乃木坂46、“聖地・神宮”で掲げた新たな目標と決意 3~5期生が堂々たる実力を発揮した『真夏の全国ツアー2022』

乃木坂46、神宮で掲げた新たな決意

 その「君の名は希望」曲中で5人が語ったように、以降のブロックでは3〜5期生にスポットを当てた形でライブが進行。公演ごとにセンターや組み合わせが異なる編成で、変化していく乃木坂46の“今”を見事な形で伝えてくれた。最終日となるこの日は、「君が扇いでくれた」で遠藤さくら、「太陽に口説かれて」で筒井あやめ、「魚たちのLOVE SONG」で阪口珠美、「ごめんねスムージー」で山下がそれぞれセンターを担当。先輩たちが築き上げた伝統をただ継承するだけではなく、今の彼女たちの魅力や3〜5期生ならではの色を加えることで“新しい乃木坂46”を作り上げようとする前向きな姿勢が見て取れた。『10th YEAR BIRTHDAY LIVE』という節目を経たからこその、次を見据えた演出は単なるファンサービス以上の、深い意味を見出すことができたはずだ。

 その後の「羽根の記憶」「Sing Out!」はアコースティックアレンジが施されたことで、メンバーの歌唱力にスポットが当たることとなる。過去にも生田絵梨花のピアノ伴奏で美しいハーモニーを響かせてきた乃木坂46だが、その伝統はまた新たな形で引き継がれているようだ。ここでは久保史緒里を中心に、3〜5期生たちがその実力を見事に発揮。近年は『THE FIRST TAKE』や『MTV Unplugged』などへの積極的な出演や、4〜5期生の『乃木坂スター誕生!』(日テレ系)などで歌を披露する機会が増えているが、そうした経験は確実にライブに活きていることが伝わる、良質なパフォーマンスだった。

 卒業を控えた和田まあやがセンターを務める「あの日 僕は咄嗟に嘘をついた」「Under's Love」を経て、昨年のツアーからの成長が伝わるパフォーマンスを見せた遠藤センターの「ごめんねFingers crossed」、披露を重ねるごとに存在感を強めている5期生・中西アルノがセンターに立つ「Actually…」など現在進行形のグループの姿を見せつつ、「深読み」では齋藤飛鳥がその圧倒的なオーラで1期生としての貫禄をアピール。「太陽ノック」「ジコチューで行こう!」など夏の定番曲を交えつつ、ライブは最高潮に達する。最後の1曲に入る前に、今回のツアーで座長的ポジションを担ってきた賀喜が現在の心境を伝えていく。彼女は涙を交えながら「私はこういう発言の場をいただいても自信がないところを見せてしまうし、頼りないところもたくさんあります。でも、これからの乃木坂46を作っていくひとりになりたいと思いました」と口にし、最後に「改めて言わせてください。私は本当にこの愛の詰まった乃木坂46が大好きです!」と高らかに宣言。460発の盛大な花火が打ち上がる中、「君に叱られた」でライブ本編を締めくくった。

 アンコールでは「好きになってみた」「ダンケシェーン」と新旧楽曲が連発される中、メンバーはトロッコやフロートなどを使い3万5000人の観客に向けて感謝と笑顔を送り続ける。そして、副キャプテンの梅澤美波、齋藤がキャプテンの秋元真夏に労いの言葉を贈り、「乃木坂の詩」で約3時間にわたる3年ぶりの“聖地”でのライブを終えた。

 10年以上続く多くの女性アイドルグループにとって、勢いを維持したままの世代交代は大きな課題といえる。西野七瀬や白石麻衣といった一時代を築き上げた1期生が卒業し、今や1・2期生は5人のみ。この秋には樋口、和田が卒業することで、残す1期生は秋元と齋藤、2期生にいたっては鈴木絢音のみとなる。3人がどこまでグループに在籍し続けるかは神のみぞ知るところだが、そう遠くない将来に3人が卒業すると、いよいよ3〜5期生による“新生・乃木坂46”へと移行することになる。その前に、1・2期生が後輩に何を残し、何を託すのか。そして後輩メンバーは先輩たちの背中を見て何を学び、何を得るのか。この夏のツアーは、そうした近い将来へ向けた“次の一歩”であり、その試みは筆者の目には成功しているように映った。もちろん、真の結果は半年〜1年後に判明するのかもしれない。それでも、現時点では最良の形で変化・進化の道を進んでいると信じてやまない。

 また、このツアーを通じて後輩たちの口から新たな目標が掲げられたことも印象深かった。この日のMCで山下は神宮球場の隣にある新国立競技場について触れ、「私たちもいつか国立でライブをしたい。今日ここに来てくださったファンの皆さんを、国立に連れていきたいです」と語ったが、3期生以降のメンバーが中心になるタイミングにこうした発言が飛び出したことは、『NHK紅白歌合戦』や東京ドーム公演を目指していた時期の1・2期生とも重なる。その夢が実現する日が来るのかを含め、新たなフェーズへと突入した乃木坂46の“これから”を見守っていきたい。

■セットリスト
乃木坂46『真夏の全国ツアー2022』
2022年8月31日(水)明治神宮野球場
00. Overture
01. 好きというのはロックだぜ!
02. 夏のFree&Easy
03. おいでシャンプー
04. ガールズルール
05. 裸足でSummer
06. 絶望の一秒前
07. バンドエイド剥がすような別れ方
08. I see…
09. ジャンピングジョーカーフラッシュ
10. 思い出ファースト
11. 僕が手を叩く方へ
12. 海流の島よ
13. 会いたかったかもしれない
14. ロマンスのスタート
15. 君の名は希望
16. 君が扇いでくれた
17. 太陽に口説かれて
18. 魚たちのLOVE SONG
19. ごめんねスムージー
20. 羽根の記憶
21. Sing Out!
22. あの日 僕は咄嗟に嘘をついた
23. Under's Love
24. ごめんねFingers crossed
25. Actually…
26. 深読み
27. 太陽ノック
28. 空扉
29. ジコチューで行こう!
30. 君に叱られた
<アンコール>
31. 好きになってみた
32. ダンケシェーン
33. 乃木坂の詩

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