羊文学、幻想的な空間で響かせた3人の力強いアンサンブル “未来”へ光灯した『OOPARTS』ツアー最終公演
その明るさのまま始まったのは「パーティーはすぐそこ」だ。女子高生を主人公にしたパワフルな青春コメディ映画『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』をイメージして書かれたというこの曲は、バンドの中でもポップなサウンドに振り切った楽曲。ミラーボールが回転し、〈こんなんじゃまだ終われないわ 本当の私を教えてあげるわ〉に手拍子も続く。〈さあ行こう〉と気持ちよく歌う塩塚について行きたくなるワクワクを感じさせた。
その後、暗みからふわっと光が差した「マヨイガ」、いきいきと歌う「あいまいでいいよ」、壮大なコーラスが重なっていく「ワンダー」を披露。スノーノイズの映像を残し、一度退場していく。
アンコールの1曲目は「人間だった」。向かい合って、羊文学だけのアンサンブルの響きを聴かせる3人の頭上には光がくるくると回っていた。〈きこえるかい〉と歌詞が訴えかけてくるこの曲も東京を描いた曲だ。どれも、聴いているこちらにふらっと声を掛けてくれる感覚を感じさせる羊文学の楽曲たち。時にはどこかに連れていってくれ、自分は今、こう思っているよと教えてくれ、混沌とした世の中でも本当は自由でいていいと教えてくれる。誰かに向けた曲、自分に向けて、未来の自分に言ってあげたいこと。「昔の自分はこんなことを言ってるのに、また繰り返している」と楽曲への思いを明かしていた塩塚。新しい楽曲で歌い繋がれるほど強い気持ちが込められている。そして音のアレンジも、曲の雰囲気も変わっていくように、少しずつその思いに、塩塚から見えている世の中に変化が表れているのではないだろうか。
最後のMCでは、結成当初のバンドメンバーが前日のライブに訪れていたという話から「2人がいた瞬間の羊文学がなかったら、いまのこの羊文学はないんだなと思った」と話す塩塚。これまでのメンバー、ライブハウスで聴いてくれた観客、「その日の私たちと皆さんが出会って、それがいっぱい積み重なって今日を迎えることができました」と感謝を伝える。ツアーにおける自分たちの演奏、幕、スモーク、照明、アルバムに関わったスタッフ、ヘアメイク、写真、それら全てに「いろんな力が合わさって皆さんとできた1日。そんな全員に拍手」と皆に感謝の気持ちが広がる平和な空間が出来上がっていた。
アンコール2曲目の「powers」では観客の手が上がり、オーディエンスとステージの3人がお互いに顔を合わせ、一つになって楽しむ雰囲気が感じられた。ラストは「夜を越えて」で締め括られ、最後は轟音がうなりを上げ、ツアーファイナルを終えた。
何か迷ったときに「多くの人に届くかどうか」を軸にやってみる。そこから動き出した『our hope』、そして『羊文学 TOUR 2022 "OOPARTS"』。夏フェスを終えたあとの秋頃の開催が予告されたワンマンライブが、もう待ち遠しくなる。「これからももっといろんなことができるように積み重ねてやって行こうと思います」と笑顔で伝えた塩塚。『our hope』に込められた「平和」な風景が広がった特別なライブだった。
※1:https://www.cinra.net/article/interview-202008-hitsujibungaku_ymmts
※2:https://natalie.mu/music/pp/hitsujibungaku02/page/2
■セットリスト
kmu.lnk.to/TOUR_OOPARTS
■配信情報
『羊文学 Tour 2022 “OOPARTS”』Live Streaming
アーカイブ配信:7月3日(日)23:59まで
配信視聴チケット:¥3,000(税込)
販売期間:7月3日(日)20:00まで
<PIA LIVE STREAM チケット購入>
https://w.pia.jp/t/hitsujibungaku-pls/