SKRYU、なぜ“笑顔”を追い求めるのか? メジャーアルバム『ザ・ライト』とパワーじゃない勝ち方

幕張メッセを埋め、2026年にメジャーシーンへ。SKRYUのメジャーファーストアルバム『ザ・ライト』は、その名に呼応するようにして光の速さで作り上げられた11曲で構成される。Shin Sakiura、maeshima soshi、Noconocoといったお馴染みのプロデューサー陣に、DJ PMX、tofubeatsを加えた布陣。ゲストにはラランドのサーヤとMONKEY MAJIKを迎え、あえてラッパーの客演はゼロという構成で、メジャーへの門出にふさわしい華やかさとは一線を画した、変わらぬSKRYUらしさを前面に押し出した作品に仕上がった。産みの苦しみを赤裸々に綴ったラップから、架空の結婚生活を描いたニュージャックスウィング調のラブソング、青春の記憶とサンプリングが交差する感動的なコラボ曲、そして大切な夜を噛み締める乾杯ソング……そのすべては、彼の脳みそをそのまま切り取ったような、多彩で、ある意味では“めちゃくちゃ”な作品が詰まっている。
お茶の間を本気で狙いながら、自分の表現は一切曲げない。そのスタンスを、このアルバムは証明している。(編集部)
本気の自分を詰め込んだ作品を出すことの意味

――アルバム『ザ・ライト』のリリース、おめでとうございます。すっかりスターの風格だなと思って。
SKRYU:いよいよ近づいてきましたね、スターに(笑)。
――メジャーデビューアルバムということですが、これまでとは異なる意気込みや違いはありますか?
SKRYU:最初はめっちゃ意気込んで、時間を掛けて悔いのない作品にしようって思ってたんです。でも、今回収録されている11曲が今まででいちばん、時間が掛けられなかったんですよ。
――そうだったんですか。
SKRYU:気がついたら納品まであと1カ月しかない、みたいな。今年の3月は“絶(Zepp) Tour 2026”があって、ツアーが終わったら1カ月くらい休めるらしい、という噂を聞いていたんですよ。ツアーで喉もやられてキツかったし、4月はまるまる1カ月休もうと思って実家に帰省していたんですけど、2、3週間くらい経った時にチームのなかで「どうやらSKRYUが曲を書いていないらしい」という話が出てきて、「あいつは何をしているんだ」と。で、自分も気づいたら「だから早く制作して」みたいに言われちゃって。
――「何を休んでるんだ」って。
SKRYU:……っていう。なので、1カ月ちょいで作った11曲なんです。
――血と汗と涙が滲むような……。
SKRYU:これは後付けなんですけど、タイトルの『ザ・ライト』の通り、光の速さで作ったアルバムです。 本当に、とんでもないスケジュールをようこなせたなって自分でも思います。
――そうだったんですね。ただ、これまでの作品に比べるともっと地に足が着いた作品に仕上がっているように感じました。
SKRYU:そうですね。もっと華やかに、ポップスに振り切ったことをやってもいいかと思ったけど、やっぱり今までの自分のよさの延長にあるアルバムだな、という思いもすごくあって。いい意味で、(メジャーになっても)変わらないよさを提示できているなとは思います。
――プロデューサーにDJ PMXさんやtofubeatsさんが参加しているところも、ちょっと面白いなと思って。「あえてここで!」みたいな意外性がありました。
SKRYU:DJ PMXさんは、前に「Grand Prix」という楽曲の提供と「Light It Up」という作品に呼んでいただいたんです。AK-69さんと俺っていう謎の組み合わせで、とんでもないドリームマッチみたいな。で、tofubeatsさんも前のアルバムで一回一緒に作ってるので。だから実は新しくオファーしたプロデューサーさんはいらっしゃらない。どちらかと言うと、お得意中のお得意さんを集めた、みたいな。
――Shin Sakiuraさんにmaeshima soshiさん、Noconocoさんもお馴染みのプロデューサーさんで。
SKRYU:逆に、メジャーファーストアルバムでこういう並びってなんか面白いなっていう。チャレンジではあると思うんですけど、メジャーにはいったけど、変わらないSKRYUを好きでいてくれるお客さんがすごいたくさんいて。それってありがたいんですよ。メジャーで華やかに変わったSKRYUを提示することもできたと思うんですけど、そうではなくて1カ月で本気の自分をバッと詰め込んだ作品を出す、ということを選んでいるのは……うん。そういう意味では、地に足が着いているのかもしれないですね。
メリハリとTPO。 下ネタが続いてはダメなんですよね

