KICK THE CAN CREW、“楽しさ”を追求したエンターテインメント 16年ぶり日本武道館ワンマン

KICK THE CAN CREW、“楽しさ”を追求したエンターテインメント 16年ぶり日本武道館ワンマン

 2017年、グループの20周年を機に本格的な再始動を果たしたKICK THE CAN CREW。彼らの単独公演『現地集合~武道館ワンマンライブ~』が9月1日に開催された。3人がKICK THE CAN CREWとして武道館に立つのは再始動を記念した2017年9月の『復活祭』以来約1年ぶり。その『復活祭』がRHYMESTER、いとうせいこう、藤井隆、倖田來未という豪華ゲストに“復活を祝ってもらう”という文字通りの「祭り」だったことを考えると、武道館でのワンマン公演は2002年の『Live at 武道CAN』以来実に16年ぶりとなる。活動再開以降精力的に出演していた全国各地でのフェスでの経験や2017年のツアーなども経た、今のKICK THE CAN CREWならではの魅力が伝わってくるようなステージだった。

 開演前には熊井吾郎のDJがスタート。その後『現地集合』というタイトルそのまま、スクリーンに地図上の目的地を示す「ピン」が表示され、様々なファンがフラッとこの場所に集合したかのような雰囲気が生まれている。そこにメンバーが現われて1曲目「Keep It Up」がはじまると、大歓声とレーザーが武道館を覆い、〈Old School/New School/Classic/Pops/Overground/Underground/Major/Minor/奮ってこうぜ/Keep It Up〉と相反する要素を全部抱えて引き受けていくようなリリックを持つ楽曲でライブがスタート。続く「全員集合」でも〈常人/凡人/一般人/超人/名人/鉄人/達人/(中略)全員/全員集合〉と、ありとあらゆる人々に集合を呼びかけ、サビでは〈今日やるならこっちだろ!〉とKREVAが観客を促して会場のコールが「全員集合」から「現地集合」に変わっていく。メジャーもマイナーもひっくるめて90年代末~00年代初頭から日本語ヒップホップの可能性を広げてきた立役者の一組ならではの懐の深さを感じさせるオープニングだ。実際、この日の観客はデビュー当時からのファンと思しき世代の人々から、活動休止中~再始動後に3人の魅力に触れたと思しきより若い世代のファンまで実に様々。その全員が序盤から一気にKICK THE CAN CREWのエンターテインメントに引き込まれていく。

 KREVAが「みんなよく『現地集合』ってだけでここまで来れたね?」と笑いを誘うと、続く「なんでもないDays」では観客が〈うん/ない〉を大合唱。その後半に会場を覆った手拍子に乗ってそのまま「GOOD TIME!」を披露すると、キャラ立ち3MCのマイクリレーがますます軽やかに絡み合う。そして「16年、何を経たの? 俺たちがどういう道を経てここに来たのか、曲で示してあげればいいじゃないですか」と「千%」のリリック〈経て/からの/ここ〉に引っ掛けてはじまったのは、彼らのキャリアを振り返るような展開だ。3人はメジャーデビュー曲「スーパーオリジナル」「タカオニ2000」、その元曲に当たるインディーズでのデビューシングル『タカオニ/カンケリ』(97年)の収録曲「タカオニ」と同作収録の「カンケリ」、そして「カンケリ」のセルフリメイク「カンケリ 01」など、最初期の楽曲を次々に披露。その後「千%」でサンプリング風の声ネタを提供したシンガーのYURIが登場し、彼女の歌をきっかけにして再始動の狼煙を上げた2017年曲「千%」がスタート。KICK THE CAN CREWの過去と現在とが繋がっていく。この「千%」は「カンケリ/タカオニ」の頃のようにただ3人で集まって遊ぶような雰囲気を思い出しながら制作した楽曲で、2017年を「20周年」としたのも「タカオニ/カンケリ」からの20周年だと考えると、この構成は再始動後の活動にとって非常に意味のあるものだろう。再始動以降の楽曲群が、近年のフリースタイルブームやトラップを筆頭にしたトレンドにおもねることなく、けれども表現力の深さや円熟味を感じる「今の音」になっていることも印象的だった。

 自らのキャリアの経過を表現するようだった序盤に対して、中盤以降は季節の経過に焦点を変え、KICK THE CAN CREW史上最も複雑なマイクリレーを持つ「SummerSpot」や「イツナロウバ」といった夏曲や、山下達郎の「クリスマス・イブ」を使った「クリスマス・イブRap」を披露。その後は熊井五郎によるMPCプレイを経て、「LIFELINE」や「ユートピア」といった楽曲で今ならではの円熟した表現力を見せる。MCではそれぞれグループの過去と今とに思いを馳せるような雰囲気の中で観客に感謝を伝え、「声もやってることも変わってるかもしれないけど、結局は何も変わってない。『みんなと楽しみたい』んだと思います」と伝えたKREVAを筆頭に、3人がブレずに持ち続けているものと、年月を経た今ならではの気持ちが語られていく。とはいえ、その中でもMCUが「『復活祭』がちょうど一年前のように感じる」と言いはじめて「いや、実際そうだよ!」とツッコまれるなどユーモアも忘れない。その姿が何よりもKICK THE CAN CREWらしい。最後は「TORIIIIIICO! 」「神輿ロッカーズ」「地球ブルース~337~」「マルシェ」といった歴代のアッパーなアンセムや「sayonara sayonara 」「アンバランス」といった楽曲など、過去の人気曲を連発する怒涛の展開。ふたたび大歓声で迎えられたアンコールでは2017年の最新アルバム『KICK!』の楽曲「完全チェンジTHEワールド」と、岡村靖幸とタッグを組んだ今年リリースの新曲「住所」で会場をさらに盛り上げ、最後は「現地解散!」と告げてステージを終えた。

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