Mrs. GREEN APPLE、活動休止を経て自由になった音楽との向き合い方 フェーズ2開幕で実感しているバンドの核

ミセス、自由な音楽との向き合い方

 約2年間の活動休止を経て、Mrs. GREEN APPLE(以下、ミセス)がついにフェーズ2を本格始動する。すでにいくつかの楽曲が配信リリースされて話題を呼んでいるが、まもなく7月8日(フェーズ1完結を宣言した日)に発売されるミニアルバム『Unity』と、同日に行われるワンマンライブ『Mrs. GREEN APPLE ARENA SHOW “Utopia”』をもって、本格的な再始動の火蓋が切られると言えるだろう。大森元貴(Vo/Gt)がソロ活動を走らせていたとはいえ、休止期間中のメンバーはどのような“充電”を行っていたのだろうか。そして、それを経て完成した『Unity』には、今のミセスのどんな姿が映し出されているのか。これまでのミセスらしさもありつつ、新たな心持ちでフェーズ2に乗り出す3人にじっくりと話を聞いた。(編集部)

楽器に触れず過ごした活動休止期間

ーーまず、ミニアルバムを作り終えた今、どんなことを感じているのかを聞かせていただけますか?

藤澤涼架(以下、藤澤):フェーズ2の始まりの作品ができたのでデビューした頃のような気持ちですし、“アルバムができた!”という純粋な嬉しさがやっぱり大きいです。ここからまた始まっていくんだなと。

若井滉斗(以下、若井):ファンのみんながいろいろな反応をくれるのも嬉しいし、このアルバムを作り上げたことで、フェーズ2がスタートしたと明確に言えるようになったのも嬉しいです。”再出発できるぞ!”というワクワクもあるけど、“これからどんなことが始まるんだろう?”ということで、いろいろな感情が頭の中でぐるぐるとしています。

大森元貴(以下、大森):でも、まだ分からないですね。この2年でバンドの体制も変わったし、コロナがあって情勢も変化したじゃないですか。そういうものを踏まえて作ったアルバムなので「これしか作れなかった」という感覚が強いし、今はまだ僕らの内側の話でしかないので。ちゃんと届けられた時に初めて何かを感じる気がします。

ーーミセスはこれまで様々なタイプの楽曲を発表してきたので、フェーズ2では全く異なる方向性のバンドになる可能性もあるし、何ならバンドですらなくなるかもしれないと思っていましたが、このミニアルバムに入っている6曲はどれもミセスらしくて「おかえり」と言いたくなりますね。

大森:嬉しいです。フェーズ1、フェーズ2と区切ってはいるけど、僕らは別の何かになるつもりはないですから。

ーーということは、活動休止期間は、自分たちにとって大事なものを見つめ直す期間だったのでしょうか?

若井:まさしくそうですね。

藤澤:活動休止は元貴が決めたことなんですけど、元貴が舵をとってきたこのバンドのメンバーとして、僕と若井は自分たちの力不足を感じていたんです。ここから先に進むためには自分を見つめ直さなきゃいけないなと思ったので、休止期間中は、僕も若井もそれぞれ海外に行ってイチから楽器の修行をする予定でした。だけどコロナもあったので、その話は一旦白紙になって。でも“この期間だからこそできることはあるよね”ということで、逆に楽器を持ち込まずに共同生活を始めてみたりしましたね。1年半くらい楽器を触っていなかったんですよ。

大森:でも久々にスタジオに入ったら、楽器が上手くなっていたのが面白くて。

藤澤:ボディメイクをしたりダンスを教わったり、この2年間で今までやってこなかったことに触れたので、それが今の自分たちに還元されているんだと思います。

ーーダンスを学んだことで演奏に還元されたことといえば?

藤澤:やっぱりリズムですかね。ダンスは揃っているか/揃っていないかという明確な正解があるので、“人と合わせるとは”ということを一から学ぶことができました。

大森:あと、アンサンブルに対する考え方も変わったよね。僕らにはボーカル&ギター、ギター、キーボードとそれぞれに役割があるし、パズルのようにそれがハマっていくのがバンドだと思うんですけど、ダンスは誰もが主役になるし、逆に影に徹しなきゃいけない瞬間もあるんですよ。そういう表現を学んだことによって、“ボーカルだから”ということではなく、3人同じ目線でアンサンブルを考えられるようになった気がします。

