鳥山雄司と神保彰、PYRAMIDが担う音楽の力 クラウドファンディングを経て完成した『PYRAMID 5』を語る

PYRAMID鳥山雄司と神保彰、『PYRAMID 5』を語る

「アキラ・ジンボのためならなんでもやります」みたいな展開に(笑)

ーーなるほど。それが今、新鮮に聞こえるんですね。では、コラボ曲の歌モノについて。まず「ODORO!(feat.MIHO FUKUHARA)」。個人的には、カリンバのランダムアルペジオのような音が、70年代後半〜80年代初頭のオマージュに聞こえてアガリました。

鳥山:あ、そうね(笑)。これは、当時のR&Bのニューウェイブっていうのかな、いわゆるジャム&ルイスと時を同じくして出てきたAtlantic StarrとかS.O.S.バンドとか、その辺の匂いを再現したかったんです。リズムアプローチはシックですよ。

神保:バーナード・エドワーズとトニー・トンプソン。

鳥山:トニー・トンプソンのドラムもデッドでしょ? ああいう勢いがほしいなと思ったんです。

神保:ちょっと変わったことをやりたいなという気持ちはあったんですけど、ダンサブルな曲なのでなるべくくそこは抑えつつ。

鳥山:その代わりド頭がヘンなんです(笑)。

神保:曲中がダメなら、ド頭でと。変わったことをやってもあそこなら大勢に影響はないだろうと(笑)。

ーーボーカルの福原みほさんの魅力については?

神保:僕らはイベントで随分ご一緒させていただいていますが、ライブでも圧倒的な歌唱力。本当に素晴らしいですよね。

鳥山:実はこれ、みほちゃんありきで書いた曲なんです。最初はEarth, Wind & Fireの「Brazilian Rhyme」みたいなリフっぽいメロディを考えてたんですど、彼女の歌声を聴いて、徐々に前述の新しいスタイルの歌モノっぽく変わっていきました。作詞家のEMI MARIAちゃんに「単純に踊れ〜って曲にしたい」と伝えたら、まんま「Dance」ときたのも面白かった。海外で新鮮に映るかなと思ってタイトルは「ODORO!」にしました。

ODORO!(feat.Miho Fukuhara)

ーーハービー・ハンコックのカバー「Paradise(feat. Kan Sano)」も、新時代解釈の魅力がいっぱいです。

神保:ハービー・ハンコックのアルバム『Lite Me Up』は、当時ものすごくヘビロテしていました。ロッド・テンパートン作曲のキャッチーな曲もいっぱいあるんですけど、なぜか僕は「Paradise」が好きで、そればかり聴いていましたね。デヴィッド・フォスターとジェイ・グレイドンらしいあの転調の仕方にグッとくるんです。

鳥山:偶然提案した曲なんですけど、神保くんの熱い思いがわかって嬉しかったです。Kanくんとはずっとニアミスしてて、「何か一緒にやりたいね」と言っていたのがやっと実現しました。ちょっとマイケル・フランクスを彷彿とさせる歌声なんですよね。

ーーそうですね! ズルい声です(笑)。

鳥山:実は市民会議でも、「Paradise」をやろうと思ってるという話はしてたんです。

神保:鳥山くんも僕も『Lite Me Up』というアルバムタイトルが思い出せなくて、ファンの方にチャットで教えてもらいました(笑)。

鳥山:そのときに、「Paradise」をハネないリズムでやります、みたいなことを言っちゃったので、そういうアレンジにせざるをえなかったと(笑)。フレーズの端々に今時のジャズの匂いを感じさせるKanくんのソロも、いいアクセントになっています。

ーー今回一番攻めているなと思ったのが、キュートな「Back To You(feat.Millie Snow, Nenashi)」でした。

鳥山:一番キャッチーなものになるだろうなとは思っていました。曲は先に書いていて、国内外問わずシンガーを探していたら、あるとき知り合いがSNSでタイのシンガー、ミリー・スノウを絶賛してたんですね。早速チェックしたら本当によかったので、即、正面からラブコールを送りました。そしたら、彼女のプロデューサーがなんとCASIOPEAの大ファンで、「アキラ・ジンボのためならなんでもやります」みたいな展開に(笑)。

神保:アハハ! でも、本当、透明感があっていいですよね。

ーーNenashiさんの参加はどういう経緯で?

鳥山:12月中旬に、今作には未収録の、mabanuaとさらさちゃんをフィーチャーしたOhio Players「Sweet Sticky Things」のカバーを出すんですね。そのレコーディングのときにmabanuaに、「誰かラップできる人いない?」と聞いて、名前が挙がったのがNenashiくん。あまりゴリゴリな感じにしたくなかったので、参考としてチャカ・カーンの「I Feel for You」を聴いてもらいました。彼、知らなかったんです。

ーーそうですか! 世代間ギャップですね。

鳥山:「スティーヴィー・ワンダーも入ってる」と驚いているんで、「だってこれ、プリンスの曲だぜ」と(笑)。そういう意味では、たしかにさっき言われたように、若者にとってのキュレーター感はありますね。

ーーサビの「チーチー」というハイハットもキャッチーです。

鳥山:あれも「Give Me The Night」。あの時代、歌にハットで応えるみたいなのがありましたよね。それをお願いしました。

神保:もちろん「Give Me The Night」もヘビロテしてましたし、Tower Of Powerとか、それこそThe JB’sなどのファンキーなバンドでは、拍頭にオープンハイハットを入れるというのはある種定番なんですね。散々聴いてきてもう体に入っているので、気持ちよくやらせてもらいました。

鳥山:ミリーちゃんチームが送ってくれた映像を元に作ったMVも、ぜひご覧いただきたいです。

Back To You

ーー世代も国境も越えたコラボが誕生しましたね。

鳥山:世代、そう、孫かっていうくらい(笑)。

神保:まぁ、孫まではいかないけど、子供よりははるかに下ですね。

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