北村匠海、DISH//の勢いを牽引するユースカルチャーシーンでの存在感 2022年の活動に見るバンドとしての好調ぶりも
今から振り返れば、デビュー当初、各メンバーは楽器を弾けないところから活動をスタートしており、初期曲の音源はメンバー自身が演奏してレコーディングしたものではなかった。そこから少しずつライブを重ね、次第に個々の演奏技術を高めていき、また、北村の歌唱も、ライブやレコーディングの経験を積んでいくたびに大きく進化し続けてきた。この10年間は、DISH//が“ロックバンド”になっていく過程そのものであるとも言える。そして、その歩みが一つの美しい結実を見せたのが、結成してから10年間でリリースしてきた過去曲を新たにレコーディングしたリテイクプロジェクト「再青」であった。新たに生まれ変わった楽曲たちには、ライブを通した成長が如実に表れている。また、ライブにおける演奏を彷彿とさせるようなアレンジが施されている楽曲もある。このプロジェクトは決して懐古的なものではなく、“今”のDISH//を届けたいというメンバーの熱い気概が全ての曲から伝わってくる。
歌唱、演奏のアップデートを重ねてきただけではなく、彼らは次第に楽曲制作にも携わるようになっていく。この夏には、北村が作詞、泉大智が作曲を担当した「しわくちゃな雲を抱いて」がドラマ『ユニコーンに乗って』(TBS系)の主題歌に起用された。メンバー自身が制作を手掛けた楽曲がドラマ主題歌に起用されたのは同曲が初めて。
また、この秋には、山崎まさよしとの共作曲である新曲「五明後日」が、ドラマ『ザ・トラベルナース』(テレビ朝日系)の主題歌となった。このドラマで描かれるのは、コロナ禍以降大きな注目を集めるようになった看護の世界であり、混沌とした医療現場で一人ひとりの患者の命と向き合いながら奮闘する“新時代のナイチンゲール・コンビ“の物語が展開していく。「五明後日」の中に〈手紙〉〈最後のラブレター〉というフレーズがあるように、北村は”最愛の人への遺書“をテーマとして同曲の作詞を進めていった。結果として、2人のナースの奮闘記を患者目線から補完することで物語に新たな奥行きを加えるような主題歌が完成した。特にサビの後半における〈今日も 明日も 明後日も 明明後日も ありがとう、ありがとう と思う。〉という一節は、シンプルな言葉遣いでありながら大切な人への深い想いを丁寧に表していて、ドラマの最後に美しくエモーショナルなメロディに乗って響くことで強く胸を打たれる。先述した「しわくちゃな雲を抱いて」を含め、自作曲が連続でドラマ主題歌に起用された流れは、彼らの楽曲制作能力が凄まじい勢いで伸びていることを思わせる。
ライブ活動も好調で、各音楽フェスへの出演においては、度々ステージを満員にさせている。また、8月27日には、単独野外ライブ『DISH// SUMMER AMUSEMENT ’22 -PLANET-』を開催、富士急ハイランドコニファーフォレストに約1万人を動員した。筆者は同公演を現地で観て、ステージの広さに負けじと、渾身の歌と演奏を届けるメンバーの姿に強く心を動かされた。DISH//がコニファーフォレストで野外ライブを行うのは今回が3度目で、彼らは他の大規模会場でも次々とワンマンライブを成功させている。4人の中で、ライブバンドとしての自信は日々深まっているはずで、時に余裕すら感じさせる堂々たるパフォーマンスには痺れた。
8月のコニファーフォレスト公演を成功させた彼らは、初のアリーナ公演として、12月24日の大阪城ホール公演、12月25日の国立代々木競技場 第一体育館公演という自身最大規模の大舞台が控えている。また、年末には『COUNTDOWN JAPAN 22/23』への出演も発表された。4人は、さらに進化したパフォーマンスをもって、結成10周年イヤーを鮮やかに締め括ってくれるはず。そして、その先に続いていくDISH//の新章は、きっとこれまでの10年よりもさらにスケールの大きなものになっていくと思う。
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