アツキタケトモ×柴那典、『Outsider - EP』を通して語り合う“Z世代ポップスと現代社会” SSWの世界的な傾向と共通性も

アツキタケトモ×柴那典対談

シンガーソングライター同士のコミュニティが目に見える形になっている(柴)

柴:僕が最近いいなと思っていたことは、アツキタケトモ、okkaaa、Ghost like girlfriendというトラックメイキングも自分でやるタイプのシンガーソングライター同士のコミュニティが目に見える形になっていること。ロックバンドやヒップホップのラッパーたちは近い関係の仲間がシーンを形成して盛り上げていくことがやりやすいけれど、シンガーソングライターは一人ひとりだからそういうシーンって作りづらいですよね。でもこの3人って単に仲がいいだけじゃなく、ちゃんと時代に対しての見方と美学、取捨選択などが共通している感じがするし、そうやってお互いを認め合っている人のコミュニティがあるのはいいことだと思っています。

アツキ:ありがとうございます。3人でもそういう話をしているので。シンガーソングライター=弾き語りって括りで語られていたものが、僕も含めてそうじゃないミュージシャンが出てきているので、大きいムーブメントを作れれば、自分が求めているような音楽やアーティストがもっと出てくるかもしれないし、自分がやりたいことも、もっと分かりやすくなったりすると思うので。

柴:時代の変化ということで言うと、今って良くも悪くも、アーティストに対してバズることへのプレッシャーがかかり続けている時代でもあると思っています。2017年から一般的にも広がったTikTokが強い影響力を持っていて、そこでバズを生むことが直接ヒットにつながる時代になっている。そういう状況において、アツキタケトモの音楽はTikTokにはなかなか使われづらい。TikTokで使いやすいことがポップであるという今の時代に対しての明確なオルタナティブであるから、そういった意味でも、流されないで自分の音楽をやり続けるべきだと思ってるんですよね。

「何年後に聴いても色あせない楽曲を作りたい」(アツキ)

アツキ:そこは僕も周囲と意見交換してきた1年間でした。僕は、何年後に聴いても色あせない楽曲を作りたい。それが音楽を始めた最初のモチベーションだから。だけどそこを頑なにやりすぎるのも違う気がしていて。プラットフォームに合わせた音楽制作を意識し過ぎたり、音楽セールスのトレンドに対して重心を寄せすぎないようにしつつ、軽視はしないように、バランス感覚を意識した上で、よりポップに、でもオルタナティブに、次の作品に向けてやっていきたいなと思っています。その一歩目が『Outsider - EP』でもあります。

柴:これは僕の感触ですけど、2010年代後半は、海外でも国内においても、尖っているものや先鋭的なものがポップスとして成立していく傾向が多かった気がします。一方で、2021年~2022年の現時点は、共感できるもの、親しみやすいもの、手が届くものがポップであるという風にルールとムードが変わっている感じがするんです。特にTikTokにおいてはダンスとエモ、踊って楽しいか自分の感情に重ねられるか、という力学が、特に日本においては大きく働く。それが悪いと言いたいわけではなく、そこで生まれるバズに多様性が減っているという問題提起はしたいと思っているんです。一方で、海外で言うとコナン・グレイや、ブルックリンにはクロード・ミンツやトムバーリン、ノルウェーのオスロにはガール・イン・レッド、ロンドンにはホリー・ハンバーストーンといった、それぞれの都市に数十秒では切り取ることのできない疎外感を歌うZ世代のシンガーソングライターがいる。今の時代の一つのオルタナティブはそこにあると感じます。また、ロンドンにはインディーズレーベル<Dirty Hit>があって、そこにはリナ・サワヤマやサヤ・グレーも所属していて価値観を共有している。そういう視点で東京を見たときに、アツキタケトモ、Ghost like girlfriend、okkaaa、Mega Shinnosukeといった面々がいるという感じがする。それぞれの都市に音楽的に共通性のあるシンガーソングライターがいるという現状が僕はいいと思っています。

「Wish You Were Gay」
「Wasted」
「we fell in love in october」
「Falling Asleep At The Wheel」
「XS」

アツキ:それをどう広げていくか、これから向き合い続けていかなければと思っています。一過性ではなく長い目で見ていきながら、時間をかけてじっくりいいものを作り続けることで、自分たちの音楽の普遍性を証明したい。そのために全員が頑張っている気がします。

(※1)https://sp.universal-music.co.jp/atsuki-taketomo/family/
(※2)https://finders.me/articles.php?id=3205&p=3

■リリース情報
アツキタケトモ
Digital EP
『Outsider - EP』
発売日:6月29日(水)

1. Untitled
2. Outsider
3. Family
4. Shape of Love
5. Period
6. それだけのことなのに

配信リンク:https://atsukitaketomo.lnk.to/outsider-ep

■関連リンク
公式サイト:https://atsukitaketomo.com/
公式Instagram:https://www.instagram.com/atsukitaketomo/
公式Twitter:https://twitter.com/atsukitaketomo
公式TikTok:https://www.tiktok.com/@atsukitaketomo__

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