齊藤なぎさ、=LOVE卒業ライブに見たアイドルとしての矜持 5年間伝え続けた「大好き」の言葉

齊藤なぎさ、=LOVE卒業ライブレポ

 齊藤なぎさは、煌めくスパンコールとピンクのリボンをあしらったマイクをステージに置き、花道の階段を上っていった先で、トレードマークのツインテールをほどく。それが、=LOVEの齊藤なぎさがアイドルとして最後に見せた姿だった。

 筆者が=LOVEを初めて取材したのは、2017年9月にリリースされたメジャーデビューシングル『=LOVE』のイベント会見。その時から齊藤は会見に同席していたプロデューサーの指原莉乃に「大好きです」と伝えていたのをよく覚えている。当初は齊藤からの「大好き」は指原をはじめ、“誰でも言ってもらえるもの”という共通認識があったが、彼女は一貫してその言葉を伝え続けた。5年4カ月の間、卒業コンサートに『~齊藤なぎさ卒業コンサート~ 現役アイドルちゅ~ みんなのこと大好きだよ♡』というタイトルがつくほどになるまで。「点滴石を穿つ」ということわざがあるが、齊藤が“最強のアイドル”になれたのは、彼女自身が積み重ねた努力の賜物だ。「私の青春の全て」だという5年間には嬉しいことや楽しいことだけでなく、グループの先頭に立つことで理不尽な悪意に晒される悔しい場面もあった。それでも挑戦の姿勢を彼女は諦めることはなかった。マイクを置いた先にあったのは、努力でできた花道だ。

=LOVEライブ写真

 1月13日に開催された、齊藤の卒業コンサートの会場となったパシフィコ横浜 国立大ホールは、神奈川県出身の彼女の地元であり、グループ加入前にAKB48の握手会で母親と何度も来ていた馴染みの場所でもある。彼女が憧れたのは、可愛くて、かっこいいキラキラとした王道のアイドル像。それは山口百恵を彷彿とさせるアイドルとしての幕の閉じ方にも、卒業コンサートのタイトルに冠し、公演の幕を開いたソロ曲「現役アイドルちゅ〜」にも表れている。彼女がリスペクトする嗣永桃子や道重さゆみ、渡辺麻友といったレジェンドたちにも負けない、歌詞、曲調、衣装全てにおいて王道のアイドルソング。歌い出しの〈今日も鏡をチェック 最高の笑顔 届ける 才能に甘えないの 努力が大事よ〉は、指原が齊藤に宛てたアイドルとしての評価であり、モットーのようにも思える。

=LOVEライブ写真

 同じ王道アイドルソングでグループの1stコンサートで歌った指原のソロ曲「それでも好きだよ」を皮切りにしてスタートした、齊藤自身のやりたいことを詰め込んだパートでは、久々の披露となった「推しのいる世界」や≠MEの「君はスパークル」といったアイドルとファンの関係性を描いた楽曲が多く選曲されていた。ライブ取材がコロナ禍による配信視聴から、現地での観覧に切り替わりつつある中で、筆者が以前から感じていたのは齊藤を推しとするファンの思いの強さだった。

 卒業発表のあった国立代々木競技場第一体育館でのデビュー5周年記念コンサート『=LOVE 5th ANNIVERSARY PREMIUM CONCERT』では、同行者に支えられるようにして会場を後にするファンを目撃し、今回のパシフィコ横浜に向かう電車の車内では「なーたん」と書かれたプレートをトートバックに勲章のように付けたファン、会場近くのカフェではきちんと節度をわきまえながらグッズの生写真を開封するファンを目の当たりにしていた。それらは配信の外に広がる、SNSだけではなかなか見えてこない世界。「現役アイドルちゅ〜」のリリックにもある〈公式両想い〉の関係性にあるのはもちろんのこと、齊藤がファンに向ける“重い愛“以上にファンは齊藤を思っているのかもしれない。それは小指で交わされた指切りげんまんの約束の通りに、これからも変わらずに。また、ここまで述べてきた筆者が目撃したファンが全て女性だったことも齊藤が形成するアイドル像の特徴でもあり、かつて羨望の眼差しを向けたAKB48のような存在に彼女自身がなっているのと同時に、近い将来、齊藤に憧れてアイドルになったというような人物が出てくるかもしれない。

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