていて。質問をくださった方は香港の方とのことですが、香港は食べ物も美味しくて好きな場所の一つなので、機会があったら行きたいです。ライブをやる時には足を運んでもらえたら嬉しいですね。

Q.「グランドピアノをお迎えするスタジオ建設という夢が完成間近となった今、もう一歩先の夢は見えてきていますか?見に行きたい新しい世界、夢があれば聞かせてください」

まらしぃ:何も考えてないですね(笑)。企画の趣旨がわからない方のために軽く説明すると、自分のスタジオを作ってそこにピアノを置いて配信できたらいいなと思っていて、それがそろそろ実現するという段階なんです。次から次へというのも野心的で素晴らしいと思いますが、まずは完成してピアノが弾けるという幸せを噛みしめたいですね。そのあとに、例えばダミーヘッドマイクのようないいマイクに手を出してみようかなとか、そういうのはあるかもしれないですけど。

――今はとにかくスタジオでグランドピアノをじっくりと噛みしめたいと。

まらしぃ:そうですね。強いて言うなら、先ほど海外の方の質問もありましたが、まだお邪魔できていない都道府県や国、地域もあるので。僕もいつまでこういう活動ができるか分からないですが、やれるうちにお邪魔してピアノを聴いてもらえたらいいなと思っています。そんなに遠くないうちに実現できたらいいなと思いますね。みなさんの近所に私が行くときは観に来てもらえると嬉しいです。

アマツキツネ 10th Anniversary 初回限定盤ジャケット
『アマツキツネ 10th Anniversary』初回限定盤ジャケット

■リリース情報
『アマツキツネ 10th Anniversary』
4月26日発売
<収録曲>
01 アマツキツネ (10th Anniversary ver.) feat.鏡音リン
02 弧ギツネの乱 (10th Anniversary ver.) feat.鏡音リン
03 天照ラセ (10th Anniversary ver.) feat.鏡音リン
04 新人類 feat.鏡音リン ※新曲[まらしぃ、じん、堀江晶太(kemu)共同制作曲]
05 KITSUNE Pâtissière feat.鏡音リン ※新曲
06 アマツキツネ (Piano ver.) feat.鏡音リン
07 アマツキツネ Solo Piano
08 天照ラセ(まらおバンドver)
09  弧ギツネの乱(まらおバンドver)
Special Track
10 アマツキツネ feat.高橋洋子

アルバムサイト:https://www.subcul-rise.jp/marasy/kitsune/

【初回限定豪華盤】
CD+金箔押し特製スリーブケース+アートブック付(28P)
SCGA-00177 ¥3,500(税込)

【通常盤】
CD
SCGA-00178 ¥2,800(税込)

まらしぃオフィシャルHP:https://marasy8.jp/

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