Mrs. GREEN APPLE、2年半ぶりライブ『Utopia』でさらけ出したありのままの心 晴れやかな音楽とともに未来へ
しかしMrs. GREEN APPLEは、諸行無常の真理とともに“傷つくことがあっても愛することを諦めたくない”と歌い続けてきたバンドだ。この日のライブから読み取れたのは、やがていなくなる他者に触れるのは怖いが、それでも一緒にいたいと願う気持ち、すなわち愛と覚悟。Team“S”のダンサーとともに大森が歌い踊り、ソロ回しで魅せた「ダンスホール」は、悲哀も含めてこの人生を踊っていこうというメッセージが頼もしく感じられたし、「フェーズ1大好きだし、すごく楽しかった。青春でした。でも青春は終わったわけではなくて、また新しい出会いや別れを繰り返していくことが生きていくことだと思っています」というMCとともに“僕らにとっての青春ソング”と紹介されたフェーズ1最後の楽曲「Theater」もまた、全てを抱きしめるような佇まいを見せた。
本編ラスト。繊細なメロディを丁寧に紡ぐ藤澤の前奏を経て、大森が歌い出したのは「Part of me」だ。〈本当に僕が消えるその日まで/君にたくさん伝えておきたいんだ/誰にも言えない古傷が痛んだら/決して気づかないふりをしちゃいけないからね〉と始まる内省の歌は、過去の自分への手紙のようだが、ライブで鳴らされている今この瞬間は、自分と同じように、苦楽とともに人生を生きる全ての隣人へ宛てた手紙にも変わる。センターステージを離れ、花道を一人で渡る大森の背中は光の中に消えてしまいそうだ。しかし彼の帰るメインステージには共に音楽を鳴らすメンバーがいる。痛みは消えずとも、今の大森には若井と藤澤がいるし、同じように若井には藤澤と大森が、藤澤には大森と若井がいる。そして3人には彼らの音楽とともに生きるリスナーがいる。バンドの舵を取るリーダーとして俯瞰の目線を持ち合わせているために、『エデンの園』では他のメンバーが涙する一方、一人気丈に振る舞っていた大森が、「すっごく怖かったよね、走り出すの」(大森)、「そうだね」(藤澤)と言い合いながら、若井、藤澤とともにステージ上で涙を流せるようになったのも大きな変化だろう。メジャーデビューからまだ7年のバンドだ。今後も活動を続けていく中で大きな壁にぶつかる時はまた来るかもしれない。その上で、癒えない傷を抱えながらでもこの先の人生を生きていくのだと堂々と宣言するようなライブだったし、このライブを終えたからこそMrs. GREEN APPLEはこの先へ進むことができるはずだ。「毎日生きることが大変な人の味方でいたいし、味方でいてほしいです。みんなで明日を超えていきましょう。頑張ろう!」(大森)と、LEDに咲く花々をバックに鳴らした最後の曲は「ニュー・マイ・ノーマル」。温かな思い出が詰まった7年間への感謝、そして未来へと向かう意志を形にした晴れやかな音楽とともに、フェーズ2のMrs. GREEN APPLEがスタートした。