湊あくあ・大空スバル・桃鈴ねねの唯一無二なバランス まろん×KO3が語る、NEGI☆Uを体現した楽曲制作の裏側
「陰キャでも陽キャでもみんなが楽しんでくれるような曲になればいい」(KO3)
ーーNEGI☆Uの楽曲がそういったプラットフォームでどのように受け入れられたら面白いと思いますか?
まろん:キャラクター系の楽曲って、サビ以外のところがピックアップされることも多くて。ここはこういう踊りを付けたら面白そうだなとか、そういうことを考えながらフル尺を聴いてみるとさらに音楽が楽しめると思いますね。音楽って、今までは2MIXのL/Rで楽しむだけみたいなところもありましたけど、さらに踊りを付けたらどうなるかとか、ここをループさせたら面白いんじゃないかとか、この音楽を聴いているあなたも、そこからさらに新しいものを生み出せるよっていう三次元的観点でも楽しめると思います。
KO3:「PANIGHT」の歌詞に〈陽キャでも陰キャでも〉というフレーズがあるんですけど本当にそんな感じで。この曲は、陰キャでも陽キャでもみんなが楽しんでくれるような曲になればいいなって思います。
まろん:その部分は歌詞においてもこの企画においても一番伝えたかったところなんです。僕自身がすごく陰キャでオタクな性格ではあるんですけど、それでもTikTokという舞台でみんなで楽しめるんだよっていうのを表現したいなと思って。あとNEGI☆Uの3人のバランスがいいんですよね。陰キャと言われてる(湊)あくあさんと、陽キャと言われているスバルさん、そして本当は陰キャなんだけど陽キャのふりを頑張っている(桃鈴)ねねさんの3人。この3人がTikTokで遊ぶときにフィットするような歌詞、楽曲単体としても違和感がないような歌詞、そして配信を見ている人も楽しめるような歌詞という、いろんな意図を込めて制作しました。
KO3:作詞がまろんさんっていうのは、フル尺を作ったあとで歌詞が来た時に知ったんですけど、本当に完璧な詞でめちゃくちゃすごいなって感動しました。最後のわちゃわちゃする部分とか、作っているときはあんな構成になると思わなかったです。
まろん:メロが入ってない部分とかにもバンバン歌詞を入れてしまったんですけど、大丈夫でしたか?
KO3:むしろめっちゃにぎやかで、ありがたいなと。本当にまろんさんのオタク力が存分に発揮されている部分だと思いました。
まろん:僕、空白恐怖症というか、空いているところがあるとセリフとかで埋めたくなるんですよね(笑)。あとはキャラクターの声をたくさん聴きたいなっていうのもあるので、じゃあセリフにしようと思って。最後、ねねさんが光る鉛筆を自慢するセリフがあるんですけど、いつかの配信で『魔法が使える漆黒の鉛筆』を杖に見立てて常に所持していた学生時代のエピソードがあった筈で。そのエピソードから色々な着想を得てセリフにしてみました。「普通に見える?実は魔法でキラキラ光るんだけどねンフフ~」的な。
ーー楽曲のテーマには「宿題が終わらないときの徹夜の脳内テンション」というのがありますが、これはフル尺を作る段階ででてきたものだったんですか?
まろん:そうですね。KO3さんのフル尺のトラックを聴いたとき、最初のアイデアとして、スバルさんの配信の挨拶の「あじまうあじまうあじまう」っていうフレーズで始めたいなと思ったんです。でもなにが始まるんだろう、なにかヤバいことが始まるんだろうな、じゃあ多分パーティだよな、でも登場人物は3人しかいなくて、あくあさんはキャラ的にそういうところには行かないよな……っていう連想ゲームがどんどんはじまって、その落としどころとして、宿題が終わらないときの脳内パーティというテーマに落ち着いた感じですね。
ーー制作する中でお互いに刺激的だったことや意外だったことというと何がありますか?
