AK-69、HIPHOPで伝える不屈の精神と日本人の誇り 5度目の武道館で展開したエンターテイメントショー

AK-69、5度目の日本武道館レポ

 心震えるシーンは続く。自分の歩んできた道を振り返りながら、若い世代を憂い、励ます言葉を連ねながら、「世界にあなたはたった一人です」と言って歌った「ONE」。会場内の灯りをすべて灯し、輝く光に包まれながら歌った、永遠のラブソング「And I Love You So」。数十本もの光の矢が天と地の間で交錯する、あまりに劇的なシーンに言葉が出ない。すべてのスケールが大きく、すべてがAK-69の生き方と思想を映す、それはヒップホップを超える総合芸術の世界。

 シリアスな場面だけじゃない。SNSで募集した「武道館の1曲目を当てよう」キャンペーンの正解者である、会場に来ているファンに電話をかけるお楽しみコーナーでは、AKの茶目っ気のある親しみやすさがよくわかる。そのまま「You Mine」「BECAUSE YOU’RE MY SHAWTY」へとスウィートなラブソングを続け、この日配信リリースされたばかりのKalassy Nikoff名義の新曲「Come Inside feat. Yo-Sea」を、新進R&Bシンガー・Yo-Seaと共に。オーディエンスに動画撮影が許可され、無数のライトが広い武道館のスタンドを星のように埋める、実にロマンチックなシーン。ライブはそろそろ終盤だ。

 「俺のラップ人生は孤独なレース。だけど今はこんなに多くの人を背負って走ってる」――そんなセリフと共に始まった「Victory Lap feat. SALU」に、颯爽とステージに飛び込んできたSALUが、オートチューンを駆使したテクニカルなラップでカラフルな色を添える。LEDの床スクリーンには、泣きたいほどに美しい青空と流れる雲が映る。SALUも1曲だけなのがもったいないが、ライブはすでにフィナーレへ向けて加速している。「CUT SOLO」のイントロに乗せ、「声出せない代わりにこの曲で一つになろう」とAKが叫ぶ。武道館を埋めたオーディエンスが息の合った手振りで応える。「一人になんかさせねぇぞ」。熱い叫びが分厚い音に溶けてゆく。

 「生きていたら、武道館に立つ俺の姿を見てくれていたかな」――亡き父に捧げる「Stronger」は、いつ聴いてもとてつもない感動を巻き起こす曲だが、今夜の「Stronger」はまさに魂の絶唱。シャツを脱ぎ捨て、鍛え上げた上半身をさらけ出すと、AK-69のDNAを受け継ぐFlying B Entertainmentのニューカマー、XinとCITY-ACEを迎えた「Flying B REMIX」へ。曲順の流れにもはっきりと意味がある。父から俺へ、俺から後輩へ、スピリットは受け継がれる。Xinのスキルフルなラップ、CITY-ACEの自信たっぷりに畳みかける王道スタイルは、どちらも確かにAK-69を受け継いでいる。

 「この日本をもう一度、立ち上げ直そう」。この日のラストMCは、非常に意味深く、強い意志に貫かれた、忘れがたいものになった。日本人の誇り。子供たちへの思いやりと、大人の責任。自分らしくある強さ。〈こいつの火は消えない、再び宿る鼓動〉。長く熱い語りのあと、何度も聴いてきた「START IT AGAIN」のリリックが、新たな臨場感を持って迫り来る。AK-69のすべての楽曲に通じる不屈の闘志と、力強くも哀愁に満ちたトラックが、いつまでも消えない余韻として残る。「ありがとう。AK-69でした」。アンコールはなし。すべての音が消え、明るくなったセンターステージ頭上のスクリーンに、手書きのメッセージが浮かび上がる。「日本人は強いんです」と。

 走り続けたラップ人生の誇り。ゲストと共に作る音楽の歓び。東海エリアヒップホップ代表としてのプライド。戦争と平和についての真摯な思考。Flying B Entertainment代表として新たなアーティストを生み出す役割。亡き父親への思い。それらすべてを背負いながら、素晴らしい照明、音響、セット、計算され尽くした演出、そして完璧なラップと歌で、最高級のショーを創り上げた男。その名はAK-69。本当にすごいものを見た。この余韻は、しばらく消えそうにない。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる