Saucy Dog「シンデレラボーイ」、マカロニえんぴつ「なんでもないよ、」ヒットに表れたZ世代のリアルな恋愛観

すれ違う2人の関係を女性目線で描いた「シンデレラボーイ」

Saucy Dog「シンデレラボーイ」Music Video <5th Mini Album「レイジーサンデー」2021.8.25 Release>

 一方で、「シンデレラボーイ」はSaucy Dogが昨年8月に発売したミニアルバム『レイジーサンデー』の収録曲。YouTubeではMVも公開されており、その再生数は4,500万回を超える。TikTok上でも人気で、この曲を使用した投稿は14,000件を突破。各種チャートでもロングヒットを見せている。

 終わりを迎えた/迎える寸前の2人の関係を女性目線で描いた一曲で、いわゆるジェンダー交差歌唱によるエモーショナルなボーカル表現によって歌い上げた作品だ。その意味ではクリープハイプやindigo la Endといったバンドの諸作品と近い系譜にあると言えるだろう。

 深夜0時を過ぎると魔法が解けるシンデレラの童話をモチーフに、あることをきっかけにまるで魔法が解けたかのように相手のことが好きでなくなってしまったその心の変化を、主人公視点で綴る口語体のフレーズを織り交ぜた歌詞が秀逸。〈嘘くらいせめてちゃんと/次は上手につかなきゃね〉〈騙されてあげていたの〉といったフレーズに主人公の繊細な機微が表れている。

 心変わりを経てもなお体は許してしまう主人公の踏ん切りのつかなさ、心の整理が付いていない様子は、そのまま〈濡れたままのバスタオル〉〈散らかった部屋〉といった描写にも表れている。恋愛におけるすれ違いとそれに対する登場人物たちのけじめの悪さ、心の弱さを巧みに表現した歌詞が若い世代に響いているのかもしれない。

 等身大の恋愛を歌った「なんでもないよ、」、2人のすれ違う関係を女性視点で描き出した「シンデレラボーイ」。今年上半期に支持された両曲では現代のZ世代の心を掴むリアリティが歌われている。下半期はこれらの楽曲がどれほど人気を維持するか、また他にどのような楽曲がこのランキングに上がってくるのか注目したい。

※1 https://www.jiji.com/jc/article?k=000000055.000020799&g=prt

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