TeddyLoid×Giga×q*left「デスペレート」鼎談 MECREだからこそ実現した、多様なシーンをクロスオーバーさせた楽曲制作
TeddyLoid & Gigaの新曲「デスペレート feat. LOLUET」が、クリエイターのためのコミュニケーションスペース「MECRE(メクル)」から配信リリースされ、MVの再生回数が100万回を突破した。
昨年にプロデューサータッグとして本格的に活動をスタートし、Ado「踊」など数々のヒット曲を手掛けてきたTeddyLoid & Giga。新曲は「昨日初めて作品を発表した人も、1,000万回再生動画の主も、フラットに出逢い新しい創作活動ができる場所」をテーマにしたMECREで女性シンガーを募集して制作された1曲だ。多数の応募の中からLOLUETがシンガーの座を射止め、TeddyLoidとGigaが作曲、そしてGigaの多くの作品で歌詞を手がけるq*leftが作詞を担当している。
リアルサウンドでは、TeddyLoid、Giga、q*leftによる鼎談が実現。この曲の制作背景について、そしてネットシーンだけでなくJ-POPやEDMなどグローバルなポップミュージックのシーンにも通じる環境の変化について、語ってもらった。(柴那典)
MECREによるシンガー募集の面白さ
ーーまず「デスペレート feat. LOLUET」のプロジェクトはどういう風に始まったものだったんでしょうか?
TeddyLoid:そもそもGigaちゃんと僕で「TeddyLoid & Giga」という名義と「Giga & TeddyLoid」という2つの名義で創作活動、主にプロデュース活動を行っているんですけど、その中でMECREというプラットフォームから僕宛にまずお話をいただいた縁もあり、シンガーのオーディションをして、今回はTeddyLoid & Gigaで楽曲プロデュースをしようという話になりました。
ーーお二人のプロデューサータッグとしての活動自体はどのように始まったんですか?
TeddyLoid:もともと僕はGigaちゃんの存在を知ってて、Gigaちゃんも僕の存在を知ってたんですけど。最初に一緒にやったのは何年前だったっけ?
Giga:5年前とかだったかな。
TeddyLoid:そこで一緒に仕事をした後、僕のアルバム(『SILENT PLANET: INFINITY』)にGigaちゃんとReolさんで参加していただいたり、そういういろんな縁はあったんですけど、去年から本格的にGigaちゃんとプロデューサータッグとして創作活動をしようという話をするようになった感じです。
Giga:正式に最初に作ったのはAdo「踊」なんですけど、もともとアレンジをしたりドロップを作るのは得意じゃなかったから、最初はそこをやってほしいと思ってTeddyにお願いして。やりやすいなと思って、そこから続いている感じです。
ーーMECREというプラットフォームにはどんな印象を持ちましたか?
TeddyLoid:jon-YAKITORYさんをはじめ、ボカロPの楽曲に特化して募集している感じがあって、それをソニーミュージックさんがやるというのも、ひとつの試みとして面白いなと思いました。
Giga:自分がボカロを始めたときにもピアプロ(コンテンツ投稿サイト)があって、募集みたいなことをしてたから、そういうものが今に受け継がれてるんだなって。やりやすくなってるのもいいなと思いました。
ーー昨年10月にはMECREで女性シンガーを募集して楽曲を制作することが発表されました。そこから曲作りはどんな風にスタートしたんでしょうか。
TeddyLoid:まず募集をかけて、すごい数の曲が届いて。全部聴かせていただいたんですけど、英語の発音が上手い子も多くて驚きました。すごく悩みましたね。
ーーどんな基準でシンガーを選んでいったんでしょうか?
TeddyLoid:数百人から応募があったので、イチから聴いて気になった方をピックアップしていって、そこからお互いに意見を交換する作業をしました。
ーーそこからLOLUETさんを選んだ決め手になったのは?
TeddyLoid:今回選んだLOLUETさんは、日本語、英語ともに発音がすごくよかったんです。他にも素晴らしい方、歌が上手い方がたくさんいたんですが、LOLUETさんはちゃんと自分のキャラクターを持って歌っていたことが選んだポイントの1つでした。
ーー「デスペレート feat. LOLUET」の制作過程についても聞かせてください。
TeddyLoid:この曲は、僕がまずトラックの土台を作って、Gigaちゃんにトップラインやその他を作ってもらって作業したんですけど、その中で今回チャレンジしたかったのが、数々のヒット作を生み出しているq*leftさんとのセッションでした。
q*left:それでお声がけいただいて、曲ができたタイミングで聴かせてもらいました。
「いい作品を作れるやり方は、お互いの得意な部分を任せること」(TeddyLoid)
ーーq*leftさんは八王子PさんやGigaさんの作詞を担当されていましたが、これまでどんな風に楽曲制作に携わってきたんでしょうか?
q*left:八王子Pが兄なので、そもそものきっかけは「歌詞、書いてくれない?」と急に言われたことでした。それを「結構いいじゃん」みたいな感じで使ってくれて、そのまま現在に至ってます。Gigaさんからも10年前くらいにメールで連絡をいただいて、そこからの付き合いですね。
ーーGigaさんがq*leftさんに作詞を依頼したのはどうしてなんでしょうか。
Giga:八王子Pの曲が好きでよく聴いていて、歌詞も自分が表現したい“女の子の曲”みたいな感じだったので、お願いしてみようと思って。10年前に一緒に1曲作って、それからしばらくなかったんですけど、最近またそういう曲をやってみたいなと思って結構一緒にやっています。
ーーTeddyさんから見たq*leftさんはどうでしょう?
