10-FEET、結成から25年間の歩みを辿る特別インタビュー 自在なミクスチャーで築いた“確固たる居場所と独自性”

10-FEET、25年間の歩みを振り返る

試行錯誤の果てに、自然体のまま幅広い曲作りへ飛躍

ーー『thread』(2012年)や『Fin』(2017年)が生まれる2010年代には、音楽性の変化がさらに進んで、シンプルな歌やメロディの良さがより際立っていきます。具体的に言うと、2000年代はパンクやミクスチャーを中心としたアルバムの中に歌モノが何曲か入っているイメージでしたけど、『thread』以降になると、むしろ歌モノがアルバムの軸になっていったんじゃないかなと。

TAKUMA:そうですね。めっちゃ聴いてくれてるやん!

NAOKI:でも当時、歌モノを増やしていこうという意識ではなかった気がしますね。常に少しずつ変化して、今までやってなかったことをしようという意識の中で、自然と歌モノに面白さを感じていったのかもしれないです。

ーーベーシストとして、音の鳴らし方も当然変わりますよね。

TAKUMA:昔はもっとガリガリ鳴らしてたもんね。

NAOKI:うん、音の好みはたぶん大幅に変わってると思う。昔は「この音じゃないとカッコよくない」ぐらいの気持ちでやってたんですけど、例えば楽曲の中で、より重心がしっかりしている音を出してみることに面白さの意識が移っていったのかもしれない。それは聴いていた音楽の影響というより、10-FEETというバンドにいろんな要素が増えてきて、それをどうやって演奏で表現しようかと考えた結果やと思いますね。

ーーKOUICHIさんはどうですか。

KOUICHI:僕としては(2011年の)震災も関係しているかなと思います。当たり前だと思っていたことがそうじゃないとわかって、ライブに対する気持ちも大きく変わりました。いろんなところでライブをやってるけど、次も同じ場所でできるかわからないし、1本1本の大切さをより噛み締めなあかんと思ったきっかけが震災ですね。そういう考えが生まれたことで、より歌の力が強い曲に聴こえているのかもしれへんし、今までとは意識を変えて演奏していこうと思ったことが、曲の良さにも繋がったんじゃないかな。さっき挙げた「その向こうへ」もまさにそんな曲です。

10-FEET - その向こうへ LIVE VERSION(2018.2.22 Zepp Tokyo)

ーーちょうど震災後、最初のシングル曲ですもんね。TAKUMAさんとしては、歌そのものが10-FEETの大切な武器になったことについて、どう捉えていますか。

TAKUMA:「CHERRY BLOSSOM」から日本語の歌で伝えることを始めて、作品を重ねるごとにそれを追求していくんですよね。『REALIFE』(2004年)、『4REST』(2005年)を作って、『TWISTER』はさっき言った通り音楽的なことはもちろん、歌詞で伝えることもすごく頑張ったアルバムで。けど次の『VANDALIZE』(2008年)では逆に、そういうことにフォーカスするのをやめて、ひたすらガーッと作り込んで、「お、なんかカッコいいのできたね」みたいなやり方を目指したんです。「goes on」も入ってるアルバムやから「いい歌詞で、音楽的にも頑張ろう」ってことは染みついていたとは思うんですけど、どちらかというと「STONE COLD BREAK」みたいな「英語で何を言ってるかわからんけど、なんかカッコいい曲ってライブの基本やな」ということを思い出しながら制作していたというか。

 それから『Life is sweet』(2009年)になると、例えばAメロ、Bメロで4行くらいになる曲があって、伝えたいことをその中に収めて書こうとした時に、「確かに普通に伝えようとしたら4行かかってしまうけど、あえて8文字くらいだけで言い切った方が、ハッとなって、よく伝わるのかもしれん」とか、そういうことに気づき始めるんですよね。『Life is sweet』でそれがちゃんとできているわけではないんですけど、「under the umber shine」とか「風」みたいな曲で「日本語でカッコよくロックするには?」への答えが1回出るんです。それと同時に、ひたすら何を言っているかわからないけどカッコいい「1sec.」「チャイニーズ・ヒーロー」とか「super stomper」もでき上がるんですよ。その2つを合わせて、“今の10-FEETはこれだ”っていうことが表現されているのが『Life is sweet』で。「アンテナラスト」の歌詞じゃないですけど、“10を伝えるには、10で言ったら伝わらへん”ことを音楽的に感じ始めました。

10-FEET - 風 LIVE From 京都大作戦2011
10-feet - 1sec.

