さとうもかが綴る、夏の思い出詰め込んだ物語 東京キネマ倶楽部が“魔法”で包まれたワンマンライブを観て

さとうもか、夏を締めくくったワンマンレポ

 ドラマ『魔法のリノベ』(フジテレビ系)のオープニング曲「魔法」が話題となっている岡山出身のアーティスト、さとうもか。9月4日に東京キネマ倶楽部にて、ワンマンライブ『Sugar Science Show 〜2022 Summer〜』を開催した。

 大正ロマンのオペラハウスを再現した昭和のグランドキャバレーをそのままライブハウスに転用した東京キネマ倶楽部。ワンマンライブでは毎回、ミュージカルや音楽劇のようなガーリーでシュールなショーを見せてくれる彼女の世界観を体感しようと、レトロでゴージャスな雰囲気の会場にはおしゃれに敏感な若い女性ファンを中心に様々な世代のオーディエンスが集まっていた。

 開演時間になると、ビッグバンドジャズのSEに続きブザーが鳴り響き、沼澤成毅(Key)、厚海義朗(Ba)、河合宏知(Dr)、シンリズム(Gt/Key)からなるバンド、シュガーサイエンス団が姿を見せた。オープニングを飾ったのは、平凡だった主婦がある夜を境にシンガーへと変化を遂げるスイングジャズナンバー「歌う女」。さとうもかは割烹着を羽織り、綿菓子のように大きなハタキを振りながら、3階吹き抜けのバルコニーに登場した。歌詞の世界観をなぞるように割烹着を脱ぎ捨てて階段を下り、ステージに立つと、イタズラな微笑みを湛えながら歌い踊る。観客に「夏がもうすぐ終わりそうだけど、最後にめっちゃ夏していきましょう!」と呼びかけ、夏の終わりとともに去っていった“あなた”を思い続けるシティポップナンバー「Loop」では、ナイス&スムースなビートに合わせてクラップが沸き起こった。

 最初のMCでは、今回のライブのテーマが「夏とジャズ」であることが明かされた。そして、「大人になったらいろんなことを忘れるけど、子供の頃の気持ちを忘れないでいよう」という想いを込めた「old young」ではトイピアノを弾き、「オレンジ」や「Woolly」では恋人同士の二人が通じ合えない葛藤や戸惑いが時にポップに、時にエモーショナルに語られた。そして、夜のドライブ中に助手席から海を眺めながら〈夏なんてつまらないから/あなたとラムネに溺れたい〉と歌う「ラムネにシガレット」は、ダイナミックに展開していくロックバラードなのだが、キャバレーが教会になったかのようなホーリーな響きがあった。さとうもかのガットギターと歌声から始まり、ドラムのブラシと弦弾きのウッドベース、さらに2声の男性コーラスが加わる「あの夜の忘れ物」では、愛してると言えなかった後悔が語られた。冒頭でテーマは“夏”とあったが、さとうもかの“夏”といえば、たった一人の大好きだった人と過ごした夏の思い出を詰め込んだラブソングとほぼ同じ意味なのだ。

 夏、海、車、ドライブ、映画、花火、夜中のコンビニなどのキーワードを繋いでいくと、彼女が描く夏のラブストーリーの全貌がおぼろげに見えてくる。「半年くらいかけて、40曲くらい作った中から、混乱しながらもなんとかたどり着いた」と語った新曲「魔法」も、夏のラブソング群の1曲だ。夏、助手席、ドライブというフレーズが盛り込まれた楽曲を作る過程で、「素直になる心が大切だなと思って。自分自身も本当の気持ちは言わなきゃいけないなと気づいて、素直な気持ちを言うようになったら、どんどんハッピーになっていったんですよ」と語った彼女。音源よりもパンチが増した歌声で〈素直になるだけで未来は変わっていくんだ〉というメッセージを届けると、ステージにはサプライズボックスが持ち込まれ、彼女が星のステッキを振って魔法をかけると、ドラマに登場するピンクのフクロウのキャラクター、まるふくろうが登場した。続く「アイスのマンボ」ではサングラスをかけ、大きなアイスクリーム型のバルーンが揺れる中で泳ぎながら歌唱して会場を盛り上げた。

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