映画『ウエスト・サイド・ストーリー』、心揺さぶられるレナード・バーンスタインの名曲をストーリーと共に考察

『ウエスト・サイド・ストーリー』楽曲を考察

 5月18日にBlu-ray+DVDがリリースされた映画『ウエスト・サイド・ストーリー』は、1957年に初演された伝説的ミュージカルが原作で、1961年の映画化ではアカデミー賞作品賞など10部門を受賞。さらにはマイケル・ジャクソンにも影響を与え、「BAD」や「Beat It」のMVでもオマージュされている。作中で使われる「トゥナイト」「アメリカ」「マリア」などの音楽は20世紀を代表する音楽家=レナード・バーンスタインによるもので、ミュージカル史に残る名曲として知られおり、『ウエスト・サイド・ストーリー オリジナル・サウンドトラック』が配信中、日本盤CDもリリースされている。本稿では、作品における楽曲の魅力と役割を考察する。

 夢や成功を求め、多くの移民たちが暮らすニューヨークのウエスト・サイド。だが、貧困や差別に不満を募らせた若者たちは同胞の仲間と結束し、各チームの対立は激化していった。ある日、プエルトリコ系移民で構成された“シャークス”のリーダーを兄に持つマリアは、対立するヨーロッパ系移民“ジェッツ”の元リーダーのトニーと出会い、一瞬で惹かれあう。この禁断の愛が、多くの人々の運命を変えていくことも知らずに…。

 活気に溢れたマンハッタンの情景、ダンスパーティー、手に汗握るスリリングな決闘、涙なくしては語れないストーリー。そんな物語の様々なシーンを彩る音楽を手がけたのが、前述したレナード・バーンスタインだ。ニューヨーク・フィルハーモニックの指揮者として知られたほか、作曲家として交響曲やミュージカル『キャンディード』の音楽などを手がけ、映画『波止場』は、1955年のアカデミー賞のドラマ・コメディ音楽賞にノミネートされた。また晩年の『ミサ』は、様々な民族や文化が落とし込まれた大作として名高い。

 バーンスタインの音楽はクラシックの延長線上にありながら、メロディは現代のポップスに通じる分かりやすさが特徴。自身が移民の家系に生まれたこともあってか、躍動感あふれるリズムはラテンやジャズなど様々な音楽ジャンルがミックスされている。

 『ウエスト・サイド・ストーリー』と言えば、ジェッツのメンバーが指を鳴らしながら街を歩くシーンが真っ先に思い浮かぶ。本作でもそのシーンは再現されており、一気に作品の世界へと没頭させてくれる。「プロローグ」や主題となるメロディが引用された「ジェット・ソング」は、今から何かが始まりそうな不穏なムードがありながら、どこかユーモアにも溢れて、街の鼻つまみ者だがどこか憎めないジェッツの雰囲気を印象づけてくれる。

West Side Story – Cast 2021 - America (From "West Side Story")

 シャークスのメンバーが歌う「ラ・ボリンケーニャ(シャークス・ヴァージョン)」は、プエルトリカンの血に宿る誇りと名誉をア・カペラで歌い、実に野性的で勇ましい。しかしベルナルドの恋人アニータたちプエルトリカンの女性は、貧しいなりにもアメリカでの暮らしを気に入っている。便利な暮らしやファッションなど、女性の夢を満たしてくれるアメリカを歌った「アメリカ」は、リズミカルなテンポに乗せて茶目っ気たっぷり。華やかさと躍動感に溢れ、これにはベルナルドたちは形無しだ。

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