ーーなるほど。面白い!

TAKUMA:それを経て『thread』になると、深いメッセージを伝えようとしても、あまり眉間にしわを寄せて考えることがなくなったというか、手法として自分の細胞の中に組み込まれたような気がする。目いっぱい音だけを楽しんでいる曲もあれば、「シガードッグ」「その向こうへ」みたいな日本語でしっかり伝えたい曲も両方あるのが『thread』ですけど、『Life is sweet』で1つの答えを出せていて、なおかつ『Life is sweet』みたいなアルバムを作ろうって変に意識せずに作れたからこそ、結果として“『Life is sweet』みたいだけど『Life is sweet』を超えるアルバム”ができたと思うんです。その時に合うものを作ろうぜっていう風に変わっていきながら、良い音楽を作れるようになった気がしますね。

ーー最新作『コリンズ』(2022年)も、映画『THE FIRST SLAM DUNK』と向き合ったことで、自由に試せるモードになってでき上がったアルバムだと思うと、そういう自然体に至るための気づきは、TAKUMAさんのソングライティングにとって大切なのかもしれませんね。

TAKUMA:そう思いますね。だから「歌が大切な武器になったことをどう捉えているか」っていう質問に返すとしたら、俺たちは歌モノを作ってるんやとか意識せずとも、その時やりたいことがバンドにとっていいものになっていく状態をしっかり作れていた、ということなんやと思います。

10-FEET - 蜃気楼 LIVE VERSION(10-FEET野外ワンマンライブ2019 in 稲佐山)

新しい景色を見た25周年イヤーの“その向こうへ”

ーーそして2020年代は、コロナ禍でライブの形も一気に変容しました。その中で昨年~今年にかけて廻った初のホールツアー『10-FEET “アオ” TOUR 2021-2022』は大きかったんじゃないかと思いますが、KOUICHIさんはどう振り返りますか。

KOUICHI:僕もホールツアーはほんまにいい経験をしたなと思ってます。ワンマンはほぼライブハウスでしかやったことがないバンドやし、どうなるかなと思ってメンバー同士いろいろ話し合ったりしてたけど、結局やることは一緒やったんやなと。

ーー違ったところと同じだったところ、具体的には?

KOUICHI:まずライブハウスと違って天井が高いので、音の鳴りが全然違って。けど、シンプルに音が良かったので、ライブハウスにはない響きも楽しめて、演奏していて気持ち良かったですね。同じなのは、お客さんが楽しんでくれているということ。最終的にはあまり考えず、いつも通りやったらいいんかなと思えるようになりましたし、俺らも案外まだいろんなところでライブできるバンドなんやなと。またやってみたいなと思ってます。

ーーNAOKIさんには先日、太陽が丘で行われた『10-FEET 25th ANNIVERSARY ONE-MAN TOUR 2022 FINAL in 太陽が丘』のことを伺いたいのですが、率直にいかがでしたか?

NAOKI:アルバムのレコーディングも並行しながら準備してたから、リハーサルもそんなにたくさん入れなくて。すごく集中して臨んだライブやったからこそ、あんなに一瞬で終わるとは思わなかったです。「第ゼロ感」を初めて人前でやったことも含めて、ずっと楽しめたなと。やることを2日前に決めた曲も、2曲くらいあったりしました。

ーーそれどころか、その場で「Freedom」を急きょやることになるというコントのような流れもありました(笑)。

TAKUMA:観ている立場やったら、絶対おもろいだろうなと思いますね。ステージ上で、メンバーがメンバーに対して謝罪してる光景とか。

NAOKI:「Freedom」はほんまに準備していなかったので、フレーズが飛ばへんかなとか、すごい緊張感でした(笑)。でも、太陽が丘のライブはほんまにすごく良かった。環境とかコンディションも含めて、今後あれ以上できるんかなって不安になるぐらいで。でも、ああいうライブができたってことは、まだ面白いことが待っている気がするし、来年のツアーもきっといいものになるんじゃないかなと思ってます。

TAKUMA:体に応えるロングツアーですけど、経験してきた分だけ疲労も減っていいツアーになるんじゃないかなという期待もあって。熱量込めて全力で1本1本やっていくので、40台後半になってもまだまだ頑張って成長していけるんやで、ということを全国各地に届けたいと思います!

10-FEET – 第ゼロ感(映画『THE FIRST SLAM DUNK』エンディング主題歌)

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