アツキタケトモ×柴那典、『Outsider - EP』を通して語り合う“Z世代ポップスと現代社会” SSWの世界的な傾向と共通性も
アツキタケトモと同時代性を持っているZ世代のポップス
ーー今回は“Z世代ポップスと現代社会”というテーマで、お互い選曲をしてきてもらいました。
柴:僕は「アツキタケトモと同時代性を持っているZ世代のポップスって何?」というお題を与えられたと思ったんですね。これはなかなか日本では見つからなかった。でも、海外に目を向けると、コナン・グレイの「People Watching」(2021年)が思い当たるなと。周囲の人が恋愛している様子に憧れながらも、自分は傍観者であるという切なさなどを歌った内容なんだけど、テーマ的にも「Outsider」で歌われている社会の中での孤独や、「それだけのことなのに」のように他人と自分を比較してしまうことへの葛藤など、いろんなムードが共通しているなと思いました。
アツキ:僕もコナン・グレイの曲は聴いていたので、こういったテーマをポップに昇華していくことも含めてシンパシーを感じました。
ーーアツキさんはいかがですか?
アツキ:僕は“Z世代の音楽について”というテーマで広義に捉えて、Z世代から音楽制作がどう変わったかの選曲を中心にしてきました。国内では、僕が同世代として感覚が違うと最初に思ったのは、ぼくのりりっくのぼうよみです。ラップか歌かの区切りも含めて、そのジャンルレスな感じ、サブスクの聴き方にいち早く移行していった人だなと。だから2019年でソロプロジェクトを辞めたことを含めて、過去に囚われていない、そういった意味で、国内で“Z世代”を最初に感じたのは、ぼくりりでした。
柴:ぼくりりもZ世代なんですよね。彼はデビューが早いから、あまりそう括られなくて。以前、ぼくりりにインタビューをする機会があったんだけど、「自分が渋谷駅にいたとしてーー今は世界が開けている。どの電車に乗ってもいいし、なんなら電車に乗らなくてもいい」(※2)といったことを言っていて、アイデンティティの問題に対してアバンギャルドな回答をしている人だなと思いました。
アツキ:たとえばMega Shinnosukeさんのインタビューを読むと、ファッションを選ぶのも作曲と同じようなことだと言っていたのが印象的で。どの服を着て自分をどう見せるか、つまりセルフプロデュースの一環である点で同一性があると。Z世代においても、そういう価値観や考え方は日々アップデートされているのかなと感じたエピソードです。
柴:splice、サンプルパックといった楽曲制作用サウンド素材集のライブラリが広く流通したことによる技術的な背景も含めて、音楽を作ることがコンポーズというよりはセレクトになってきている。Mega Shinnosukeさんはそれを体現している人ですよね。
アツキ:okkaaaくんにも共通するものを感じます。Type Beat(インストゥルメンタルのビート音源)を使って自分の歌を乗せつつ、オリジナリティを出すという考え方。セレクトを音楽制作にうまく生かすという感覚は、日本のアーティストにも徐々に浸透してきている気がします。
柴:okkaaaさんが以前どこかで作曲をデザインと言ってたことが印象的で。彼らを見ていると、この世代はマルチクリエイターであることが当たり前になっているなと、すごく思う。
アツキ:Type Beatの存在やspliceなどの技術革新があり、色々なことを一人でできるようになっている。時代の変化なのかなと思いました。