androp、重厚なアンサンブル響かすエネルギッシュなステージ 観客と心通わせたツアーファイナル

androp、重厚なサウンド響かせたツアー最終日

 6thアルバム『effector』を携えたandropのツアー『androp one-man live tour 2022 “effector”』が6月4日の豊洲PITでファイナルを迎えた。今回のツアーではキーボードの森谷優里とともに、昨年9月に行なったビルボードライブ『androp Billboard Live Tour 2021 “Lonely”』、そしてアルバム『effector』にも参加したサックス奏者 Juny-aをサポートに迎えた。昨年のビルボードライブで初めてサックスを加えた布陣でステージに立ち、これまでの曲を新たなアレンジで聴かせたandrop。その時は“ビルボードライブ”という会場のムードもありラグジュアリーで粋なアレンジとなっていたが、今回はアルバムを提げた大きな会場で展開するライブとあって、バンドの持つダイナミズムを生かした重厚で、晴れやかなアレンジで魅せた。

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内澤崇仁(Vo/Gt)

 目が眩むような明滅する照明と様々な声が入り混じったノイズが響きわたって、いきなり別の世界に来たような感覚を味わうオープニングから、「Beautiful Beautiful」のひんやりとしたビートや這うようなシンセベース、徐々に感情を爆発させていく内澤崇仁(Vo/Gt)のラップ、歌が観客の体を確実に捕らえていく。張り詰めた緊張感と、体温が上がっていく高揚感とが同時に加速していくなか、「Moonlight」へ。シャッフルビートに、ギターとサックスとが奏でる哀愁味を帯びた旋律が冴える。「MirrorDance」を挟み、アコースティックギターとパーカッションが刻むビートがブリージィな「Chicago Boy」へと冒頭からアルバム『effector』の曲が続いた。サックスが入ったアレンジで「MirrorDance」などはより恍惚感のあるアンサンブルとなったが、いずれもがバンドサウンドに溶け込んでいる印象だ。昨年の共演に続いて、ツアーという時間を重ねてきたことは大きいのだろう。

 ミディアムテンポで、空気感のある曲ではより繊細なアレンジが映える。伊藤彬彦(Dr)の跳ねたビートと佐藤拓也(Gt/Key)のギターで乾いたループ感を生む「Know How」では、歌とサックスとの絡みにグルーヴが曲にアンニュイな色を足していく。「この豊洲PITにひとりで来たよという人。配信をひとりで見ているよという人。そんなロンリーなあなたに捧げます」(内澤)とスタートした「Lonely」では、隙間やタメのあるビートに前田恭介(Ba)の痺れるような低音のベースと、呼応する鍵盤とサックスとが曲を饒舌にする。観客は自然と手をあげて体を揺らし、心地よく音楽に酩酊しているという感じだ。そんな中でのセンチメンタルな「Pierce」もまた、より深く刺さる。

 中盤では昔の曲を、と最初のミニアルバム『anew』(2009年)から「Tonbi」、そして最初のフルアルバム『relight』(2011年)から「HoshiDenwa」を披露。こちらも今回のツアーのバージョンにアップデートされた。続く「Hikari」では内澤が、一緒に歌うことはできないコロナ禍のライブで拍手によるいろいろな表現を身につけてきたが、何か新しい方法でみんなが参加できればと、観客にスマホのライトを点けてステージを照らしてほしいと呼びかける。ステージの照明はなしで、スマホの灯りが揺れる中での「Hikari」もまた美しい。ステージから見える景色はさらに格別だっただろう。会場が一体となって高揚していったところでジャジーでセッションの醍醐味がある「Water」や、『effector』のなかでもビザールな音のアンサンブルによる「Gain」がandropの音の迷宮の深くへと誘う。

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前田恭介(Ba)

 大きなミラーボールの光が美しく会場を包むような照明やムードのある光の演出となった今回だが、終盤は色とりどりの照明がエモーショナルに曲を彩る。静かなピアノにのって内澤がピンスポットの中で歌いはじめた「Iro」では、歌詞に合わせて照明の色が変化。ゴスペル的に声が音が重なり合っていくところに、まばゆさも加わってアンセミックだ。続く「Colorful」も然り。伊藤のドラムとJuny-aのパーカッションでグルーヴィにスタートした曲が、サビでカラフルかつファンタスティックに開けていく。その美しさに観客の手がぐっと上がったところで、土曜の夜にぴったりな「Saturday Night Apollo」で踊らせると、「心の中で!」と「Voice」の(静かな)大合唱へと導いていく。そしてラストを迎えて演奏されたのは「SuperCar」。シンガロングやコール&レスポンスのパートは実際に声に出せないまでも、その分大きな手拍子をし、高く手をあげてバンドと一体になっている。ソウルフルなサウンドにのせ「さあみんな、心で」と呼びかける内澤の声に応える観客の熱量は高い。その熱さがまた、サウンドのボリュームをあげる。リリース前からライブでいち早く演奏されてきた「SuperCar」だが、ライブを重ねるごとにスケール感の大きな、包容力のある曲へと洗練されている。〈あいつと比べんな 他の誰かも気にすんな 解き放って 行こうか〉〈新しい困難な道 君はどこへ向かう? ボリュームを上げて〉(「SuperCar」)。肩の力を抜いて、自分の時間を編んでいく豊かさを軽やかに伝える歌が、より大きく深く響くものになっている。

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