草彅剛、シリーズもの起用で残してきた数々の名演 6年ぶり連ドラ主演に集まる注目

 例えば、余命1年を宣告された高校教師を演じた『僕の生きる道』。役作りのために大幅に減量したというプロ意識にも驚かされたが、その憂いを帯びた眼差しの演技に目が離せなかった。なかでも名場面として語り継がれているのが、残り僅かな自分の人生に対して、未来に希望いっぱいのカップルに向けて捧げるスピーチのシーン。こみ上げるものを喉の奥に押し込みながら、言葉を紡ぐシーンに胸が押しつぶされそうになったのを覚えている。その視線の先に何が見えているのかと、想像力を掻き立てる演技に魅了された。

 そんな心が震える儚い演技を披露したかと思えば、『銭の戦争』では驚異的な記憶力を持つ東大卒のエリートながら父の借金をきっかけにすべてを失った“復讐に燃える男”を熱演。パーティー会場にて膨大な量のセリフをまくしたてて暴走するシーンは、まさに圧巻の迫力だった。

 誰もが草彅に思い浮かべる「温厚そうな人」というイメージそのものを打ち壊しにいく、そんな気概を感じる場面でもあった。作品ごとにことごとく我々の予想をはるかに超えてくる名演技を見せてくれる。だからこそ、“次はこんな草彅剛が見てみたい”というシリーズが成立するのではないだろうか。

 「僕は『昨日できたことが今日できるかわからない』というのが演技の基本だと思うので、今回の作品も、その時感じた新鮮な気持ちを大切に作品に取り組みたいと思います」とは、草彅が本作に寄せた意気込みコメントの一節だ(※1)。もしかしたら草彅自身も、どんな自分が出てくるのか予想できずに楽しみにしているかのような言葉ではないだろうか。ファンも、スタッフも、そして草彅自らも待ちに待った“戦争シリーズ”の最新作。今この瞬間の“俳優・草彅剛”を捉えた名作が生まれるのを心待ちにしている。

※1:https://www.ktv.jp/wana/

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