ヒグチアイ、ピアノ弾き語りツアー『最悪最愛』ファイナル公演 特別な響きの中で届けた心のひだに染み渡る歌

 くだけた雰囲気から一転、ドラマティックな楽曲が続く。まずは「働く女性」シリーズの一つである名曲「悲しい歌がある理由」、アニメ『進撃の巨人』エンディングテーマとして話題の「悪魔の子」を続けて披露。特に後者はピアノ1台で演奏しているとは思えぬほどの迫力で、目を閉じて聴いているとピアノの後ろにバンドとオーケストラが浮かんでくるようだ。さらに「まっさらな大地」では、高速アルペジオを繰り出しながら情熱的に歌い上げるヒグチ。エンディングのシンガロングフレーズを、ピアノのオクターブ奏法で力強く弾き切ると、会場からは割れんばかりの拍手が鳴り響いた。

 「孤独だからこそ努力できた、その時間に得たもので私はできている」と話し、そんな孤独の時に書いたという初期の名曲「ココロジェリーフィッシュ」を披露し、いよいよライブは終盤に。力強いミドルテンポのリズムが印象的な「火々」、〈さみしいけど孤独じゃないの 愛してくれてありがとう〉という言葉で終わる「劇場」を歌い、本編は終了。アンコール曲「縁」では、オーディエンス全員が「心の中で」手拍子をした。

 今年3月に本サイトで行ったヒグチへのインタビュー(※1)でも言ったように、「メロディはどんどん深みも洗練さも増して、しかもポップになっている」と感じたニューアルバム『最悪最愛』。今回のピアノ弾き語りライブは、そのメロディを存分に堪能できた素晴らしいひと時だった。

※1:https://realsound.jp/2022/03/post-978990.html

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