KO3:やっぱり仮歌でちゃんと自分のニュアンスを伝えるために歌うっていうのは本当に尊敬というか、びっくりしましたね。歌詞もメロディを入れやすい単語の使い方をされていて、本当に見た瞬間にメロディが浮かんだんですよね。そういうことも考えられていてすごいなって思いました。
まろん:基本的に自分が歌詞を書くときは、仮歌を全部自分で歌うんです。希望があれば女性の仮歌さんを用意しますけど、セリフのニュアンスとか歌い方の細かいポイントを一番表現しやすいのは自分の声なので、仮歌を歌うときは自分を「ホロライブ」メンバーだと思って歌っています(笑)。
やっぱり人間が歌うので、息継ぎができたりとか、歌いやすかったり聞き取りやすかったりっていうのを重視していて。今回歌詞を先に書くにあたって、一応全部僕の中での想定していたメロディがあって。もちろん打ち込んだりはしていないのでもう思い出せないくらいなんですけど、歌詞を書く際は架空のメロディに合わせて制作していました。今回は完成した4曲、想定に近いような雰囲気でメロディもあがってきたので、歌詞から伝わってるっていうのは嬉しかったところですね。「PANIGHT」はとにかく楽曲のオケとか空気感が個人的に好きなタイプのものが来たので、めちゃくちゃ楽しく筆が進んだ記憶があります。
(大空スバルは)「陽キャとか陰キャとかの概念がそもそもない」
ーーNEGI☆Uの3人について、それぞれ歌声や表現、キャラクターについてどのような印象を持っていますか?
KO3:3人とも歌や演技がすごく上手だなと。特にセリフの部分がとてもいいなと思っていて、アウトロの部分は流石でしたね。自分はあんまりライブ配信を見れていないのでなんとなくなイメージなんですけど、スバルさんはひたすら明るくて、みんなを元気にするみたいな立ち位置。ねねさんは癒しキャラ、あくあさんは愛されキャラっていう感じなんですかね。曲の中にも3人の表情みたいなところが反映できたのかなと思います。元気なところはもちろんパーティー感を出したり、レイヴ系の曲でよく使われるホーンとかをバンバン入れたり。
まろん:フル尺が上がってきてから僕が歌詞を書いて、2番のサビの頭であくあさんのノリきれてないところを表現したいので、フェイクドロップを入れてくださいとオーダーした覚えがあります。
KO3:そうですね。ドロップにいくとみせかけて音を切って、一回みんなを騙すフェイクドロップっていうのを使って、あんまりノリきれてないあくあさんを表現して。そこは個人的にいい感じにできたなと思っています。
まろん:僕の3人の印象なんですけど、表現がめちゃくちゃ上手で。セリフや歌い方についてディレクションシートに細かく指示を書くんですが、それを正確に拾っていただけて。こういうテイクがほしかったっていうのが挙がってきて、流石だなと思いました。
歌に関しても、3人ともレベルがすごく高くて。あくあさんは「あくたんのこと好きすぎ☆ソング」でも感じたことなんですけど、メロディから歌詞からすべて噛み砕いてしっかりと歌い上げてくださる。「PANIGHT」では一番パリピから遠い存在なんですが、でもふたりに同調しようという気持ちはある。アイドルなので、「この世界を壊してはいけない、あたしもとりあえず頑張ろう」みたいな。そういう気持ちでこの曲を歌うのだろうなと。「頑張って陽キャを演じようとしているねねさんの背中を、先輩のあくあさんが追いかける」っていう構図が見えたらいいなと思いながらセリフを書きました。
ねねさんには、「陽キャだったらこう言うだろうな」って陰キャが考えるようなテンションでセリフを書いています。ねねさんの歌声は聴いている人をとにかく元気にさせるんですけど、それってなかなかできることではないと思っているので、そこが一番の魅力だなと思いますし、歌詞や担当パートでそのスキルをよりピックアップできるよう練りこみました。スバルさんに関しては、普段元気な女の子が歌うとちゃんとアイドルになるっていうギャップが歌声に表現されている印象です。とにかくポテンシャルの塊で、陽キャとか陰キャとかの概念がそもそもなく、フラットに目の前の物事を楽しめる方という印象で。楽曲によってはフックになるような爆発力のある掛け声とかもできますし、いわゆる“メスバル”っていう女性的な面を出すこともできる。多面性があるキャラクターだなと思っています。
今まで「ホロライブ」さんで制作していた楽曲の作り方にも通じるところがあるんですけど、今回もよく読み解くと配信のネタが詰まっていたり、キャラクターの性格を表現する文章になってたり、そういう歌詞にしようと心がけました。