My Hair is Bad、観客と一体になっていくドキュメント ライブ映像で体感したい“楽曲が描き出す情景”

My Hair is Bad、楽曲が描き出す情景

 My Hair is BadがライブBlu-ray/DVD『My Hair is Bad ダイナマイトホームランツアー 2022.3.26 国立代々木競技場第一体育館』をリリースした。神戸ワールド記念ホールと国立代々木競技場第一体育館にて計4日開催された『ダイナマイトホームランツアー』アリーナ編のうち、ツアーファイナルの3月26日・代々木公演の模様を完全収録。また、ツアーのオフショット映像も付属している。

 開演時刻になると椎木知仁(Gt/Vo)、山本大樹(Ba/Cho)、山田淳(Dr)がアリーナの通路を歩き、ステージへ上がっていく。ライブ映像は、椎木の背後につくカメラからの映像で始まっていて、深くお辞儀をしてからステージに上がる椎木の姿、3人がいつものように拳を合わせるまでのささいなやりとりなども収められている。SEをバックにMy Hair is Badのロゴが表示されるタイミングも含めて映画的なオープニングだ。なお、オフショット映像はこのオープニングに繋がる構成になっている。

 過去のアリーナ公演と同様、LEDに映像を映す演出や特効などは用いず、バンドの演奏のみで勝負した代々木公演。そして『ダイナマイトホームランツアー』アリーナ編といえば、My Hair is Bad史上初の試みとして360°ステージが採用されたライブだった。3人の立つステージは会場の中央に設置されていて、ステージを囲むように1万2千人の観客がいる。「どうか今日という日が、ただMy Hair is Badを観に行った日で終わりませんように。やっている側と観ている側で分かれませんように。正面のないこの真ん中で一つになれますように」とMCで語られた通り、観客の集中力、それぞれが楽曲に向ける想いを剥き出しの演奏で引き出し、引き受け、愛で返していくライブだった。ギター、ベース、ドラム、歌のみで大勢の観客一人ひとりを個人として受け止められるバンドの度量の広さの上に成り立っていた。椎木はギターを爪弾きながら「周りは人に溢れていたけど、僕は君と二人きりだと思ってました」と自分の書いた曲について語るが、リスナーにとっては音楽と自分の二人きりになれるのがMy Hair is Badのライブであり、この日会場で観ていた人にとってはバンドの演奏に没入する体験になったはずだ。

 もちろん今作でもそういった興奮を追体験できるが、それだけでなく、カメラという目を借りながら、ある種俯瞰的な視点で以ってライブを捉え直すことができるのがこの映像作品の魅力だ。つまり、残念ながら当日会場に来られなかった人はもちろん、あの日会場にいた人にとっても手に取る価値のある作品だということ。特にこの公演においては、360°ステージならではの美しい照明演出に注目したい。「真赤」の真紅。「卒業」の翡翠色。「カモフラージュ」の檸檬色。「戦争を知らない大人たち」の茄子紺、浅葱色。さらに、様々な形の光線が場内を彩った「悪い癖」。セピア色の思い出が色づいていった「綾」。足元のスモークとそれを照らす照明が幻想的な空間を演出した「白春夢」。きらきらと輝く「歓声をさがして」。今後それぞれの曲を聴いた時、音とともに思い出されるであろう印象深い光景がたくさん詰まっている。

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