KICK THE CAN CREW、新旧ごちゃまぜセットリストの裏に貫かれたこだわり レアな“5人”で再会も果たした武道館公演

KICK THE CAN CREW、武道館公演レポ

 5年ぶりのニューアルバム『THE CAN』をリリースしたKICK THE CAN CREWによるワンマンでの東名阪ツアー『KICK THE CAN CREW LIVE 2022「THE CAN」』の東京編が、日本武道館で前日の『908 FESTIVAL 2022』と連なる形で9月24日に開催された。

 この日は台風15号の影響で東京では夕方に雨のピークを迎えていたため、もしかしたら交通機関のトラブルで開演に間に合わなかった方や会場にたどり着くこともできなかった方もいたかもしれない(自分は幸い会場にはたどり着くことができたが、傘をさしていても足元はびしょ濡れだった)。そんなファンたちを気遣ってか、開演時間がほんの少し巻いてライブがスタートした。

 ドデカいドラムが武道館に響き渡る。1曲目は最新作『THE CAN』から「準備」だ。KICK THE CAN CREWのこれまでの歩みを言葉とスキルに吹き込んだようなパーティのオープニングに相応しい1曲がフロアの一人ひとりに着火する。そして間髪入れず「YEAH! アガってこうぜ」へ。ここでもLITTLE、KREVA、MCUのマイクがスキルフルに絡み合い、最新のKICK THE CAN CREWが最高のKICK THE CAN CREWだと言わんばかり。と思いきや、立て続けに披露されたのは彼らのメジャー1stシングル曲「スーパーオリジナル」。リリースは2001年、今から20年以上も前の曲が目の前で色褪せることなく鳴っている事実に胸が熱くなりつつ、同時にコロナ前であればフックを一緒に叫べていたんだよな......と僅かに寂しい気持ちもよぎる。

 3曲立て続けにプレイしたあと、3人が口にしたのは、この荒天の中でここまで足を運んだファンたちへの感謝だった。KREVAは「出てきたときから手で歌っているような応援をありがとうございます」と、声が出せない状況でもファンの気持ちが届いていることを伝え、「たとえやってくれないんだとしても、ここにいる人たちがいてくれるんだったら、ずっと観てくれているんだったら、誰に見放されても我々は最後までこの勢いを貫き通すことを誓いたいと思います!」と宣誓。「そりゃそーだ」などとセルフツッコミを入れていたが、その全力の姿勢ほど、ここに集まったファンに対する誠実さを示すものはない。KREVAは、いやKICK THE CAN CREWは、何をどのように伝えることに意味があるのかを真に理解しているように見えた。

 宣誓通り、勢いよく「We don't Get Down」に突入。〈行こうぜ さぁ ステージに土下座してでも挑んでたいんだ〉というフックでのLITTLEのラインは、彼らが持つステージに立つことへのこだわりだけでなく、長いキャリアや休止期間ゆえに過去のものとして扱われることへの徹底抗戦を象徴しているだろう。何より多種多様なフロウが織り交ぜられたラップは、彼らが埃をかぶった過去のものでないことを証明している。その後も「sayonara sayonara」「千%」と新旧ごちゃまぜのセットリストで武道館をがっちりロックし、「20数年前に誰に言われるでもなく集まった5人がいました。そのとき作った曲は世に出ることはなかったけど」というKREVAのMCからRYO the SKYWALKERとNG HEADを呼び込んで「今こそ寄ってこい feat. RYO the SKYWALKER & NG HEAD」へ。様々な困難を経た5人の再会でステージ上はお祭り騒ぎだ。ちなみにNG HEADは天候の影響で到着が遅れリハーサルなしでステージに立ったそう。

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