スピッツ、細野晴臣、Ado、福山雅治、TAKARA、超特急……注目新譜6作をレビュー

New Releases In Focus

 毎週発表される新譜の中から注目作品をレビューしていく連載「New Releases In Focus」。今回は、スピッツ「見知らぬ糸」、細野晴臣「Sincerely」、Ado「モンストロ」、福山雅治「邂逅」、TAKARA「Time is money」、超特急「Secret Invitation」の6作品をピックアップした。(編集部)

スピッツ「見知らぬ糸」

 2組の夫婦の複雑な関係を描くドラマ『Tシャツが乾くまで』(TBS系)主題歌となる新曲。草野マサムネのコメントを引用すると「新しいタイプのストーリーだったのであえて『リンクし過ぎない』ように」(※1)作ったのだとか。シンプルでエバーグリーンな曲、というのはスピッツ全曲に言えることだが、ただ明るい/暗い/楽しい/悲しいと分類できない感情のグラデーションを丁寧に追いかけるメロディはさすが。〈場違いでも運命は既に始まってるんだって〉〈間違う糸はほどけて また焦がれて〉など、不穏な何か匂わせる歌詞も秀逸だ。バンド側が酔いしれ盛り上がるようなアレンジはなし。淡々としたトーンだからこそ沁みるものがある。大人の良曲。(石井)

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細野晴臣「Sincerely」

 20世紀半ばのアメリカのドゥーワップグループ・The Moonglowsの1950年代のヒット曲「Sincerely」のカバー。原曲は「心から好きなんだ」と女性に訴えかけるラブソングだが、細野が自ら手掛けた訳詞には〈ぼくらの全てを 祝いましょう〉という大きくて深く、切実なメッセージが込められている。アコースティックギターと歌を中心としたアレンジには原曲へのリスペクトはもちろん、カントリーやボサノヴァの雰囲気も感じられ、穏やかで優しい歌声も相まって、聴く者の心に安寧を与えてくれるような仕上がりに。母性や慈悲といった、もともと人間に備わっている感情をテーマに、孤独や混乱の先にあるはずの調和を描いたとされるニューアルバム『Yours Sincerely』(9月11日リリース)の根幹を為す一曲と言えるだろう。(森)

Sincerely

Ado「モンストロ」

  実写映画『ブルーロック』主題歌となる新曲。過去のラテンナンバー「踊」「唱」と同様、GigaとTeddyLoidのタッグで作られた激アツのラテンEDMである。まずは歌い出しにありったけの歌唱技術を詰め込んでいくAdoが降臨。ほんの15秒で相当な体力を消費した気分になるため、全力の熱唱だけでゴリ押ししないのは大正解。Aメロからはダンスチューンに切り替え、ラップとポエトリーとメロディの使い分け、ビートや押韻や表情の違いで聴き手をぐいぐい引っ張っていく。どちらにせよAdoの歌声と集中力がなければ成立しない曲なので、我が身に置き換えて共感する聴き方は無理である。圧倒的なパワーにぶん殴られる、という感覚が一番近い。(石井)

【Ado】モンストロ

福山雅治「邂逅」

  かけがえのない人に出会えたという喜びは、「命に限りがある以上いつかは別れなくてはいけない」という悲しみと表裏一体。強い愛もまた、豊かな慈しみを生み出すと同時に、互いを傷つけ合う危うさをはらんでいる。そのことから目を逸らすことなく福山雅治は、「邂逅」(映画『あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。』主題歌)という楽曲において、出逢うことの素晴らしさ、愛しさを正面から肯定してみせる。大らかな美しさをたたえたメロディ、ロマンティシズムと壮大なスケールをあわせ持ったアレンジ、そして、デビュー36年の経験に裏打ちされた、圧倒的な説得力、奥深い包容力もこの曲の魅力。この曲を含む5年9カ月ぶりのニューアルバム『超新星』も楽しみだ。(森)

福山雅治 - 邂逅(映画『あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。』主題歌)

TAKARA「Time is money」

  和的なエキゾチズムと称したくなるサウンド、日本語をグルーヴさせるフロウと自らの生き様や価値観をダイレクトに刻んだリリック、そして、ラップ/ボーカルの圧倒的なスキルと個性。オーディション番組『No No Girls』(Hulu)出身のASHAとKOKONAによる2人組ユニット・TAKARAのデビューシングル「Time is money」には、2人のクリエイティビティが濃密に注ぎ込まれている。「時は金なり」は本来「時間はお金と同じように貴重なものであるから、無駄にせず有意義に使いなさい」という意味合いが強いが、この曲で彼女たちは、猶予を得たことへの感謝、その時間をフルに使って自らを磨き上げたことへの自負を高らかに歌い上げている。この自己肯定感こそがTAKARAの武器であり、このユニットを駆動させる原動力になっているのはまちがいない。(森)

TAKARA / Time is money -Music Video-

超特急「Secret Invitation」

 11月に控えた東京ドーム2DAYS公演もソールドアウトとなった超特急。こちらは先週Kアリーナでツアーファイナルが行われた『BULLET TRAIN ARENA TOUR 2026「ESCORT」』のテーマソングとなった最新の配信曲だ。イントロはさながらハリウッド映画主題歌のような壮大さだが、今の彼らはそのスケールも余裕で受け止める。コンサートを特別な一夜に演出するための曲なので〈きっと月まで行ける〉〈この命を 君に捧げてしまおう〉などと歌詞が大仰になっていくのは致し方ないところがあるが、あくまで秘密の招待状、君にだけ届く歌、という作りになっているのはすごい。大声で叫ばない、耳元で囁かれるような後半の〈Come on〉。これはもう、ファンにはたまらないはずである。(石井)

Secret Invitation

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