葛葉、叶、Rain Drops、月ノ美兎……音楽シーンで存在感を高める「にじさんじ」アーティストの現在

 ミニアルバム『Sweet Bite』(2022年3月9日発売)で<ユニバーサル ミュージック>からメジャーデビューを果たした葛葉は、男性VTuberとして初めてチャンネル登録者数が100万人を突破。「親の甘い蜜を吸い続けるニートのゲーマー吸血鬼」というキャラ設定で、ゲーム実況配信をメインに活動しているが、Kanaria「KING」のカバーは現在3,400万回再生を突破するなど歌い手としても人気が高い。カバー曲では妖艶な歌声を聴かせてきたが、初のオリジナル曲「コントレイル」では、疾走感あるロックナンバーをチョイス。ソロライブイベントでBUMP OF CHICKENやUVERworldといったロックバンドの楽曲をカバーしていたこともあったが、「コントレイル」で響かせる爽やかな歌声は歌手としての新たな可能性を感じさせた。『Sweet Bite』は、葛葉にとって主な活動時間である「夜」をテーマに制作。収録曲「甘噛み」は、葛葉が敬愛するシドの明希(Ba)が作曲と編曲、マオ(Vo)が作詞を担当。いかにもシドらしいメロディアスで物語性のあるロックが葛葉の声に絶妙にマッチし、ヴァンパイア風の見た目の雰囲気も相まってV系バンドとの相性の良さを感じさせた。

 2022年7月27日に<Lantis>よりミニアルバム『flores』でメジャーデビューすることを発表した叶。浮世離れした記憶喪失の青年という設定で、あざとかわいい癒し系ボイスで人気を集めている。ゲーム配信を中心に展開するライバーだが、力強くかつ透き通った歌唱力が特徴的で、歌ってみた動画も多数投稿している。また、葛葉とのユニット・ChroNoiR(クロノワール)としても活動し、葛葉のクールな歌声に叶の癒し声が重なり、気持ちの良い男性のユニゾンを聴かせてくれる。普段から2人は仲が良く、オリジナル曲「ヘテロスタシス」や「Geminids」のMVなどを見ると、それぞれのキャラクターのミステリアスさ、2人の掛け合いが実にエモーショナルで魅惑的だ。デビューアルバム『flores』から先行配信されたリード曲「ブロードキャストパレード」は、ピアノの旋律に乗せて叶の癒しの歌声が重なり、まさにパレードやサーカスのような幸せな気持ちにさせる、ユニットとは違った叶の可愛さに特化した楽曲となった。

 そのほか、樋口楓、森中花咲と御伽原江良のユニット・petit fleurs、森中花咲(ソロ)、鷹宮リオン、葉加瀬冬雪、フレン・E・ルスタリオのユニット・▽▲TRiNITY▲▽などがメジャーデビュー済み。また、7月27日に葛葉、叶と3マンライブを行うユニット・ROF-MAO(加賀美ハヤト/剣持刀也/不破湊/甲斐田晴)は、2022年4月13日に自社レーベルからリリースした1stミニアルバム『Crack Up!!!!』が、オリコン週間アルバムランキングで初登場1位を獲得し、「にじさんじ」所属ライバーとして初の快挙を達成した。

 数多のライバーを抱え、日本のバーチャルタレント分野の一角を担う「にじさんじ」。事務所自体のブランド力もありつつ、個々人の発信力が絶大で、アップするカバー動画やオリジナル曲はYouTube上でいずれも高い数字を記録。同じ事象は、大手VTuber事務所の「ホロライブプロダクション」にも当てはまることだが、ここまで存在感を見せつけるとメジャーレーベルが意欲的に動き出すのも納得できる。メタバース、VR、バーチャルライブなど、仮想現実でのエンタメが流行を見せる時代の中で、「にじさんじ」をはじめとするバーチャルアーティスト/アイドルの勢いはますます高まっていきそうだ。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる