10-FEET、結成から25年間の歩みを辿る特別インタビュー 自在なミクスチャーで築いた“確固たる居場所と独自性”

10-FEET、25年間の歩みを振り返る

『京都大作戦』で結んだ絆 ~3人から“みんなのイベント”へ~

ーーそして主催フェス『京都大作戦』の第1回が2007年でした。初回は台風で中止になってしまいましたが、『AIR JAM』以降、いわゆるアーティスト主催フェスがそこまで浸透していなかった中で、どういうフェスにしようと思って開催したんでしょうか。

TAKUMA:最初はシーン作り云々ではなかったというか、単純に結成10周年だから何かやろうとしただけのことで。当時のフェスと言ったら、全国的には『FUJI ROCK FESTIVAL』『SUMMER SONIC』『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』『RISING SUN ROCK FESTIVAL』とかが主に周知されていたフェスで、そういう規模感のフェスを僕らがやるのは、発想としてまずなくて。一方で『AIR JAM』は何がすごかったかというと、いろんなバンドやカルチャーが集まってるのはもちろん、Hi-STANDARDがカリスマやったことが一番デカいんですよね。そういうフェスを10-FEETがやるのは、『フジロック』をやること以上にあり得ない。謙虚でも何でもなく、当時の僕らはリアルにそれに見合った動員がなかったので。でも、そんな僕らやけど、10周年まで頑張ってきたから「1回だけ夢を見させて!」となったのが正直な開催理由です。

 メロコアとかパンクのシーン的にも、ツアーとかで人の手を借りてライブをソールドアウトさせてたらあかんと言われていたし、ちゃんと自分たちだけでソールドできるライブハウスにゲストを呼んでライブしてもらうのが普通やったんです。でもフェスとなると1万人とか2万人が入るわけやから、到底俺らだけでは無理で、自分たち以外のアーティストの力も借りてソールドさせてもらうしかなかったんですよ(笑)。それを十分に踏まえた上で、「1回だけ、俺らのフェスを開催するのに力を貸してもらっていいですか?」くらいの気持ちで出演バンドにお願いしに行ってました。

10-FEET - nil? LIVE From 京都大作戦2008
10-FEET - goes on LIVE From 京都大作戦2016

ーーでも結果的に1回だけでなくなったのは、中止の翌年にしっかり開催できたことが大きかったんでしょうか。

NAOKI:1デイ予定やったものが、翌年には2デイズ開催になって、俺らの中ではそれでリベンジかませたし完結した気になってたんですけど、出演バンドみんなが「来年もやるんやろ?」って、当然のように言ってきたので(笑)。

TAKUMA:そうそう。Dragon Ashとか、いろんな人が「来年もやりなさい」みたいなことを言ってくれたんですよ。でも、ほんまに売れてる人ばっかり出てもらってたから、その人らの力を借りながらイベントを続けるなんて絶対に思わなかったんです。でも……みんなが言うんやったら続けてみようかっていう感じ(笑)。周囲の力で中止の悲しみをリベンジできたという物語が、最初から作れたことも大きかったと思いますね。

ーーでも、今や『京都大作戦』はあらゆるバンドマンにとって憧れの場所になりましたよね。源氏ノ舞台では、絆を確かめ合いながら10-FEETに繋ぐために最高のライブが繰り広げられて、牛若ノ舞台ではいくつかの若手バンドたちが10-FEETにフックアップしてもらえる喜びを爆発させながら、より大きなバンドになることを目指してライブしていく。そういう場所を10-FEETが作ったのは、本当に素晴らしいなと思います。

TAKUMA:最初は俺らのイベントやったけど、2回目を開催できた瞬間から“みんなのイベント”になりましたね。今年だと、Saucy Dogなんて俺らよりも動員あるのに、向こうから「牛若ノ舞台でやらせてもらえますか?」と打診してくれたりして……なんかすみませんと思ったけど、俺らも熱い想いに応えさせてもらおうと思って、牛若でお願いしたりとか。『大作戦』は本当に、そういうみんなの気持ちの上で成り立っているので。

NAOKI:出演バンドのおかげで成立している感覚はほんまに強くて、開催中はずっと頭が上がらないんですよ。それでいて、みんな『大作戦』でしか見られへんようなすごいライブをしてくれるし、その中でトリをやらせてもらえるなんて、10-FEETとしてあんなに贅沢な日はないんじゃないかというくらい。牛若でも若いバンドが「このステージに立つのが夢でした」と言って、熱いライブをしてくれたり。若くないのに、THE冠に出てもらったりとか(笑)。

10-FEET - VIBES BY VIBES LIVE From 京都大作戦2019
10-FEET - ヒトリセカイ LIVE From 京都大作戦2019

ーーNAOKIさん、ステージでコラボされてましたよね(笑)。それで言うと出演バンドの幅広さも『京都大作戦』の持ち味だと思うんですけど、メロコア、ミクスチャーからヘヴィメタル/メタルコア、ハードコア系のバンドに加えて、今年はSaucy Dogやgo!go!vanillasもいたりと様々で。どのバンドが10-FEETと対バンしても違和感がないからこそ、ラインナップの幅広さはそのまま、10-FEETの音楽性の幅広さにも直結していると思うんです。彩り豊かなアルバムを作ってきたことを実感できる場所でもあるんじゃないかと思いますけど、いかがですか。

TAKUMA:……もともとメロコアを主体として活動してきたバンドの歴史を辿ると、次から次へと同じジャンルのすごいバンドに出会ったので、ただメロコアをやってるだけでは歯が立たへんなと思うようになって。ライブハウスのフライヤーとかを見て「ここに10-FEETにいてもらわないと困るな」と思ってもらえるにはどうしたらいいかなと考えていって、そこから聴く音楽の幅が広がったというか。本来自分が好きだったミクスチャーとか、昔好きだった歌謡曲やポップスを聴き直したり、あとは上京してからR&Bもよく聴くようになって。NAOKIはたしかアッシャー聴いてたよな?

NAOKI:聴いてたな。

TAKUMA:あとはレゲエも結構聴いていて、僕はブジュ・バントン、NAOKIはエレファント・マンを聴いていたり、KOUICHIも常に僕が知らないような音楽を聴いていた覚えがあって。それまでは聴く音楽とバンドで鳴らす音がそのまま結びついていたからこそ、新しく何かを聴くことで、10-FEETに取り入れられて面白くなるんじゃないかとか、そういう想いがあったのかもしれないし、『大作戦』のラインナップの広さもそういうものの先にあったんじゃないかと思ってます。

ーーそういう音楽性の広がりが如実に出始めたアルバムというと、ちょうど『京都大作戦』開始タイミングにも近い『TWISTER』(2006年)あたりになる気がします。

TAKUMA:まさに『TWISTER』はそういうアルバムやと思いますし、僕らも普段聴いている音楽を10-FEETに取り入れることを意識していましたね。地元の先輩のドクター長谷川に、R&Bとかヒップホップとかファンクとか、いろんなグルーヴの出し方を教えてもらって、レコーディングでもちょっと過酷なくらい細かいことをやってたんですよ。そういう期間をしばらく経たことで、聴いた音楽をただガンガンやっていこうとするんじゃなくて、いろんなジャンルの音楽を聴くことは前提としつつ、「なんとなくこれをやりたいな」とか、スッと出てきたものでないと自分の作品として良いものにならへんような気がしてきたんです。あえて2~3年は貪欲に取り入れ続けたことで、その状態が血肉化されたというか。何気なく聴いてる音楽が、意識せずとも自然とバンドで作る音楽になるっていう風に移行できたんじゃないかなと思います。

10-FEET - ライオン

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