大森靖子『超自由字架』は予想できない表現の場であり、誰かにとっての深呼吸できる場に 全国ツアーファイナルを迎えて

大森靖子『超自由字架ツアー』ファイナルレポ

 弾き語りパートのラストでギターを肩に背負い、〈STOP THE MUSIC〉という、この時勢に対する大森らしい反語の叫びに始まる「シンガーソングライター」で、再びsugarbeansが加わる。いわゆる“人を救う”歌の欺瞞の皮膜を一枚一枚剥がしていくような歌が、耽溺することを拒否する。90年代のJ-POPのようなピアノ伴奏によって、より歌詞が際立つ「流星ヘブン」、花譜への提供曲のカバー「イマジナリーフレンド」に続いて、諦観の上でしぶとく生きるような内容とギャップのある丸いメロディを持つ「死神」。歌詞を飲み込みながら、同時に自分も吐き出している気分になってくる。なるほど、この会場の居心地の良さの要因はこれか、と終盤に改めて気付かされた。

 新旧織り交ぜて届けられた本編のクライマックスは時間軸的に今の大森の問題意識や生活者としての違和感を綴った「Rude」、そして「夕方ミラージュ」。ラストは山之口が大森の足元で眠るような動きで、一連の流れを見事に着地させたように思う。このアクションも即興だったのだろうか。3人が呼応しあって起きた必然だったのか。

 そのままステージに残り、アンコールは「絶対彼女」を披露。「可愛く生きてくれてありがとうございます!」と、ファン一人ひとりと目を合わせるようなアクションで、生を祝う。ファンにとって深呼吸できるこの場所はファン以外の、今日何かに絶望したり、失望した誰かにとっても息がしやすい場所になり得る。そう確信したチャレンジングなツアーファイナルだった。

■セットリスト
M1. ドグマ・マグマ
M2. ミッドナイト清純異性交遊
M3. tiffany tiffany
M4. TOBUTORI
M5. えちえちDELETE
M6. デートはやめよう
M7. 最後のTATTOO

【弾き語りパート】
M8. 音楽を捨てよ、そして音楽へ
M9. 私は悪くない
M10. 天国ランキング
M11. VOID
M12. あまい
M13. 給食当番制反対~即興~
M14. 5000年後~stolen worID
M15.シンガーソングライター
M16.流星ヘブン
M17.イマジナリーフレンド
M18.死神
M19.Rude
M20.夕方ミラージュ

enc.
絶対彼女

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