さとうもかが綴る、夏の思い出詰め込んだ物語 東京キネマ倶楽部が“魔法”で包まれたワンマンライブを観て

さとうもか、夏を締めくくったワンマンレポ

 冒頭で目覚まし時計が鳴ったチャーミングなジャズナンバー「Mr.pretz」から第二幕へ。歌手になることを夢見て、ベッドの上で歌っていた女の子は、大学時代に大恋愛をし、「Lukewarm」に〈恋をすると人間になっちゃう〉ことを知った経験を綴った。突如、バルコニーに現れた謎の司会者 チャーさんによって、英語で「少し季節外れですが」と紹介されたジャズバラード「April in my memory」では、〈緑の車の隣の席〉に乗った思い出が切々と語られた。

 MCでは、「みんな夏は好きですか? 私は夏が一番好きで」と話し始め、この日の第1部では大学生時代に保育園でボランティアとして働いていた際に靴下にうんちをつけられた嫌な記憶を振り返り、第2部では数年前に岡山での飲み会で飲みすぎて立ちリバースした思い出を語った。観客の誰もが、「好きな夏のはずなのに、全然いい思い出ではないじゃないか?」と心の中でツッコミを入れただろうが、それも彼女らしさだろう。忘れたくないほど素敵な思い出は全部、楽曲の中にあるのだ。

 痛みや後悔が逡巡する中で愛の矛盾を歌ったロックナンバー「愛ゆえに」。夏休み中に隣の席の子のことを思い返す片想いソング「My friend」。そして、「5年間くらい大切に残してた曲。おばあちゃんになっても歌い続けていこうと決めている曲です」と語り、「ラムネにシガレット」に出てきた〈あの日のビー玉〉が〈大きな海に飲み込まれ〉、「Lukewarm」で人間になってしまった“私”と“あなた”の別れを描いたバラード「舟」へ。〈私を忘れないで〉と願う歌声の透徹さと言ったらなく、この日のハイライトは、個人的には「ラムネにシガレット」と「舟」の2曲だと感じた。いい映画を見た後のような余韻と感動を残してくれる、素晴らしい歌と演奏だった。

 さらに、この夏を舞台にしたラブストーリーの始まりの歌である「melt summer」とSNSで大人気の代表曲「melt bitter」を、ライブでは定番のくまのぬいぐるみ ボスを抱えたまま歌い、「みんなと出会えたことが心から嬉しいです」と涙を堪えながら感謝の気持ちを伝えた。「これからどんどん頑張っていこうと思っていて。もっとハッピーなことが起こると思うから、みんなも一緒に楽しくやりましょう」という気持ちを込めた「Merry go round」をもって、溶けるような甘酸っぱい熱風を感じる物語は締めくくられた。

 アンコールでは、「夏の締めくくりということで……永遠に夏しよう!」と呼びかけ、〈魔法みたいね〉というフレーズに合わせて星のステッキを振りながら、「melt summer」「melt bitter」と「魔法」を繋ぐ、物語の一遍である「Glints」を飛び跳ねながら歌唱。夏の恋の魔法がかかった“君”と“わたし”の物語はどうなっていくのか。「来年の目標として、アルバムを作りたい」と意気込んだ彼女が綴る“つづき”を楽しみに待ちたいと思う。

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