香取慎吾を紐解く言葉:音楽、アート、アイドル……何者にもとらわれない、人の数だけ存在する人間像
アイドル:いつまでもアイドルと口にし続ける理由
なにかにとらわれることなく活動している香取。結局のところ、彼はいったい何者なのか。そのヒントについて、彼はこのように発言している。
「アイドルをやめる理由がない」(※1)
2018年2月14日、自身のTwitterで“パーフェクトビジネスアイドル”を宣言。彼は、ファンにとってずっと理想=アイドルであり続けようとしている。人それぞれが思い描く理想のアイドル……ということは当然、彼の捉え方も各自で変わってくる。
これまで香取にたずさわったクリエイターたちがたびたび、彼のとらえどころのなさについて言及してきた。その一貫性を感じない部分も、どこか納得できる。
映画『NIN×NIN 忍者ハットリくん THE MOVIE』(2004年)の鈴木雅之監督は香取について、「大人と子供の両面を持っていますしね」(『キネマ旬報』2004年9月下旬号)と答え、同作の脚本家・マギーも「日常性のなさと日常性の両方を兼ね備えている、数少ない方」(同書)と多面性について触れていた。
逆に映画『凪待ち』(2019年)の白石和彌監督は、「本当にフラットなまま現場に来るんですけど、直後にあんな顔、あんな演技がなぜできるのかと。たぶん僕が説明する言葉だけじゃなく、たとえば話しているときのテンションとか空気みたいなものをすごく感じてくれてのことなんだと思うんですけど」(『キネマ旬報』2019年6月下旬号)と彼のなかにある余白を察知。それが演出家の想像を超えた演技につながっていると分析した。
香取はこれまでルール無用でたくさんのものを体内に吸収し続け、とてつもない数の成分でその人間像を形成してきた。そう考えると、とらえどころがなく、いくつもの“色”がそこに存在していることも頷ける。私たちはその色を好きに使って、自分好みの香取慎吾を描いていけば良いのだ。そういうところが彼のおもしろさであり、一番の魅力である。
※1:https://realsound.jp/2022/04/post-1006913_2.html