TeddyLoid:q*leftさんのすごいところって、歌詞の内容だけじゃなくて、メロディに対する歌詞のハメ方が上手なんですよね。だから聴いていてすごく気持ちがいい。無理矢理な言い回しやハメ方をしない、かつネットの知識もあるので、能力の高い作詞家さんだなと思って興味を持っていました。
ーー曲のテーマはどんな風に決まっていったんでしょうか。
TeddyLoid:3人で通話をしたり、LINEをしたりしながら決まっていきました。僕とq*leftさんで話す中で「ギャンブル」というテーマが出てきて。いろんな人生の選択ってあるじゃないですか。そういう要素をギャンブルと絡めて、「左に行くのか、右に行くのか、“はい”なのか、“いいえ”なのか、そういう話をざっくりとテーマにして作ってみない?」っていう話を最初にしました。
q*left:今回の前にGigaちゃんと一緒に「CH4NGE ft.可不」という曲を作ったんですけど、それもギャンブルがテーマで。ただ、「CH4NGE」は賭け事としてのギャンブルだけど、今回の「デスペレート」は人生自体がギャンブルみたいな感じをテーマにした点は違いますね。
ーーGigaさんとしてはどうですか?
Giga:曲のテーマに関しては、今回はお任せしていた感じでした。ギャンブルと聞いて「いいじゃんいいじゃん」って言ってたかもしれない。
TeddyLoid:僕はいろんな人とコラボレーションしてきたんですけど、Gigaちゃんとの作業はすごくやりやすいというか。一番いい作品を作れるやり方って、お互いの得意な部分を任せることなんですよ。アーティスト同士とか作家同士って、どうしても「ここも自分がやらなきゃ」と思いがちなんですけど、そこのバランスがとれているというか。今回に関しては、テーマはGigaちゃんが僕に任せてくれて、作詞はq*leftさんにお任せしたという感じですね。
ーーTeddyさんとGigaさんが共作する上で、お互い得意なところはどういうところでしょう?
TeddyLoid:僕自身は強烈なバキバキのサウンドとシンプルなメロディが得意なんですけど、Gigaちゃんは繊細なメロディだったり、緻密に計算されたトラックだったりが得意で、わりと僕の真逆にいる人なんですよ。それが重なり合って化学反応が生まれているなというのは、すごく感じます。
Giga:Teddyは「Gigaちゃんのメロディがいいね」と言ってくれるので、メロディを担当することが多くて。逆にアレンジに関しては、ダイナミックな強い曲を作るのは苦手だったりします。あと、自分は好きなジャンルが結構狭いけど、Teddyは幅広くいろんなジャンルの曲を作れるから、そういうところを任せることが多いです。
TeddyLoid:僕の場合は音楽プロデューサーとしていろんな人に曲を書いたり提供してきたんですけど、Gigaちゃんは自分自身がアーティストとして活動してきたり、特定のアーティストに曲を書いたりしてきたので、持っている色も違うから、いい感じにセッションできてると思ってますね。2人とも同じ特性だとぶつかっちゃったかもしれない。
ーーこういう体制だからこそ、「デスペレート feat. LOLUET」でできたことや目指したサウンドはありましたか。
TeddyLoid:人からプロデュース依頼を受けているものは「お任せでお願いします」と言われても、やっぱりその方に似合った曲を作ってしまいがちなんですね。でも、今回のコラボの場合は完全に僕ら主導で決めていくものなので、そこの違いは大きかったです。曲調としてはフレンチタッチを考えていました。BPMも抑えめで、カッティングギターが入ってたり、ファンクっぽいビートがあったりする、オーガニックな楽器を入れた楽曲をこのタイミングでやってみたくて。
Giga:自分はフレンチタッチの曲をやるのは初めてでした。LOLUETさんの声から想像して、ふて腐れた感じのメロディにしようと思ったので、そういう化学反応があったと思います。
ーー歌詞を書く上でも、LOLUETさんの声からの影響はありましたか?
q*left:そうですね。LOLUETさんの曲を聴かせてもらって、元気な感じというより、やっぱりふて腐れた感じというか、あまりポジティブではない歌詞が合うかなと思いました。あとは曲を聴かせてもらった時に、ちょっとレトロな雰囲気があるなと思ったので、歌詞の表記もあえて漢字にしてみたりしました。たとえば「ピエロ」を「道化師」にしたりとか。
TeddyLoid:僕自身、ちょっとレイドバックした曲を作りたかったんで、それをすぐにq*leftさんが汲み取ってくれて、すごくいいセッションになりました。サビのライミングが決まってるところとか、カッコいいなって思いますね。