映画『ウエスト・サイド・ストーリー』、心揺さぶられるレナード・バーンスタインの名曲をストーリーと共に考察

『ウエスト・サイド・ストーリー』楽曲を考察

 対立するジェッツとシャークスが入り乱れてダンスを繰り広げるダンスホールでの、一糸乱れぬ一体感のあるシーンも見どころの1つだろう。セクシーで官能的なムードの「ダンス・アット・ザ・ジム:ブルース、プロムナード」から一転、リズミカルで高揚感溢れる「ダンス・アット・ザ・ジム:マンボ」で熱くダイナミックなダンスを繰り広げる。社交ダンスをやっている人なら、なおさら興奮すること間違いないはずだ。

Leonard Bernstein - The Dance at the Gym: Mambo (From "West Side Story"/Score/Audio Only)

 トニーとマリアが出会うシーンでは、マリアを見た瞬間にトニーはまるで初めて動物を見たかのように目を丸くし、マリアははにかみながら決してトニーから目を逸らさない。「ダンス・アット・ザ・ジム:チャチャ、ミーティング・シーン、ジャンプ」と合わせて、小鳥がさえずり合うような2人の初々しい雰囲気に胸がときめく。

 「マリア」と「トゥナイト」は、ミュージカル史に残る名曲。トニーがマリアを思いながら歌う「マリア」は、もう彼女のことしか考えられないといった様子で名前を何度も繰り返し呼び続ける。マリアのアパートの前で愛を囁くシーンは、本作のモチーフとなった『ロミオとジュリエット』のテラスのシーンを彷彿とさせる。マリアがトニーとの未来に思いを馳せながら歌う「トゥナイト」には、「マリア」の名前を繰り返すメロディがそれとなく使われている演出が心憎い。

Ansel Elgort - Maria (From "West Side Story")

 作中でも熱の籠もった歌で特に聴き応えがあるのは「ア・ボーイ・ライク・ザット/アイ・ハブ・ア・ラヴ」で、トニーとマリアの関係を知ったアニータが、マリアの思いを受け止めるシーンでの楽曲だ。今にも爆発しそうなアニータの怒りに対し、最初は愛と憎しみの間で葛藤するマリアだったが、次第にトニーへの愛の大きさに気づいていくマリアの気持ちの機微が、繊細かつエモーショナルに歌われていて心を揺さぶられる。

A Boy Like That / I Have a Love (From "West Side Story"/Audio Only)

 そして、若者たちの人生を見守っていたトニーが働く店のオーナー、バレンティーナが、悲劇的な運命を呪うことなく祈り続けるように歌った「サムウェア」が、感動的に作品を締めくくる。バレンティーナを演じたのは、史上3人しか達成していないアカデミー賞、エミー賞、グラミー賞、トニー賞、ピーボディ賞の5賞の受賞歴を持つレジェンドの1人=リタ・モレノ。バーンスタインによる楽曲を、デヴィッド・ニューマンが編曲、演奏はパリ・オペラ座の音楽監督グスターボ・ドゥダメル指揮による、名門ニューヨーク・フィルハーモニックと、ロサンゼルス・フィルハーモニック(追加演奏)。そして、アンセル・エルゴート(トニー)、レイチェル・ゼグラー(マリア)、アリアナ・デボーズ(アニータ)ら、主人公たちの人生を生き生きと演じたキャストたちの歌声、ミュージカル映画の歴史に新たな名を残す名演が詰まっている。

『ウエスト・サイド・ストーリー OST』

■リリース情報
『ウエスト・サイド・ストーリー オリジナル・サウンドトラック』
2022年2月9日発売
UICH-1017/¥2500+税
配信・購入:https://umj.lnk.to/WestSideStory_OST

<収録曲>
1. プロローグ/Prologue
2. ラ・ボリンケーニャ(シャークス・ヴァージョン)/La Borinqueña (Sharks Version)
3. ジェット・ソング/Jet Song
4. サムシングズ・カミング/Something's Coming
5. ダンス・アット・ザ・ジム:ブルース、プロムナード/The Dance at the Gym: Blues, Promenade
6. ダンス・アット・ザ・ジム:マンボ/The Dance at the Gym: Mambo
7. ダンス・アット・ザ・ジム:チャチャ、ミーティング・シーン、ジャンプ/The Dance at the Gym: Cha-Cha, Meeting Scene, Jump
8. マリア/Maria
9. バルコニー・シーン(トゥナイト)/Balcony Scene (Tonight)
10. トランジション・トゥ・スケルツォ/スケルツォ/Transition to Scherzo / Scherzo
11. アメリカAmerica
12. ジー、オフィサー・クラプキ/Gee, Officer Krupke
13. ワン・ハンド、ワン・ハート/One Hand, One Heart
14. クール/Cool
15. トゥナイト(クインテット)/Tonight (Quintet)
16. ランブル/The Rumble
17. アイ・フィール・プリティ/I Feel Pretty
18. サムウェア/Somewhere
19. ア・ボーイ・ライク・ザット/アイ・ハブ・ア・ラヴ/A Boy Like That / I Have a Love
20. フィナーレ/Finale
21. エンド・クレジット/End Credits
※各楽曲の邦題は変更になる可能性があります。

『ウエスト・サイド・ストーリー』
デジタル配信中(購入/レンタル)
5月18日(水)ブルーレイ+DVDセット発売
© 2022 20th Century Studios.
発売:ウォルト・ディズニー・ジャパン
購入はこちら

『ウエスト・サイド・ストーリー』公式サイト:https://www.20thcenturystudios.jp/movies/westsidestory

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