『ONE PIECE』『マクロスF』『ギルティクラウン』……声優と歌唱キャストが異なる作品、その利点とは?
このような活躍において注目すべき点として、CVを担当した声優によるキャラクターの話し声と、歌唱キャストの歌声に違和感がないということを挙げたい。現在はアーティストとして『PSYCHO-PASS サイコパス』(フジテレビ系)シリーズのエンディングテーマをはじめ、『ビルディバイド -#FFFFFF-』(TOKYO MXほか)のオープニングテーマ「Gold」など手がけるEGOISTのボーカリストであるchellyは、もともと茅野愛衣の声と聴き比べて違和感のないことを踏まえて選ばれたという。EGOISTは、2011年に放送されたアニメ『ギルティクラウン』(フジテレビ系)の劇中に登場する音楽ユニットで、そのボーカル「楪いのり」のCVを茅野が務めていた。同作のオープニングテーマを担当するsupercellが新ゲストボーカリストオーディションを開催し、supercellの新ボーカルに「こゑだ」、楪いのりの歌唱キャストとしてchellyが選ばれ、supercell・ryoの提案でリアルでもEGOISTをデビューさせることになったという経緯がある。こうした例と同様に、『ONE PIECE FILM RED』でウタのCVを務める名塚佳織とAdoは、キレの良さと、いい意味で耳に引っかかりを残す声質が共通点だ。
CVと歌唱キャストとを分けるキャスティングは、音楽をテーマにした作品に多く見られる。最近では『パリピ孔明』(TOKYO MXほか)のEIKO Starring 96猫や久遠七海 Starring Lezel、昨年話題を集めた『Vivy -Fluorite Eye's Song-』(TOKYO MXほか)のヴィヴィ(CV:種﨑敦美/Vo:八木海莉)などがそうである。声優は自分の演技に集中することができ、歌唱キャストはアニメの世界観の中でいつもと違った歌詞や楽曲に挑戦することができ、声優が歌うキャラクターソングとはまた違った魅力を発揮することがある。『ONE PIECE FILM RED』でも、声優と歌唱キャスト、ダブルの魅力でウタというキャラクターがどのように描かれていくか楽しみだ。