――SKRYUさんのよさでもあるリリックの際どさとか言動の面白さって、一歩間違えてしまうと、ちょっと違う方向に受け取られる可能性もあるじゃないですか。
SKRYU:危なっかしい感じが。
――キワキワ、みたいな。ちょっとやりすぎるとヘンな下ネタになったり、内輪受けで終わったり。その辺のバランス感覚って、ご自身のなかでどう気をつけていますか?
SKRYU:無意識なんだけど、むちゃくちゃ(バランスを)保とうとしていますね。難しいんですけど、メリハリとTPOですかね。 下ネタを言う時って、下ネタが続いてはダメなんですよね。最後の一手でむちゃくちゃ真面目なことを言った時に、ちょっと(下ネタを)挟む、みたいな。「スキル、フロー、ライムに必要なのは硬さ。おちんちんもだよね!」みたいな。
――最後のオチとして。
SKRYU:僕は結構ライブで服を脱ぐんですけど、その理由も、しんみりして終わらせたくないからなんです。「みんな、いつもありがとう。みんなのおかげでここに来れて、こんな服も着られて」って言って、次の曲の時に全部バーンって脱ぐ、みたいな。本当にかっこつけたい部分で終わらせたくないっていうか、照れ隠しなんですよね。自分ができるおふざけとかコミカルな路線って、やっぱりオリジナリティを出すうえですごく大事というか、結構、自分の人間性にすごく合っているんですよね。別にかっこつけて生きてきた人間じゃないし、クールでもないので。みんなのことを笑わせられる自分というのが、僕はいちばんかっこいいと思っているんです。
――そのスタイルはSKRYUさんのなかで一貫して変わっていないですよね。学生時代からそういう気質でした?
SKRYU:そうですね。たとえば、僕としては野球部の一軍の子に「面白いことやれ」って言われた時に「いや、いいよ」っていうのはダサいんですよ。そこに対して「どうやって勝つか」って挑みたい。「俺より面白いことできんやろ」って、“パワーじゃない勝ち方”を選ぶというか。芸人みたいだけど、自分が人を笑わせているっていうところにこだわりたいし。それこそ、幕張メッセのワンマンライブで(上裸で)宙に釣られた時、僕がいちばん泣きそうになったのは、みんなが笑っていたところ。やっぱりそこで泣きそうになっちゃったんですよね。
――実際、今年の2月にメジャーデビューEP『絶』をリリースしてからこれまでに至るまで、自分が「メジャーのフィールドに立ってるな」と実感することはありますか?
SKRYU:新しいお客さんが増えたかっていうと、極端にはそんなに変わっていないのかなって思うんですけど、やっぱり街で自分の曲が鳴っていたり、有線で掛かっていたりするときですかね。それで、地元の友達が「マジでお前の曲が流れとったけど」って連絡くれる、みたいな。俺を探している人じゃない人の耳にまで届いている、というのはすごく嬉しいなと思いました。
――このアルバムの制作にあたって、「初めてSKRYUを聴きます」というリスナーのことを意識することはありました?
SKRYU:基本的にはSKRYU度100%のメインディッシュしか入れたくなくて、どの曲をリードにするか頭を悩ませるくらいだったんです。おかずに喩えるとしても、お新香なのか栗きんとんなのかわかんないけど、みたいな。なんか変なアルバムですね、今回は(笑)。自分の脳みそをそのまま切り取った感じだし、いい悪いを選別せずにそのまま入れちゃった、みたいな。
――”変な感じ”っていうか、本当にそのままのSKRYUが出た!っていう雰囲気はありますよね。1曲目の「ハヤスギテミエナイ (feat. サーヤ)」の最後の展開とか、本当に意味がわからない。
SKRYU:この曲はサーヤさんがほんまに忙しいなか、書いてくれて。最初に(プロデューサーの)Shin Sakiuraさんに言うてもうたんですよ。「サーヤさんとやる曲ください!」って。で、宇宙語で曲を作っていたときに「ハヤスギテミエナイ」って言うフレーズが出てきて、「これいいかも」って。サーヤさんは礼賛の活動もバンバンやってラランドも単独ツアー中で、毎日YouTubeも撮ってるし、テレビ点けたらそこにサーヤさん映ってるし、みたいな状況にも関わらず、曲を送った次の日くらいに「書けたかもしれない」って送ってくれたんです。その後、2週間くらいでレコーディングした時も、まあ(レコーディングが)早すぎて。いろんな“早い”ネタがあるなかで、いちばん早かったのはサーヤさんでしたね。最後、掛け合いができそうなセクションがあったので、そこは「もう早口言葉だろう」ってことになって。
――「何をラップしてるんだ?」って何度も聴いてしまいました。
SKRYU:正確には早口言葉をもじった歌詞なんですけど、意味わかんないですよね(笑)。サーヤさんも「もっとこだわったほうがいい」みたいに本気で付き合ってくれて。サーヤさんはパンチラインも多いしリズム感もすごいんですけど、ライムにつける表情がうまいと言うか。すごく喰らいましたね。聴いてると、サーヤさんの顔も浮かんでくるじゃないですか。



















