2000年代以降に広がるガールズバンド×アニメの多様化 『けいおん!』~『ぼっち・ざ・ろっく!』に至る歴史を紐解く

 この秋から放送スタートしたTVアニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』が、回を重ねるごとに高い注目を集めている。同作は、高いギターの腕前を持ちながらも極度な人見知りによってバンド活動ができない女子高生・後藤ひとりが、ひょんなことからバンドに加入し、仲間と共にサクセスストーリーを繰り広げていくコメディアニメ。バンド×アニメといえば1994年放送の『マクロス7』の存在も欠かせないが、本稿では2000年代以降の流れに注目しながら、その歴史の流れについて簡単に振り返っていきたい。

 2000年代以降で大きな変革をもたらしたのは、筆者が思うに『涼宮ハルヒの憂鬱』の26話「ライブアライブ」の回と『けいおん!』の存在だろう。どちらも京都アニメーション(以下、京アニ)が制作しているが、近年のバンドアニメの流れを決定づけた。

 2000年以前はアニメの映像と音楽を組み合わせることの難易度が高かった。アニメでダンスと言えば、昭和の時代は「〇〇(作品名やキャラクター)音頭」が定番であったが、盆踊りのような簡単なダンスの振り付け程度ならばともかく、緻密さが要求されるバンドの演奏シーンは、絵と音を一致させるのに、タイミングを合わせるなど高度な技術が要求された。

 しかし90年代頃からアニメ制作がセル画からデジタルへと移行していき、音楽と緻密な連携を果たす表現も可能になった。京アニ制作の2作品は、キャラクターによる演奏描写のリアリティが視聴者に大きな衝撃を与え、今でも伝説として語られることが少なくない。

 2010年代のアニメは、アニメの映像と音楽の融合というべき、アイドルアニメとバンドアニメが流行した時代だったように思う。ダンスと楽器演奏という違いこそあるものの、どちらも音楽と映像演出の融合で快感を与えるという点で近いものがある。ここで注目したいのが、バンドをテーマにした作品におけるガールズバンドの多さだ。これは2005年頃から流行した萌え文化と、バンド描写が融合した形である。もちろん『BECK』『ギブン』などの男性バンドを扱った作品もあるが、ガールズバンドを扱った作品と比較すると数としては少ない。

 また2010年代は声優のアイドル化が進み、声優が歌唱することも珍しくなくなった。若手声優は歌えて当たり前という風潮そのものには賛否があるが、バンド×アニメでもキャラクターを担当する声優が歌唱するパターンと、声優と歌唱アーティストが異なるパターンがある。

 後者の流れはヒットアーティストを生み出すことにもつながる。『Angel Beats!』に登場するガールズバンド「Girls Dead Monster」の歌唱を担当したLiSAを、アニソンシーンに広めたことが象徴的だ。当時アニメ作品での歌唱経験がなかったLiSAを起用したことが、のちに『鬼滅の刃』のような多くの人気作で活躍するきっかけを生んだ。

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