ーーそう考えると、「ダンスホール」のMVでイントロから若井さんがセンターで踊っているのは象徴的ですね。

若井:あはは。そうなんですよ。あれはちょっとびっくりしますよね。

Mrs. GREEN APPLE「ダンスホール」Official Music Video

ーーそもそもなぜ2020年7月に活動休止して、2022年3月に活動再開したのか、改めて伺ってもいいですか? 個人的には2018年9月、3rdアルバム『ENSEMBLE』のツアーファイナルを観た時に、感動とともに“このバンドはこのままいなくなってしまうのではないだろうか”という危うさを感じたんですよ。

大森:それは大正解です。まさにそのタイミング。

ーーでもその後、4thアルバム『Attitude』のリリースやアリーナツアーがあったし、ベストアルバム『5』のリリースとともにフェーズ1が完結したのは『ENSEMBLE』ツアーの約2年後でした。その辺りの背景について知りたいです。

大森:休止の理由は、僕が休養したいと思ったからなんですよ。『ENSEMBLE』ツアーはいいツアーだったし楽しかったけど、外側と内側、世間の印象と自分が求めるミセスのバランスを上手くとっていくためのエネルギーが足りなくなってしまったんです。ツアーを終えたあとにメンバーに「すぐにでも休みたい」と話したんですけど、チームのスタッフから「アリーナツアーが決まっている」と言われたので「だったらそこまでちゃんと走り抜こう」と。だから、一番綺麗な形で活動休止に入れるように2018年秋ごろからストーリーを組んでいった感じでした。ただそれは、変にバランスを取りにいったという意味ではなくて。

ーーはい。ライブにしてもリリースされた楽曲にしても、どうにか余力で乗り切ろうというテンションであれば、あれほど充実した内容にならなかったと思います。先ほど藤澤さんが「自分たちの力不足を感じていた」と言っていたのは「フロントマンに休みたいと思わせてしまった」という意味で?

藤澤:はい。ミセスは自分たちでもびっくりするくらいのスピードで大きくなっていったので、正直僕は「元貴の書いた新曲に頑張ってついていかなきゃ」みたいに必死だったんです。ライブはもちろん楽しかったけど、不安や葛藤はずっとありましたし、元貴から「休止したい」と言われた時に「そうだよな」と思ってしまって。これから先もっと大きなステージに進むためには、今の自分のままじゃダメだと思いました。

ーー今年3月に活動を再開したのは、大森さんのメンタルが回復したからですか?

大森:いや、回復することはないんですよ。自分はそういう星の下に生まれたわけだからこうやってエネルギーを生成していくしかないし、その質を高めていくしかないんだろうなという結論に至ったんですよね。あとは単純に、さすがにファンのみんなをこれ以上は待たせられないと思ったし、僕らも2年ミセスから離れて、テレビやラジオからミセスの曲が流れてきても他人の曲に聴こえるくらいになっていたから“このままだと自分たちがミセスじゃなくなっちゃう”と思ったのもあるし。その上で、世間の情勢も見つつ、“そろそろ始めよう”となりました。

ーー自分たちがMrs. GREEN APPLEだという感覚が薄くなっていった時に、これまでの曲を聴いてどう思いましたか?

若井:不思議な気持ちでしたけど、いい曲だなと思いましたね。こういう楽曲を届けてきたバンドだったんだって。

大森:本当にそう。もちろんどの曲も丹精込めて作っているし自負はあるけど、もはや体の一部だから、どういう曲なのか分からなくなっちゃっていたんですよ。だけど一人のリスナーとして聴いた時に“この曲好きだわ”と素直に思えた自分に感動して。そういう音楽をちゃんと作れていたんだという自信にもなったし、自分たちにとっての指針にもなりました。

ーーそれこそ活動再開後、初の新曲として配信された「ニュー・マイ・ノーマル」は、ミセスの王道を真正面から更新するような曲だと感じました。

大森:よかった。「ニュー・マイ・ノーマル」は、明るくて前向きだけど地に足をつけたような……期待を武装するんじゃなくて、今までとこれからの感謝を歌う曲にしたいと思いましたね。

ーー歌詞も前向きだけど少し不安も滲んでいるので、バンドの体制が変わったことや、コロナ禍でそもそも世界が変わったことによる影響が表れていると思いました。

大森:そうですね。でもこの2年の出来事ってあくまで人一人単位の話というか。バンドの編成が変わったことで、自分のことを疑う瞬間や自信がなくなっちゃう瞬間もあったんですけど、それって“人生を生きていたらこういうことも当たり前に起こり得るよね”という種類の心の傷なんですよ。

ーー確かに。大切な人との別れを経て様々な感情を抱くということは、バンドを組んでいない人でも経験することです。

大森:だから「みんなそうだよね」「この時代を生きていたらこういう変化があるよね」という歌詞だと思います。

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