あさぎーにょが発信する“誰とも比べなくていい”というメッセージ 「たくさんの人の背中を押せたら」
アーティスト、YouTuber、ファッションブランドディレクターなど複数の肩書きを持つ、あさぎーにょ。「ワクワクを抱きしめよう」をテーマに、ポップでカラフルな唯一無二の世界を展開している彼女が新しい作品を世に放った。
YouTubeチャンネルにて3月31日に公開された動画「記憶をかえしてください」は、一見するといつものVlog動画。だが、見進めていくと1本の映画『グッバイ、コスモス』になっていく。そして、2019年末に公開して『2020 60th ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS』で「ACCシルバー」を受賞した『ハロー!ブランニューワールド』を含めたこうした短編映画を、今作よりVlog映画と定義している。サプライズや伏線が詰め込まれた『グッバイ、コスモス』は、どこか切なくも元気をもらえるメッセージがたっぷり。あさぎーにょは、どんな思いで同作を作ったのだろうか。本人にじっくり語ってもらった。(高橋梓)
タイトルに込めた、自分のコンプレックスに「グッバイする」こと
――『グッバイ、コスモス』、とても素敵な作品でした。まずは、同作を制作するに至った経緯から教えてください。
あさぎーにょ:2019年末に作った熱海をタイムリープする短編映画『ハロー!ブランニューワールド』は、私の活動の中で一番多くの方に届けることができました。その作品はスポンサードいただいた企業と一緒にやらせていただいたのですが、その後も一緒に作品作りをしてきたCHOCOLATE Inc.の竹林(亮)監督と「また作りたいね」という話をしていたのがきっかけです。そこからエンドミュージックも作ろうという話になり、楽曲制作も進んでいきました。
――映像、楽曲含めた今回の作品では「他人から図られる物差しを捨てて、自分自身の物差しを持つ」というメッセージが込められています。このメッセージを発信するきっかけがあったのでしょうか。
あさぎーにょ:「こんな出来事があった」というわけではないのですが、私は基本的に「この人にどう思われるかな?」、「人に合わせなきゃな」と考えてしまうタイプなんです。学生の頃から環境やコミュニティが変わると、「私の好きなものってアウェイなのかな」と孤独感のようなものを感じていました。そうなってしまったときに、早くいつもの自分に戻るきっかけや自分を信じられる軸を持っておきたいな、と。それが「自分自身の物差し」。それを何かに残しておきたいと思ったことがこのメッセージを発信した理由です。
――あさぎーにょさんの「自分自身の物差し」とは、具体的にどんなものなのでしょうか?
あさぎーにょ:いつもの自分に戻るきっかけはいつもまちまちです。メンタルの調子が良くなって「別にそんなことどうでもいいや」って思う時もありますし、アウェイなコミュニティに長くいすぎてなかなか戻れないこともあります。でも「別に他人に合わせる必要はないよね」、「誰とも比べなくていいよね」という考えはずっと頭の中にはありますね。
――5月25日にはVlog映画の主題歌「グッバイコスモス」がリリースされます。
あさぎーにょ:この曲はまず「グッバイコスモス」というタイトルから出てきました。(白い)コスモスは「優美」や「調和」というすごく素敵な花言葉があるんです。「人に合わせなきゃ」と思ってしまう自分のコンプレックスと、コスモスが似ているなと思い、コンプレックスに「グッバイする」という意味でこのタイトルに決まりました。
――楽曲のタイトルはいつもご自身で考えているのですか?
あさぎーにょ:そうですね。
――あさぎーにょさんの楽曲タイトルにはいつも気になるワードが使われていますが、どうやって探しているのでしょう?
あさぎーにょ:その時によるのですが、「グッバイコスモス」は他人の物差しで図られている自分を何かに例えたいなと思って「コスモス」が出てきました。それ以外だと「このフレーズ、なんかいいな」と思って採用することが多いです。「夢のつづき」とかはこのパターンですね。タイトルを決めるためにわざわざ言葉を探すことはしていないかもしれません。
――日常からヒントをもらっているんですね。タイトルにもしっかり意味が込められている「グッバイコスモス」は、レコーディングにも工夫がありそうです。
あさぎーにょ:「グッバイコスモス」はハッピーな曲なのですが、物語の中に出てくる子どもの頃の自分を儚く思ったりもする曲で、ハッピーすぎずに昔の温かな記憶を抱きしめる優しさを持って歌いました。最初のハミングの部分は懐かしむようにリラックスして歌うことができたと思います。
――あさぎーにょさんの歌声だからこそ、温かみが出ているように感じます。
あさぎーにょ:実は私、自分の声にコンプレックスがあって。特に歌になるとかわいくなりすぎちゃうというか、自分が思っている歌声と違うことが多いんです。なので、今回すごく研究しました。母音の発音や、どう発声している時に理想と違うと感じるのか、とか。作詞、作曲、編曲メンバーと一緒に「そこは良い部分だよ」、「ここは苦手だね」と細かくすり合わせていったので「グッバイコスモス」は研究結果が出ていると思います(笑)。
――あさぎーにょさんの歌声は個人的にとても好きなので、コンプレックスだったとは意外です。温かさと懐かしさがあって心に染みると感じていたのですが、そういった分析はご自身であまりされていない?
あさぎーにょ:竹林監督も「グッバイコスモス」を初めて聴いた時に涙してくださったのですが、誰かが涙してくれることは制作段階で想像できていないというか。表現したいものが作れたとは思っていますが、「グッバイコスモス」も泣けるという感覚では作っていませんでした。
――メロディもグッときますよね。楽曲制作にも携わったのでしょうか。
あさぎーにょ:今回、歌詞に詰め込んだワードを出させてもらいました。物語の情景を入れたかったので「スカート」、「ひらり、ひらひらして」、「パフスリーブ」、「水たまりに飛び込む」などのワードをLINEで送ってブラッシュアップしていただきました。曲に関しても「こういうサウンドがいい」とリクエストをしたり。
――具体的にはどんなアーティストを?
あさぎーにょ:ハンバート ハンバートさんの楽曲です。彼らのおひさまっぽい曲調や雰囲気がすごく好きなんです。私の活動の中でも「おひさま」というのはキーワードになっていて。温かみがあるけどキラキラしすぎていないのがいいですよね。
――映画とリンクするワードが入っているとのことですが、具体的にはどの辺りになりますか?
あさぎーにょ:記憶が薄れていってしまうお話なので、〈遠く離れていく記憶〉や〈滲んでいく日々の形〉の部分はわかりやすいかもしれません。他にも〈公園〉や〈基地〉などのワードもリンクしている部分です。
――映像と照らし合わせながら聴いていくと、わかりやすく歌詞を噛み砕けそうですね。
あさぎーにょ:そうですね。子@小豆ちゃんと子ぎーにょの情景が思い浮かぶと思います。