KICK THE CAN CREW、新旧ごちゃまぜセットリストの裏に貫かれたこだわり レアな“5人”で再会も果たした武道館公演
さらにこの日のための「GOOD TIME!」リミックス(おそらく一生リリースされないとのこと!)、「地球ブルース~337~」で武道館に陽気な雰囲気が充満。MCではグッズになっていた空気の缶詰の武道館バージョンを会場の全員で制作(ちなみにここで一旦観客を席に座らせて、しばらくその状態でライブしていく)。そのまま「カンヅメ」へとなだれ込み「Playground」「ユートピア」としっとりと聴かせていく。そして「LIFELINE」では、山井絵里奈、渡辺理恵、宮本祐宣の3名のバレエダンサーとコラボレーション。幽玄なトラックとKICK THE CAN CREWのラップ、しなやかなダンスが溶け合う。こういった新たな試みを、それも20年も前の曲で、高いクオリティで実現させてしまうところは憎いくらいだ。
余韻の中でのMCでKREVAが触れた音の鳴りについての件は、9月8日(クレバの日)に行ったインスタライブでも話していたことだった。つまり新旧の楽曲を合わせたセットリストでは、トラックの鳴りにどうしても違いが生まれてしまう。だからそれを滑らかにするためにKREVAはトラックの中身を磨き直したり、一部をリペアしていたというのだ。公演中にここまで時差のある楽曲がプレイされること自体が珍しく、そちらに気を取られていたが、たしかに過去のどの曲も古く感じなかった。ともすればまったく気にかけられないかもしれない点まで、音はこだわり抜かれていたのだ。完璧主義と言ってしまえば簡単なのだろうが、彼らは格好だけではない誠実さでこだわり抜いたからこそ自信を持ってパフォーマンスできているのかもしれないし、私たちは安心してそれを目にすることができるのだろう。「クレさん(KREVA)のビートを爆音で聴く機会ってなかなかなくて、改めて聴いてみたら、凄まじい」とバックDJを務めた熊井吾郎が話していたというエピソードには、思わず首を振って頷いてしまった。18年ぶりにセットリストに組み込まれたという「HANDS」で観客を立ち上がらせ、ライブもいよいよクライマックスへ。KREVAが言うように次の曲「Boots」のリリックと繋がりを感じながら、「アンバランス」「トライは無料」と改めて新旧の曲が渾然一体となったセットリストに驚かされる。前日のソロのステージとはまた違い、昔からの仲間とのラフな会話も挟んで「玄関」そして「住所 feat. 岡村靖幸(Extended Ver.)」でさらに心地よい高揚へ武道館を導いていく。
ライブは「マルシェ」で大団円に。その後、一度ハケてアンコールかと思いきや、「このままアンコールに行きたいと思います!」とまさに缶を目標に喩えた現在進行形のKICK THE CAN CREWのテーマソングと呼びたい「THE CAN(KICK THE CAN)」をラストソングとしてプレイ。目標を追うこと、それを楽しむこと、それで楽しませること。その3つの弛みのないループがKICK THE CAN CREWのステージにはあった。その純粋さから生まれた曲たちは時を超え、そこにある情熱は誰かを震わせ、受け継がれ、また新たな美しいループを生むだろう。缶蹴りは終わらない。
※1:https://youtu.be/X4vxTGoM3zw
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