平井 大、『HOPE / WISH』に収められた変わりゆく2年間 心と肌で感じる、日常を綴った“音楽日記”

平井 大『HOPE / WISH』に綴られた2年間

 平井 大が約3年ぶりとなるアルバム『HOPE / WISH』をリリース。5月9日付のオリコンデイリーアルバムランキングを始め、Apple MusicトップアルバムやLINE MUSICアルバムTop100、iTunes総合アルバムランキングなど多くの配信サービスで1位を獲得するなど大きな反響を呼んでいる。

 平井はアルバムの特設サイトにて、「ボクらを取り巻く環境が目まぐるしく変化した2年間。いつも通りはいつも通りではなく、当たり前はキセキなんだと知った2年間。平和は平和からしか生まれないと実感した2年間。変わらず奏で続ける為に、変わり続けた2年間。2年間に生まれた希望と願いを込めた39曲。アナタへ。」とコメントしている(※1)。

 Disc-1には、2021年から今年にかけて連続リリースされた21曲と新曲2曲を収録。Disc-2には、2020年に連続リリースされ、昨年デジタルアルバム『Life Goes On』としてまとめられた16曲、全39曲を収録しており、2年間続けてきた連続配信の楽曲が1つにパッケージされた。これは、平井が心と肌で感じて考え、そして綴った“音楽日記”だ。楽曲は発表順に収録され、聴くごとに様々なことが思い出され、胸を熱くし涙を誘う。

 『HOPE / WISH』は、ラップ調のボーカルが心地良い「タカラモノ」で幕を開ける。身近にある当たり前の大切さを歌った楽曲だ。同様に「Buddy」は、歌詞に登場する犬や猫の鳴き声やカメラのシャッター音、波の音なども聴こえ、平井の日常に溢れているであろう音が、やさしく愛ある言葉と共に収録された。コロナ禍で気づかされた様々なことの1つに、日常や当たり前にあるものの大切さがある。それらが平井のフィルターを通して表現され、より温かく愛おしさ溢れたものとなり、また新たな気づきを与えてくれる。

平井 大 / タカラモノ(Lyric Video)
平井 大 / Buddy(Lyric Video)

 「小さな丘の木の下で」は、“彼”と“彼女”の出会いから永遠の別れまでのストーリーをシンプルな演奏と共に歌った楽曲で、軽快なギターの音色の裏に広がる、喪失感と無力感が胸を締め付ける。ファンタジックな雰囲気ながら、大きな悲しみとそこに溢れる大きな愛に、多くのファンが涙を堪えきれなかったはずだ。

 ABEMAオリジナルドキュメンタリー番組『普通の女子高生だったはずの私が 16才でママになって知ったことは、』の主題歌「MIRROR MIRROR」は、「鏡よ鏡」という『白雪姫』に出てくる有名なフレーズが引用されるなど10〜20代を中心に話題を集め、リリックビデオは現在までに1100万回を超える再生回数を記録している。

平井 大 / 小さな丘の木の下で(Lyric Video)
平井 大 / MIRROR MIRROR(Lyric Video)

 「Anniversary」は、平井が初めて女性目線で書いたラブソング。“どんなことがあっても君を守る”と力強く愛を歌った「MIRROR MIRROR」に対して、「Anniversary」では愛する人とならばどんな些細なことでも特別なものになると歌う。自分が傘となって大切な人を脅威から守るのが愛であり、その傘の下で一緒に日々を作っていくこともまた愛であると気づかされる。

 そんな愛し合う2人にもいずれ別れが訪れることを歌ったのが、「愛しき日々の真ん中で」。秋冬の情景になぞらえて悲しみと同時に愛を歌い、切ないファルセットが胸を締め付ける。温かみのあるサウンドがやさしく、それがかえって涙を誘う。「MIRROR MIRROR」と「Anniversary」で表現された、愛に対する捉え方の違いや、「愛しき日々の真ん中で」で描いた別れ。恋愛における様々なシーンを、まるで映画やドラマのストーリーのように聴かせることができるのは、連続リリースという試みであればこそだろう。

平井 大 / Anniversary(Lyric Video)
平井 大 / 愛しき日々の真ん中で(Lyric Video)

 また、「小さな丘の木の下で」で描いた永遠の別れによる悲しみを、温かいものとして表現するべく制作された「もしも、僕がいなくても。」は、鉄拳によるパラパラ漫画で作られたMVが今年1月に公開され話題になった。「小さな丘の木の下で」が“絵本”のような曲だとしたら、「もしも、僕がいなくても。」は“手紙”のような曲と言う平井。MVの物語では、早くに父親を失った息子が、ある日生前の父親が自分に宛てて書いた手紙を発見する。そこには息子の成長と幸せを願う、父親の愛に溢れた言葉が綴られていた、というもの。「小さな丘の木の下で」は非常にミクロな視点で描かれ、それ故に悲しみと愛が、より深く表現されている。「もしも、僕がいなくても。」は、息子、父親、ひいては親子や家族と、様々な視点から物語を捉えることができ、広くて大きな愛が歌われている。

平井 大 / もしも、僕がいなくても。(Music Video)

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