yonawo、okkaaa、Mom……“Z世代”新星アーティストの共通点を近作から探る
yonawo、okkaaa、Mom。この3組はいずれも1990年代後期から2000年代初期に生まれたいわゆる“Z世代”、かつ、幅広いジャンルを取り込み新たな音楽的アプローチに挑戦しているアーティストだ。本稿では11月に新作をリリースした彼らに注目し、音楽シーンにおけるZ世代の特徴を探る。
最初に紹介するアーティストはyonawo。福岡を拠点に活動する、荒谷翔大(Vo)、田中慧(Ba)、斉藤雄哉(Gt)、野元喬文(Dr)の4人による、ロック、ジャズ、ヒップホップ、ソウルなどを自身の音楽に集約したミニマルなR&Bサウンドが特徴のバンドだ。先日11月15日には、ワーナーミュージック内レーベル<Atlantic Japan>よりメジャーデビューシングル曲「ミルクチョコ」をリリースした。同曲は築50年程の古民家を改修した福岡のミュージックスタンドで収録され、前作EP『SHRIMP』よりも、より楽器や歌声などの生のサウンドが前面に出たソウル、R&B色の強い楽曲となっている。特筆すべきはアコースティックギターを用いることによる柔らかなサウンドと、荒谷のソウルフルな歌声、そして最後には合唱のパートを設けるなど、生身の音により生まれる温かさだ。まさに同作がリリースされた冬の時期に聴くに心地いい作品と言える。
先日恵比寿KATAで行われた「ミルクチョコ」のリリースパーティーでは、同曲はじめ、ライブではおなじみの「Just the two of us」を織り交ぜた「矜羯羅がる」やアリシア・キーズの「If I Ain’t Got You」など自身の楽曲以外にも、影響を受けた音楽のカバー、そして、来月12月20日リリースの新曲「Mademoiselle」を披露した。会場BGMには、チェット・ベイカー、The Strokes、エイフェックス・ツインなど、彼らの好きな幅広いジャンルのアーティストの楽曲が流れ、yonawoの音楽を彼らならではのものたらしめる背景も感じ取られた。
続いてのアーティストはokkaaa。11月6日には「界雷都市」、20日には「想像の遊牧民」そして27日にはokkaaaがリリックを、okkaaaと同世代のアーティスト・LULUがトラックを手がけた「LIQUID」と立て続けに作品をリリースした。
「界雷都市」は、バックで鳴るノイズやオーバーダブが社会を超個体として捉え、自我へと潜り込んでいく様を感じさせるようなローファイヒップホップ。「想像の遊牧民」は、「ゴスペル的なアプローチを取り入れたり叫び声に歪みを加えてギターっぽくしたりと、いろんな角度から自分のクリエイティブの挑戦を試みた作品」だという(okkaaa Twitterより)。また、okkaaaの哲学を文章、楽曲、映像などを交えて表現する、まるでミクストメディアのようなコンテンツ『潜世界』を展開。「界雷都市」と「想像の遊牧民」、そして12月11日リリースのシングル「印象派の夢」は同コンテンツを構成する一部としての楽曲だ。
どの作品においても混沌とした情報社会で虚構と現実の間に生きる私たちについて考えさせられるようなリリックが綴られ、楽曲からはokkaaaの世界観や哲学観が強く垣間見える。楽曲制作以外にもライターやフォトグラファーとしても活動し、自身のメディア展開やプロモーション活動も行うなど、真にインディペンデントでZ世代を象徴した存在と言える。