乃木坂46、“聖地・神宮”で掲げた新たな目標と決意 3~5期生が堂々たる実力を発揮した『真夏の全国ツアー2022』

乃木坂46、神宮で掲げた新たな決意

 7月19日からスタートした乃木坂46の全国ツアー『真夏の全国ツアー2022』が8月31日、明治神宮野球場で閉幕した。コロナ禍において2020年こそ休止された恒例の『真夏の全国ツアー』だったが、昨年は有観客での開催が再開され、続く今年は大阪、広島、福岡、北海道、宮城、東京の全国7都市で計13公演を実施。このうち、東京公演は3年ぶりとなる“聖地” 明治神宮野球場での3DAYS公演が行われ、東京だけで計10万5000人、全13公演でトータル21万人動員という、久しぶりの大規模ツアーとなった。

 コロナ禍での開催も相まって、ツアー中に全メンバーが揃うことは難しかった。体調不良のため当初から欠席が発表されていた早川聖来や、猛暑続きの中でのツアー敢行もあり体調を崩すメンバー、コロナに感染してしまったメンバー、さらには怪我で休演となったメンバーまでさまざまな要因があったが、“withコロナ”の生活が始まり3年目とはいえ、改めてコロナ禍におけるツアー開催の大変さを実感させられたのではないだろうか。

 しかし、ステージに立ち続けたメンバーたちは欠席したメンバーの分まで全力を果たし、デビュー10周年を経た節目らしい「変化」の瞬間を我々に提示してくれた。本稿ではツアーファイナルとなった8月31日の神宮公演3日目について記す。

 29日の初日は小雨、30日は本格的な雨と、この時期らしい天気に見舞われた乃木坂46恒例の神宮公演だったが、最終日は見事に晴れ。風の強さこそあったが、逆にそれが過ごしやすさにつながったとも言える。筆者は30、31日の極端な天候の2公演を会場で観覧したが、この落差も例年の“乃木坂の神宮”らしく、かつ3年ぶりということも相まって心底楽しむことができた。

 樋口日奈の影アナを経て、ツアー最終日のために用意されたスペシャル映像がスクリーンに映し出される。3年ぶりに実現した神宮公演への喜びを噛み締めつつ、オープニングSE「Overture」へとなだれ込むと、声こそ出せないものの観客のボルテージは急加速。屋外ながらも、3万5000人のオーディエンスが放つ熱量の高さはここでしっかり感じ取ることができた。

 竜宮城を彷彿とさせるステージセットの高い位置から登場した賀喜遥香が「神宮、楽しむ準備できてんのかー? ツアーラスト、出し切れー!」と叫ぶと、ライブはこの日リリースされたばかりの最新シングル曲「好きというのはロックだぜ!」から勢いよくスタート。客席では早くもタオルを頭上に掲げて回転させ、ステージとの一体感を高めていく。曲中、30メートルまで打ち上がるウォーターキャノン演出も飛び出し、早くもびしょ濡れになるメンバーや観客たち。その場にいる者全員が“聖地”でのお祭りを心の底から満喫しているように見えた。

 「好きというのはロックだぜ!」のエンディングでは田村真佑が早川、金川紗耶が掛橋沙耶香、五百城茉央が冨里奈央と、この日欠席したメンバーの“推しメンタオル”を手にし、あくまでメンバー全員でステージに立っていることをアピール。感極まったファンから思わず声が漏れる一幕もあった。以降、「夏のFree&Easy」や「ガールズルール」など、定番の夏曲を連発。卒業したオリジナルメンバーに代わり、センターを与田祐希や山下美月などが務め、現在進行形の乃木坂46を提示していく。この流れは今年5月に日産スタジアムで行われた『10th YEAR BIRTHDAY LIVE』と同じだが、同公演やこの夏のツアーを経験したことでメンバー各々が以前よりも自信を持ってそれぞれの楽曲と向き合っている様子が伝わり、グループとしても日々変化/進化を遂げていると受け取ることができた。

 その事実をより強く感じ取ることができたのが、期別ごとに楽曲披露したブロックや3〜5期生を中心に展開される中盤ブロックだろう。5期生からスタートした期別ブロックでは、井上和センターの「絶望の一秒前」、菅原咲月センターによる「バンドエイド剥がすような別れ方」が次々にパフォーマンスされたが、もはやそこには今春のお見立て会や日産スタジアム公演で垣間見えた辿々しさはまったく感じられず、迷いを抱えながらも前進し続ける頼もしさに満ち溢れていた。5期生にとって初めての“聖地”神宮球場でのライブ経験は、この先さらに彼女たちの自信につながっていくのではないか。パフォーマンスを見終えたあとに、そう思わずにはいられなかった。

 続く4期生は、もはや現在の乃木坂46にとってエンジンのような存在にまで急成長。4期生16人のうち、2020年2月にグループに合流した新4期生5人にとっては今回が初の神宮公演だったが、もはやそんな事実が霞むほどの存在感の強さに圧倒された観客も多かったことだろう。イントロの時点で会場の熱気がピークに達しつつあることが窺えた「I see…」や、今の4期生の勢いがそのまま凝縮された新曲「ジャンピングジョーカーフラッシュ」と、彼女たちの熱量の高さが現在の乃木坂46にとって非常に重要であることを再認識できた瞬間だった。

 と同時に、その4期生の直属の先輩にあたる3期生はすでにグループの屋台骨として機能していることも、今回のツアーを通じて実感させられた。一人ひとりがスター級のオーラを放つ存在にまで成長した11人は、彼女たちにとって欠かせない1曲「思い出ファースト」、最新曲にして今後のライブに欠かせない定番曲に成長しそうな「僕が手を叩く方へ」の2曲で先輩から引き継ぐ“乃木坂らしさ”を見事な形で示した。だからこそ、続く1・2期生5人による「海流の島よ」や「君の名は希望」がより強く心に沁みたことは特筆しておきたい。

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