a flood of circle、初のホールワンマンで届けた“伝説の夜” 次なるお祭りへの期待感も溢れた公演に

a flood of circleが届けた“伝説の夜”

 a flood of circleの11thアルバム『伝説の夜を君と』のリリースツアー『a flood of circle 「Tour 伝説の夜を君と」』。そのファイナル公演が、7月8日に東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)にて開催された。

 ライブは〈これが最初の A〉と歌う、まさに幕開けに相応しい「A」でスタート。続けて、渡邊一丘(Dr)の力強いビートにあわせてライブ定番曲である「Dancing Zombiez」が投下されると、2曲目にもかかわらず、会場はすでにライブハウスさながらの熱気を帯びていた。HISAYO(Ba)のクラップにあわせて観客が手を叩き、サビでは拳を高く突き上げる光景が一面に広がる。フロアとステージの一体感は、「クレイジー・ギャンブラーズ」「Blood Red Shoes」と続けざまに披露されたロックチューンによってどんどん高まっていった。

 この公演がバンド初のホールワンマンとなったa flood of circle。「狂乱天国」でハンドマイクに切り替えた佐々木亮介(Vo/Gt)は、マイクスタンドを後方に移し、広い空間を満喫するようにステージを上手へ下手へと動き回る。「浦安のあそこより、フロリダのあそこより、今日はここがNo.1。そうだろ?」と告げて始まった「Welcome To Wonderland」では、途中でステージに寝ころぶ姿も。アオキテツ(Gt)はステージ前方でギターをかき鳴らし、HISAYOがステップを踏み、渡邊が時折2階と3階を見上げるようにしながら音を奏でる。メンバーそれぞれが、今日辿り着いた最高の景色を楽しんでいるかのように思えた。

佐々木亮介
佐々木亮介

 後半、「渋谷! 俺達とあんた達の明日に捧げます!」とライブではお馴染みの佐々木の言葉に続いて披露された「シーガル」では、渡邊とアオキが向き合って演奏する場面も。本編19曲のセットリストの内12曲が『伝説の夜を君と』の収録曲で構成されていたが、アルバムからの楽曲「R.A.D.I.O.」の〈最高と最低を繰り返しながら/辿り着いた今日〉や、「北極星のメロディー」で歌われる〈ポラリス/君と最高の景色を探していた〉は、まさにこの日の祝祭のような空間を表しているようだった。

アオキテツ
アオキテツ

 もちろん、これだけでは「伝説の夜」は終わらない。MCで「ハリボー」の原産国がハンガリーだと最近初めて知ったことから、「世の中まだ知らないことばかり」と口にしていた佐々木。そして、最近いいと思ったのが「ピアノ」だという。ステージ下手にセットされたピアノに向かい、「分からないことだらけで不安もあるけれど、俺達の生き方があるはず」と前置きして「白状」を歌い出す。1コーラスを佐々木によるピアノの弾き語りで、2コーラス目からをバンドで奏でる、まるでMVを再現したかのような演出だ。偶然にもこの日、日本列島を痛ましいニュースが駆け巡った。中には報道を受けて、漠然とした不安を抱えながら会場に来た人もいただろう。真っ直ぐな歌声と胸に響く力強い演奏は、不安定な世の中でも私達には「音楽」という心の拠り所があると教えてくれるようだった。

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