Appy lil Quokkaが目指す、音楽を通したコミュニケーションの構築 「人と人が繋がるような場を提供したい」

Appy lil Quokkaの音楽とコミュニケーション

 渋谷・下北沢を拠点に活動する3ピースロックバンド、Appy lil Quokka(アピリルクオッカ)。3人は、「Happy Music! Happy Communication!」というテーマを掲げながら、精力的にライブ活動、制作活動を重ねており、2月17日には、かねてよりライブで披露し続けていたミクスチャーロックナンバー「Tokiwo」を配信リリースした。

 楽曲のタイトルが示唆しているように、この曲のメインテーマは東京である。都会育ちの3人にとって、東京はどのような街なのか。そして、これまで数々のアーティストが歌ってきた「東京ソング」の系譜に連なる今回の新曲に、どのような想いや決意を込めたのか。今回、バンドにとって初となるインタビューで、Ritz(Vo)、池田リュウケイ(Gt)、捧太智(Dr)の3人に、結成のきっかけから「Tokiwo」の制作背景について話を聞いた。(松本侃士)

バンドのコンセプトは「Happy Music! Happy Communication!」

Appy lil Quokka

――この記事を通して初めて皆さんのことを知る読者の方も多いと思いますので、はじめに自己紹介として、3人の出会いやバンド結成の背景から聞かせてください。

Ritz:3人の出会いは、もともと大学の軽音サークルが一緒で。大学を卒業した当時、僕が浅草の近くの駅に住んでいたんですけど、そこの居酒屋で集まって「またバンドやろうぜ」と言い出したのがきっかけです。もともとすごく仲が良かったのもありますし、音楽の趣味も合うので声をかけました。一緒にスタジオに入ってジャムったりしていたんですけど、当初はもう少しロックンロールな感じ。オールディーズのテイストも含んだ音楽性のバンドでしたね。

捧太智(以下、捧):ある時、(池田)リュウケイが「スキニー」という僕たちが一番最初にリリースした楽曲のデモを持ってきて、その曲のテイストが今までやってきたロックンロール寄りのものと違って、みんなの中で「これめちゃくちゃいいんじゃない?」という感触があって。そこから大幅に曲調やバンドの方向性を変えて、2021年5月にバンド名も変えて、Appy lil Quokkaとして新しいスタートを切りました。

――「スキニー」という楽曲が、皆さんにとっての大きな転換点だったのですね。

池田リュウケイ(以下、池田):嬉しい(笑)。

Ritz:この曲ができた日の思い出話になるんですけど、僕自身もリュウケイも、それまでのバンドの音楽性にあまりしっくりきていなかった部分があって。ある夜、僕の家でメンバーで集まって、リュウケイが持ってきてくれた「スキニー」のデモを今とほぼ同じ形まで一気に完成させて、歌詞も書き上げて。

――まさに、バンドにとってのターニングポイントの一夜ですね。

Ritz:その間、彼(捧)は寝てました(笑)。

――普段の楽曲制作は、Ritzさんとリュウケイさんが土台を作った上で進めている感じですか?

池田:基本的に僕とRitzの2人で作っています。それぞれが曲の種を持ち寄って、それをバンドのアンサンブルの中で詰めながら膨らませていく感じですね。

捧:この2人が作る曲は、毎回心から「いいな」と思っているんで、アレンジを詰めていく上では自分の個性を入れるというよりは、バンド全体を支えていく意識が強いですね。もちろん、所々に自分なりのプレイを挟んではいるんですけど、基本的には楽曲の良さを引き立たせることを第一に考えています。

――2021年夏に1stシングル「スキニー」を配信リリースしてから約1年半が経ちました。ライブや音源制作といった活動を重ねる中で、もし自分たちが思うAppy lil Quokkaの強みやテーマが言語化できていたら教えてください。

捧:たしかリュウケイが最初に言い出した気がするんですけど、僕たちは「Happy Music! Happy Communication!」という標語を掲げていて。良い音楽を作って鳴らすという大前提はあるんですけど、僕たちはその先の音楽を通したコミュニケーションを大事にしたいと思っています。

Ritz:例えば、ライブに来てくれたファンの方同士が繋がって、ライブの後に話したり食事したり。僕たちもお客さんたちと接していきたいですし、僕たち自身も音楽を通してバンドの絆が深まっていくと思っています。音楽そのものだけではなく、音楽を通して人と人が繋がるような場を提供したいなっていう思いがあって。「Happy Music! Happy Communication!」は、そうした僕たちの考えの中から生まれた言葉なんじゃないかなと思っています。

――この言葉を提唱したリュウケイさん、いかがですか?

池田:解釈は人それぞれですからね。そこに幸せな空間が生まれてるんだったら、それでいいです。

Ritz&捧:(笑)。

Ritz:各曲のテーマ的には、決して全てがハッピーというわけではなくて、それこそ最初にリリースした「スキニー」は、コロナ禍のやりきれない感じや虚無感を表現した曲なんですよね。必ずしもハッピーなテーマばかりを歌っているわけではないんですけど、そうした僕たちの音楽に共感してもらったり、自分も頑張ろうという気持ちに少しでもなってもらえて、最終的に同じ気持ちを共有することでハッピーになってもらえたら嬉しいという思いがあります。

捧:そうした音楽を通したコミュニケーションを実現させるためには、まずは何より自分たち自身が音楽を楽しまなければいけないと思っているので、ライブでは何よりも楽しむマインドを大事にしていますね。

――2021年10月リリースの「ショートエッセイ」という曲の中に、〈Tokyo Silent Freedom〉というワードが歌われていて、今回の新曲「Tokiwo」の曲名も東京にかかっていますよね。まず、皆さんにとって東京とはどのような街なのか、それぞれの東京観や東京に対する想いについて聞かせてください。

Ritz:僕は名古屋で生まれて、その後は東京で育ったんですけど、大人になってから東京を離れて地方に住んでいたことがあったんですよね。その時に、自分の生まれ育った東京に思いを馳せることが多くて。東京は冷たい街とか、何でもあるようで何もない街とかよく言われたりしますけど、やっぱり革新の街というか。日本の中心地として、いろいろな技術や文化が次々と生まれていく場所だなと思っています。

――一度、地方に行ったからこそ、客観的に東京の良さを知ることができたのですね。

Ritz:東京にずっと住んでいた時は、良いところだと思えないことも多かったんですけど、やっぱり一回離れてみることで気付く東京の良さが自分の中で強くありました。

捧:僕は東京生まれ・東京育ちなので、感覚的には、東京は自分にとってのホームタウンと言えると思います。とはいえ、東京の中でも町田の方に住んでいたので、都心に対しては小さい頃から憧れというか、すごいキラキラとしたイメージがありました。高校は新宿の辺りで、大学は渋谷だったので、その頃からキラキラの中にある、良い意味でのカオス感を知り始めました。

――池田さんは、いかがですか?

池田:そうですね。華やかさもそうだし、何より人が多くて、何でも揃っていますよね。でも、揃って完結しているのではなく、そこからさらに新しいものが次々と生まれていく。そんな場所だなと思いますね。

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